猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

修道士は沈黙する

2018-05-26 20:47:01 | 日記
2016年のイタリア・フランス合作映画「修道士は沈黙する」を観にいった。

ドイツのハイリゲンダムで、空港に白い修道服の男が降り立つ。イタリア人修道士の
ロベルト・サルス(トニ・セルヴィッロ)だ。彼は運転手の迎えを受け、車に乗ってあ
る国際的な会合が行われる場に向かう。リゾート地の高級ホテルで開かれる予定のG
8の財務相会議。そこでは各国の財務大臣により、世界市場に多大な影響を与える決
定が下されようとしている。それは貧富の差を拡大し、特に発展途上国の経済に大き
な打撃を与えかねないものだ。会議の前夜、天才的なエコノミストとして知られる国
際通貨基金(IMF)のダニエル・ロシェ専務理事(ダニエル・オートゥイユ)は、自身の
誕生日を祝う夕食会を催す。招かれたのは、翌日の会議に参加する8人の財務相に加
えて、世界的なミュージシャン、有名な女性絵本作家、そして修道士サルス。楽しい
宴の後、サルスはロシェから自室に呼び出され、告解をしたいと告げられる。告解を
聞いたサルスが部屋に戻った翌朝、ロシェがビニール袋をかぶって窒息死しているの
が発見される。自殺なのか他殺なのかわからないまま、サルスに疑惑の目が向けられ
る。

ちょっと変わったミステリー映画である。先進国首脳会議に参加するフランス、アメ
リカ、イギリス、ドイツ、イタリア、日本、カナダ、ロシアの各国の財務大臣と3人
のゲストが集結した高級ホテルで、大物経済人のロシェの死体が発見される。自殺な
のか、他殺なのか。前夜にロシェが修道士のサルスに告解をしていたことがわかると、
警察は告解の内容を聞き出そうとするが、戒律によって話すことはできない。沈黙を
通すサルスに容疑の目が向けられてしまう。神父が告解の内容を絶対に口外できない
というと、ヒッチコックの「私は告白する」を思い出す。劇中でもその話が出た。
各国の財務大臣たちもそれぞれの思いを胸に秘めたまま、捜査は続けられる。サルス
は犯人ではないと信じてサルスに協力する者も出てくる。実は会議の決定事項に反対
している者も数人いる。ロシェはサルスに何を話したのかが回想シーンとして度々挟
まれ、次第に事件の全容が見えてくる演出はおもしろい。そしてサルスのICレコーダ
ーを盗んだのは誰なのか。
サルスはどこか飄々とした雰囲気で、映画は暗くはならない。物語のテーマは「物質
主義と精神主義」である。カトリック信徒であることとエコノミストであることは両
立することはない。8人の財務大臣の中にはカトリック教徒も何人かいるだろう。彼
らは自分の心に嘘をついて世の中を渡り歩いているのだ。その矛盾に苦しんでいるの
かどうかはわからないが。
フランスの大スター、ダニエル・オートゥイユも年をとったなあ。サルスの全身白の
修道服が印象的であり、象徴的でもある。ラストは爽やか。



映画を観た帰りに大好きなア・ラ・カンパーニュのタルトを買った。あああダイエッ
ト中だというのに💦いつもじゃないですよ!たまにですよ!






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スリーピー・ホロウ

2018-05-22 22:05:11 | 日記
1999年のアメリカ映画「スリーピー・ホロウ」。

1799年。ニューヨーク郊外の村で首なし連続殺人事件が発生。科学捜査の重要性
を主張する巡査イカボッド・クレーン(ジョニー・デップ)は事件の捜査のため同
地に派遣され、宿を提供した大地主バルタス(マイケル・ガンボン)や村の長老ら
から、独立戦争時に悪名を馳せた首なし騎士(クリストファー・ウォーケン)の幽
霊が殺人を続けていると聞かされる。迷信だと断じるイカボッドだったが、首な
し騎士はイカボッドの前に姿を現して村の重鎮たちを殺していく。

