8月29日 相模湾の潮流

2008年08月29日 | 風の旅人日乗
スタンドアップパドルというパドルボードで、
大島から葉山まで漕いでくる男のサポートをすることにした。

快く艇を貸してくれ、仕事を休んで同行もして下さるヨットのオーナーも見つかった。

予定日はまだ2週間先だけど、ここのところ毎日、
仕事の合間に天気の長期予報や相模湾の海流・潮流を調べている。
1年前、ホクレア号の水先案内をしていた頃の、
責任の重圧で、なんとなく胃の重かった日々を思い出す。

天気は、2,3日前にならなければ分からないけれど、
逆に、海流や潮流は、長い間見続けていることで、傾向をある程度把握できる。
海上保安庁の水路部の努力のおかげで、
最近は相模湾に入ってくる黒潮分流や潮流に関する
キメの細かい情報を手に入れることができる。
相模湾を流れている海流・潮流のリアルタイムの情報を、
毎日観察しながら、
2週間先の相模湾を流れる潮流をイメージする。

スタンドアップパドルは、サーフボードの上に立ち上がり、
長いパドルで漕ぐ、比較的新しいスポーツだ。
遠くから見ると一寸法師が海の上を渡っているように見える。
ただ、本来は外洋に出るための乗り物ではない。

不安定なボードに立って漕ぐためには、
当然下半身の筋肉をひどく動員しなければならない。
彼は屈強のパドラーだが、それでも、その疲労の具合は、
波があるかないかで、えらく違ってくるはずだ。
そして、他のパドルスポーツと違って、立って漕ぐわけだから、
向かい風で身体が受ける風圧抵抗は、かなり大きいことだろう。

つまり、彼のスタンドアップパドルでの相模湾縦断航の、
成功・不成功の大きな鍵を握るのは、
まず第1に波、次に風向だ。

風と、その風が起こす波については、
今の時点で心配しても意味がないので、
それについては、しばらく考えないでおくとしても、
決行日の風予報が出たときに、
その風によってどれくらいの悪い波が立つか、
あるいはいい波が立つのかを、
彼をサポート艇に乗せて大島に向けて葉山港を出発する前に、
ある程度予想できなければならない。

それだから、今から潮流の観察を続けておく必要があるのだ。

ここのところ相模湾を流れる潮は、2週間前に比べて強さを増している。
恐らく、伊豆諸島の南を流れている黒潮本流の流域と方向が変わったために、
黒潮の分流が相模湾まで強く流れ込むようになったのだろう。

現在の潮では、西系の風が吹くと、大島-葉山のレグの3分の2くらいまで、
極めて悪い波が立つ海面が続くことになるだろう。

潮の流れが強いと、そのことだけでも波が立つし、
さらにそこに風が吹くと、潮の向きに対する風向によっては、
かなり悪い波が立つ。
つまり、どの方向であれ、潮の流れが強過ぎるということは、
波を嫌う今回の計画にはネガティブファクターだ。


ただ、2週間前、下田から小網代までのヨットレース中に観測したところでは、
大島と城ヶ島との間には、1ノット前後の、穏やかな連れ潮が流れていた。

だから2週間後には、いまの潮は変化している可能性のほうが高い。
これからの観測で、その傾向をある程度予測することができるだろうね。