猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

さかなのこ

2022-09-30 22:15:29 | 日記
2022年の日本映画「さかなのこ」を観に行った。

小学生のミー坊は魚が大好きで、寝ても覚めても魚のことばかり考えている。
父親は周囲の子供とは少し違うことを心配するが、母親・ミチコ(井川遥)は
そんなミー坊を温かく見守り、背中を押し続けた。高校生になっても魚に夢
中なミー坊(のん)は、町の不良たちとも何故か仲が良い。やがて卒業して1
人暮らしを始めたミー坊は、多くの出会いや再会を経験しながら、ミー坊だ
けが進むことのできる道へ飛び込んでいく。

沖田修一監督による、さかなクンの自叙伝「さかなクンの一魚一会 まいに
ち夢中な人生!」の映画化。さかなクンの役を女優ののんが演じているのが
斬新だが、不思議ととても合っていた。小学生のミー坊は魚が大好きで、休
日には水族館へ行って閉館まで見ている。食事は毎日ミー坊がリクエストし
た魚料理を作ってもらう。頭の中が魚で一杯のミー坊のことを父親は他の子
と違うと心配していたが、母親のミチコは理解を示していた。子供が何かに
夢中になるのはいいと思うのだが、それが魚だと私だったら嫌だなあ。私は
魚介類が苦手なので、あまり食べたくないし。水族館で見るのは好きだが。
私のことはどうでもいいか。
やがて高校生になったミー坊は相変わらず魚に夢中で、毎日釣りに出かける。
ミー坊は町の不良たちと不思議と仲が良い。仲が良いというより、不良に絡
まれても超天然なので怯むことはなく、マイペースな態度をとるので不良は
調子が狂ってしまうのだ。ミー坊が釣った魚を捌いて刺し身にして彼らに食
べさせたりしているうちに、彼らも何となく魚に興味を持つようになる。魚
のことには非常に詳しいミー坊だが、魚に夢中なあまり学業は芳しくなく、
先生に大学受験のことで注意をされてしまう。
高校を卒業したミー坊は魚に関係する仕事に就きたいと、色々なところでバ
イトをするが、どうもうまくいかない(さかなクンは高校卒業後魚の専門学
校へ行っているが、映画では描かれていない)。そんな日々を過ごすうちに、
幼なじみで他の高校で不良になっていたヒヨ(柳楽優弥)や、同じ高校の不良
の総長(磯村勇斗)、総長とライバル関係だった他校の不良(岡山天音)たちと
再会する。皆大人になって真面目に働いていたのだ。総長のライバルだった
不良はミー坊の影響で魚に興味を持ち、寿司屋を経営していた。ミー坊は彼
らとの再会を通して、自分の進む道を見つけていく。
この不良(元不良)たちとミー坊のやりとりがとてもいいのだ。物語のメイン
と言ってもいいくらいだ。高校の時の不良たちはバイクを乗り回しケンカを
してイキっているが、発言がユーモラスだったり、抜けた感じがいい。彼ら
は実在の人物なのだろうか。どこまで実話なのだろう。ヒヨはミー坊がテレ
ビに出演するきっかけを作った人なので、実在の人かな?と思ったが。ミー
坊役ののんが生き生きと演じていたのが印象的だった。さかなクンと中高の
同級生で現在も親交があるドランクドラゴン・鈴木拓も出演していたし、さ
かなクンも町で有名な変な人の役で出演していて、微笑ましかった。特に盛
り上がりのある映画ではないのだが、ほのぼのしていて笑えて、おもしろか
ったでギョざいます。




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ザ・ワイルド

2022-09-26 16:14:58 | 日記
1997年のアメリカ映画「ザ・ワイルド」。

初老のチャールズ(アンソニー・ホプキンス)は大富豪で実業家。彼は若く美しい
ファッションモデルの妻・ミッキー(エル・マクファーソン)、彼女の専属カメラ
マンのロバート(アレック・ボールドウィン)、その助手のスティーヴ(ハロルド
・ペリノー・ジュニア)と共にアラスカへ旅行に訪れる。チャールズはミッキー
とロバートが不倫関係にあるのではと疑っていた。ある日、ミッキーを残して3
人で自家用機で出かけるが、不慮の事故で墜落し、彼らはアラスカの原生林に投
げ出される。それぞれの胸に思いを抱えながら、協力して脱出を目指す3人。だ
が、彼らの前に凶暴な人食い熊が立ちはだかる。