ティム・バートン監督のゴシック・ホラー。ホラーと言っても主人公イカボッド
のキャラクターがコミカルなので怖くはない。科学的な捜査の重要性を説き、死
体解剖も行うイカボッドは警察ではみ出し者扱いされていた。ニューヨーク郊外
の村で村人が首を切断されて殺される事件が発生し、イカボッドは捜査のために
派遣される。独立戦争時にアメリカへ渡ってきたドイツ人の傭兵がおり、彼は残
虐に人々の首を斬って殺しまくるが、やがて本人も首を討たれて死に、その幽霊
が自分の首を探して殺人を犯しているのだと、村人たちは信じていた。オカルト
を信じないイカボッドだったが、実際に首なし騎士を目撃し、信じざるを得なく
なる。
イカボッドは知的でクールだが、臆病なところがあり、すぐに気絶するのがおも
しろい。彼は大地主の娘カトリーナ(クリスティーナ・リッチ)と仲良くなり、父
親を首なし騎士に殺された少年と3人で事件を調べ始める。とにかくこの当時の村
の雰囲気がいい。映像も幻想的で美しく、登場人物たちの服装も素敵。クリステ
ィーナ・リッチの胸が大きくてびっくり。あんなに小柄なのに、コルセットのせ
いなのかな?首なし騎士の姿も不気味でいい。イカボッドは首なし騎士の幽霊の
存在は認めたが、誰かが幽霊を操っていることに気づく。その真相は興味深くお
もしろかった。
とにかく人の首が飛びまくりの映画だが、映像の美しさのせいかあまり残酷な感
じはしない。でも「死人の木」は怖かった。私はジョニー・デップのビジュアル
はこの映画のイカボッド役が1番好きである。本当に美しいジョニー。あと「ショ
コラ」のルー役もとてもかっこいい。「ショコラ」は物語は大したことはないし
あまり好きではないのだが、ジョニー・デップが素敵すぎる。「スリーピー・ホ
ロウ」はとても好きな映画だ。




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戦慄病棟

2018-05-19 23:45:51 | 日記
2015年のアメリカ映画「戦慄病棟」。

かつて知的障害や精神障害の子供たちへの虐待や人体実験が繰り返され、多くの命
が奪われた施設。廃墟となったこの場所には、今も子供たちの霊がさまよっている
と噂されていた。施設は教会のコンウェイ神父(スティーブン・ラング)が管理して
おり、神父に信頼されている高校生のパトリック(ケリー・ブラッツ)がボランティ
アで清掃などをしていた。ある日パトリックの友人がそこでパーティーをしようと
言い出し、パトリックは止めるが多くの若者たちが集まり、パーティーが始まって
しまう。やがてパーティーは終わり、パトリックを含め7人の若者が残っていた。
彼らは今も子供たちの霊がいるのかどうかを確かめようと、遊び半分でパトリック
の弟ロリー(マイケル・オームズビー)を媒体として交霊会を始める。ところが、ロ
リーの体に本当に異変が起こり始めてしまう。

王道のオカルト・スプラッター・ホラー映画。いかにもアメリカ映画な感じだが、
そこそこおもしろかった。知的障害や精神障害を持った子供たちが収容され、社会
で自立するための訓練を行う目的で作られた施設だったが、いつしかそこは虐待や
人体実験が横行するようになり、多くの子供たちが命を落とし、裏庭に墓が建てら
れた。現在は廃墟となったその場所で、パトリックはボランティアとして片付けを
行っていた。パトリックの友人がそこに若者たちを集め、パーティーが開かれる。
パーティーが終わって7人の若者が残っていたが、交霊会をしようという話になる。
真面目なパトリックは止めるが、皆が聞き入れるはずもなく、交霊会は始まってし
まう。渋々参加したパトリックだったが、媒体となった弟のロリーに本当に悪霊が
憑いてしまう。
まず、素人が交霊会なんかしちゃダメでしょ、霊媒師もいないのに。こういうバカ
な若者たちがいないと物語は始まらないのだけど。でも、霊の存在を信じていなか
った友人たちが、ロリーの様子を見て「悪魔が降りてきた」「神父さんを呼ばなき
ゃ」みたいなことを言い出す辺り、やっぱりしっかりと宗教が根付いてるんだなあ
と思った。ところが彼らは逃げ出そうとして、やってきた神父を車で撥ねて死なせ
てしまう。仕方がないのでパトリックが聖書を読みながら神父が持ってきていた聖
水をロリーにかけ、ロリーは苦しむ。エクソシズムのシーンも多いがグロテスクな
シーンも結構ある。でも慣れている人なら大したことはない。
終盤の意外な展開はおもしろかった。私は全然予想していなくて、真相はなかなか
興味深かった。エンドロールの後にワンシーンあるのでお見逃しなく。

