アメリカ映画「ウインド・リバー」を観にいった。
アメリカ中西部・ワイオミング州のネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバー。
その深い雪に閉ざされた山岳地帯で、ネイティブアメリカンの少女の死体が見つかっ
た。第1発見者となった野生生物局の白人ハンター、コリー・ランバート(ジェレミー
・レナ―)は、血を吐いた状態で凍りついたその少女が、自らの娘エミリーの親友で
ある18歳のナタリー(ケルシー・アスビル)だと知って胸を締めつけられる。コリーは、
部族警察長ベン(グレアム・グリーン)と共にFBIの到着を待つが、視界不良の猛吹雪
に見舞われ、予定より大幅に遅れてやってきたのは新米の女性捜査官ジェーン・バナ
ー(エリザベス・オルセン)1人だけだった。死体発見現場に案内されたジェーンは、
あまりにも不可解な状況に驚く。現場から5km圏内には民家もなく、ナタリーは何故
か薄着で裸足だった。前夜の気温は約マイナス30度。肺が凍って破裂するほどの極限
の冷気を吸い込みながら、何故ナタリーは雪原を走って息絶えたのか。監察医の検死
結果により、生前のナタリーが強姦されていたことが判明する。
重たいサスペンス映画だった。ナタリーは何者かに乱暴され、逃げている途中に死亡
したことは明らかなのだが、直接的な死因は他殺ではない。極寒の冷気を吸い込みな
がら走っていると、肺が凍り、破裂し、その自分の血液で窒息死するのだと私は初め
て知った。つまりナタリーの死因は肺出血による窒息死なのである。法医学的に他殺
と断定できないと、FBIの専門チームを呼ぶことができないというルールの壁にぶち
当たってしまったジェーンは、自分1人で捜査をすることを余儀なくされる。経験の
乏しいジェーンはウインド・リバー特有の地理や事情に精通したコリーに捜査の協力
を求める。ジェーンは何としてでもかわいそうなナタリーのために他殺として犯人を
捕まえたかった。
コリーとジェーンがナタリーの父親マーティンの元を訪ねるシーンは本当に痛ましい。
マーティンの妻は精神を病み、息子はドラッグ中毒、そして愛娘の命まで奪われてし
まったのだ。私はネイティブアメリカンのことはよく知らないが、貧しく差別される
ことが多いという。そのためドラッグやアルコール中毒になってしまう若者が後を絶
たない。実はコリーはネイティブアメリカンの女性と結婚していて、その娘エミリー
を3年前に亡くしているという過去があった。それが原因でコリーは離婚し、エミリ
ーの死の真相は未だにわかっていない。エミリーとナタリー、親友同士の父親はそれ
ぞれ娘を失ってしまったのだ。何と辛く悲しいことだろう。
この物語はサスペンスの要素だけでなく、新米捜査官ジェーンの成長も描いている。
いきなり派遣された場所がネイティブアメリカンの保留地で、難しい事件である。そ
こでジェーンはコリーの協力の下、成長していき、清々しさも感じとることができる。
この映画は日本人よりもアメリカ人が観た方がよりおもしろいのではないか、と思っ
た。もちろん日本人の私でもとてもおもしろかったけれど。アメリカの闇を描いた映
画である。
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