サバイバル・サスペンス。大富豪のチャールズは大変な読書好きで博識。彼は年
の離れた美しいモデルの妻・ミッキー、カメラマンのロバート、助手のスティー
ヴと共にアラスカ旅行に来ていた。チャールズはミッキーに対して馴れ馴れしい
ロバートを見て、彼らが不倫しているのではないかという疑念を抱いていた。山
小屋に宿泊するが、チャールズはロバートたちや山小屋の主人からドッキリを仕
掛けられ、誕生日を祝われるが、心臓が止まるほど驚いたにも関わらず決して怒
らない温厚な性格だ。
ある日チャールズはロバートとスティーヴの3人で自家用機で出かけるが、大量
の鳥の群れがガラスに衝突し、墜落してしまう。極寒の原生林の中、彼らは何と
か帰路を目指すが、途中で獰猛な熊が追いかけてきているのに気づく。ヒグマっ
て本当に見るからに恐ろしい。それにロバートたちを襲おうとしつこく後をつけ
てくるのでたまらない。脚をケガしていたスティーヴは逃げ遅れ、殺されてしま
う。人の味を覚えた熊は人食い熊になると聞くが、本当なんだなあ。チャールズ
とロバートは必死に逃げるが、観ていてとても怖い。
チャールズはロバートにミッキーとのことを何も聞かない。ロバートももちろん
言わない。2人が腹の探り合いをしながらも仕方なく協力している様子は興味深
い。そのうちチャールズはロバートが自分の命を狙っていることに気づく。チャ
ールズのサバイバル能力がすごい。博学なのでマスター・キートン並にすごい。
彼の知識で2人は熊の襲撃から逃れていく。チャールズとロバートがミッキーの
ことでどうやって決着をつけるのだろう、と思っていたが、ラストは切なかった。
ちなみに彼らが熊に襲われるシーンはCGかと思ったのだが、調教されている熊
で、名前をバートといい、多くのドラマや映画に出演したタレント熊だそうだ。
でも迫力あったなあ。なかなかおもしろかった。


台風を気にするノエル


ザ・ボート

2022-09-21 21:24:45 | 日記
2018年のマルタ映画「ザ・ボート」。

いつものように島から舟に乗り込み、海へと漁に出た男(ジョー・アゾパルディ)
は、突然分厚い霧の中に飲み込まれる。そして自分の立ち位置がわからなくなっ
てしまった上に舟の故障で立ち往生する。そんな時放棄されたボートに出くわす。
放棄された船舶を湾管理局に通報するために、そのボート(船)に乗り込み操縦を
しようとしたその時、まるでボート(船)は意志を持ったかのように動き出し、男
を船内に閉じ込めてしまう。

珍しいマルタ共和国のホラー映画。マルタってどこ?と調べてしまった。登場人
物は漁師の男(名前は出てこない)1人だけで、ジョー・アゾパルディの1人芝居で
ある。これが意外におもしろかった。男はいつものように小舟で漁に出るが、間
もなく霧に包まれ立ち往生してしまう。すると放棄された船を見つける。男は船
に向かって何度も声をかけるが、返事はない。男は船によじ登って入るのだが、
どうして入るかなあと思った。危険な人物が潜んでいるかもしれないのに。
船の中を調べるが人はいないようだ。だが着替えや食料品などがあり、まるでつ
いさっきまで乗組員がいたような様子だ。違和感を覚えながら男は無線で助けを
呼ぶが、通じない。男は気味悪さを感じながらトイレに入るが、トイレのドアが
勝手に閉まってしまい、どんなにノブを回しても開かない。男はトイレに閉じ込
められてしまったのだ。男は必死でドアを開けて出ようとするが、開かない。長
い時間が過ぎていく。夜が明け、男はまたトイレの中で奮闘し、やっとドアが外
れて出ることができる。
登場人物が1人なのでセリフもほとんどない。けれども男の表情や行動によって
恐怖は充分に伝わってくる。熱演である。男はやがて血痕を見つける。そして別
の部屋に入った時、またドアが勝手に閉まって閉じ込められてしまうのだ。男は
「またかよ」と言って必死にドアを開けようとする。この船は幽霊船なのだろう
か。観ていてもよくわからない。今どこにいるのか男にもわからない。とにかく
「船が意志を持っている」というのがとても怖い。いかにも低予算映画という感
じだが、不気味だし、時間も88分と短めでこの物語には合っており、なかなかの
掘り出し物だった。