歌手の西城秀樹さんが亡くなって驚いた。まだ63歳…早すぎる。あまりにも突然
だった。自宅で倒れて3週間、意識が戻ることなく亡くなったそうだ。ハンサムで
背が高くてスタイルが良くて、そして抜群に歌がうまかった。あんなに歌える人は
そういないのではないだろうか。アイドルの域を超えて、スター歌手だった。「か
っこよくて歌唱力のある男性歌手」の元祖だったと思う。間違いなく一時代を築い
た人。でもエネルギッシュな雰囲気とは裏腹に、年を取ってからは病気に悩まされ
ていたようだ。最初の脳梗塞からの復帰は早かったが、2度目の脳梗塞は重かった
ようで、言語障害や右半身の麻痺が残ってしまった。歌手が歌えなくなるなんて辛
かっただろう。リハビリを頑張っている姿もテレビで観たことがあったけれど、ま
たステージに立つことはかなわなかった。ほんとにかっこよかったヒデキ。お疲れ
様でした。ゆっくりお休みください。




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最愛の夏

2018-05-14 23:31:01 | 日記
1999年の台湾映画「最愛の夏」。

17歳の夏休み、普段は台北の学校の寄宿舎にいるカンイ(リー・カンイ)も実家に帰省
してきた。カンイの両親は数年前に事故に遭い、母親は死亡、父親は失明した。その
後父親は盲目の女性と再婚し、自宅アパートでマッサージ院を開いて生活していた。
同じアパートに住むヤクザのソンは心強い存在だ。ある日、ソンが面倒を見ているア
ピン(ファン・チィウェイ)という少年と知り合ったカンイは、彼に思いを寄せる。彼
をデートに誘い色んなことを語り合う2人だったが、小さなこの港町ではよそ者のア
ピンのことを快く思わない者たちもいた。

台湾の少女のひと夏の恋や家族を描いた青春映画。私がすごく好きなタイプの映画だ。
物語もだがとにかく映像が暗い。台北とは違う、小さな港町の雰囲気がよく出ている。
主人公カンイは事故で母親を亡くし、父親はその時に失明し、盲目の女性と再婚して
自宅でマッサージ院を開いている。弟は知的障害者である。でもカンイには悲壮感が
なく、元気な少女だ。私なんかは母親が死んだのにすぐに(かどうかはわからないが)
自分と同じ盲目の女性と再婚する父親のことを何だかなあ…と思ってしまうが、生き
ていくためには必要なことだったんだろうな。そして同じアパートに住むヤクザは気
のいい男で、カンイの家族に何かと良くしてくれるので、カンイたちも彼を頼ってい
る。ヤクザが普通に町に溶け込んでいるのって何だか不思議。ある日そのヤクザは友
人の息子であるアピンという少年を連れてくる。カンイとアピンはやがて思い合うよ
うになる。
カンイの弟は知的障害があるが、カンイの気持ちに気づき、「姉さんはフォーリンラ
ブ」としょっちゅう言ってはカンイに怒られるのがユーモラス。アパートに住む人た
ちもその近所の人たちもはっきり言ってガラが悪いのだが、カンイは気にせず夏休み
を楽しんでいる様子もいいし、画面から台湾の港町の暑さが漂ってくる感じもいい。
カンイ役のリー・カンイは17歳にしては少し幼く見えたがかわいいし、アピン役のフ
ァン・チィウェイはイケメンだ。
終盤の展開は悲しい。それでもカンイは前を向いて生きていこうとする。カンイの笑
顔が見られるラストシーンは印象的である。ただ、邦題がちょっと…原題は「黒暗之
光」だが、こっちの方がいいと思った。大好きな映画のひとつである。



ノエルの写真を撮りすぎて、どれをブログに載せてどれを載せていないのか、わから
なくなってきました(^-^;











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マッチ工場の少女

2018-05-12 01:35:36 | 日記
1990年のフィンランド映画「マッチ工場の少女」。

フィンランドの田舎町。マッチ工場で働く地味な少女イリス(カティ・オウティネン)
は、わずかな給料で怠け者の母親(エリナ・サロ)と義父(エスコ・ニッカリ)を養って
いた。味気ない日常を送る彼女だが、ある給料日、ショーウィンドーで見かけた派手
なドレスを衝動的に買ってしまう。それを知った義父に殴られ、母には返品を命じら
れるが、我慢ならなくなった彼女はそれを着てディスコに行き、声をかけてきたアー
ルネ(ヴェサ・ヴィエリッコ)と一夜を共にする。アールネに本気になってしまったイ
リスだが、彼はプレイボーイだった。イリスが妊娠したことを報告すると、アールネ
は「始末してくれ」という手紙と共に小切手を送ってきた。イリスは復讐を決意する。

アキ・カウリスマキ作品。私はこの映画を観てカウリスマキを好きになった。暗く悲
惨で救いのない物語である。カウリスマキ作品はシリアスでもどこかユーモアがあり、
ラストには希望の光が差しているものが多いが、この映画は全く希望がなく、容赦な
いのである。私がとても好きなタイプの映画だ。
とことん地味な少女(といっても成人していると思うが)イリスは、マッチ工場で働い
ている。冒頭でマッチ棒がザーッと流れていき、それを検品するという単純作業をし
ているイリスの姿に、のっけから不幸さを感じる。美人でもない彼女は同僚とディス
コに行っても誰からも誘ってもらえず、お酒だけを飲んで帰る。家に帰れば彼女の少
ない給料をアテにしている母親とその再婚相手がおり、2人ともイリスには少しも優
しくない。家事もイリスがしている。イリスはどこまでも孤独だ。ある給料日にイリ
スは派手なドレスを衝動買いしてしまうが、渡された給料が少ないことで母親にばれ
てしまい、返品を命じられる。いい加減我慢できなくなったイリスはそのドレスを着
てディスコに行き、アールネという男に誘われる。これがまた彼女の不幸を呼ぶ。妊
娠したことをアールネに手紙で伝えるが、裏切られる。更にイリスは交通事故に遭い、
入院中に義父に家を出ていってくれと言われるのだ。こんなに不幸な女性がいるだろ
うか。
イリスに優しくしてくれるのは、家を出て飲食店で働いている兄だけである。行くと
ころのなくなったイリスを、兄は自分のアパートに引き取ってやり、好きなだけいて
いいよと言う。そして兄の部屋に移ったイリスは、自分を傷つけてきた者たちへの復
讐を決意するのだ。いつものカウリスマキ作品のように、登場人物たちは皆無表情で
セリフが少ない。イリスは淡々と復讐を行い、その姿はユーモラスでさえある。イリ
スの不幸さは笑える程だ。ラストも本当に淡々としている。ここまで救いのないカウ
リスマキ映画は珍しいのではないだろうか。でもそこがいい。70分くらいのこの短い
映画は私の心を捉えて離さなかった。


良かったらこちらもどうぞ。アキ・カウリスマキの映画で特に好きなものです。

浮き雲
街のあかり
過去のない男
ル・アーヴルの靴みがき
希望のかなた




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