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ハンガリー連続殺人鬼

2022-09-16 22:22:54 | 日記
2016年のハンガリー映画「ハンガリー連続殺人鬼」。

ハンガリーの田舎街マルトフで女性の他殺体が発見される。間もなく容疑者
として被害者と交際していたアーコシュ・レーティ(ガーボル・ヤースベレ
ーニ)という男が逮捕され、終身刑が言い渡される。ところが7年後、同じ街
で同様の手口の連続殺人が始まる。レーティの冤罪を確信したニョモーゾ・
ボータ刑事(ジョルト・アンゲル)とズルターン・シルマイ検事(ピーテル・
バールナイ)は真犯人を追うが、次々と遺体が発見され、街は恐怖に陥る。

ハンガリーに実在した連続殺人鬼ペーテル・コヴァーチをモデルにしたサス
ペンス・ミステリー。1957年、田舎街マルトフには大きな靴工場があり、
大勢の男女が働いていた。夜に仕事を終えて帰宅途中のある女性は、中年男
性アーコシュ・レーティに迎えられて一緒に帰ったが、途中で口論となる。
翌朝女性の遺体が発見された。遺体は頭部を殴られ屍姦されていた。目撃証
言からレーティが事情聴取を受け容疑を認めたために逮捕される。裁判でレ
ーティには死刑判決が下りるが、その後の裁判で初犯であることを考慮され
て終身刑に減刑される。
7年後、再び女性を狙った殺人事件や殺人未遂事件が発生し、いずれも被害
者は靴工場の従業員だった。収監中のレーティが殺人を行えるはずはなく、
担当のボータ刑事はレーティは冤罪ではないかと思い始める。この点はネタ
バレしておくがレーティは冤罪である。レーティは拷問を受け罪を認めたの
だ。当時のハンガリーは社会主義国で、そのせいもあるのだと思うが、速や
かな逮捕、起訴、裁判が要求されたのではないだろうか。実際レーティの自
供には矛盾が多い。
ボータ刑事とシルマイ検事は冤罪を確信し必死で捜査に当たる。無実を信じ
るレーティの妹も、面会の度に再審請求をするように勧めていたが、レーテ
ィは気力をなくしていた。物語はとことんシリアスで暗い。共産主義が背景
にあるせいもあるだろう。観る人によっては多少退屈に感じるかもしれない。
私はおもしろかったが。そして割と早くに真犯人はわかる。だが警察はなか
なかこの男に辿りつけない。警察を嘲笑うかのように殺人事件は続き、小さ
な街は恐怖に陥れられる。
捜査を組むベテランのボータ刑事と若く意欲的なシルマイ検事のバディもの
という側面もあるのだが、そこはあまり強調して描かれず、淡々と物語は進
行していく。レーティが刑務所の中で手首を切って自殺を図るシーンと、真
犯人の妻が夫が犯人であると気づき、でも警察に言えずに苦悩するシーンは
とても重たく、胸に迫るものがあった。最後まで暗い映画で、結局皆が不幸
のまま終わってしまう。ラストシーンもゾッとする。普通と言えば普通と言
えなくもない映画だが、私には見応えがあった。




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