4月某日 東京・お台場

2010年04月09日 | 風の旅人日乗
             ©Team Nishimura Project


チームニシムラ・プロジェクトの、
2010年度の「親と子の海洋体験セーリング・イベント」について、
東京・お台場の船の科学館で打合せ。
今年度は、いろんな財団に2010年度のボランティア活動のための
助成申請をしたが、ことごとく断られた。


©Team Nishimura Project

スタッフウエアを御提供下さっている㈱ゴールドウインのヘリーハンセン事業部と、
東京海洋大学ヨット部OB会と、高松高校ヨット部OBの有志の方たちのご協力が、
今年度も心の支えだ。
本当にありがとうございます。感謝感謝です。


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助成申請は、日本の海洋文化存続ために活動している人たちを積極的に応援します、
と謳っている団体にまで断られた。
このことには、かなりココロが痛めつけられた。
「あんたたちのやっていることは、日本の海洋文化存続にとって意味がない!」
と宣告されたようにも思えた。


©Team Nishimura Project

これまで数年間続けてきた自費持ち出しでの開催ももはや限界に達し、
心まで少し弱まり、安全の確保にも自信が持てなくなった。

正確に言うと、こういうイベントでは事故の可能性を完全にゼロにすることはできない。
それを限りなくゼロに近づけるために、
能力があり、人間的にも信頼のおける人材の確保にも努め、
そしてもちろん、万が一の場合にも備えた賠償責任保険にも入っている。

しかし、保険は民事の問題に対処するためのものに過ぎない。
もしそういう事故が起きたときに、自分が責任者として最善の行動ができ、
当事者に対しては、仕事を投げ打ってでも責任を果たし、
日本のセーリング界の人たちには、絶対に迷惑が及ばないような、
毅然とした行動ができるのか、
現在の自分自身を疑うようになってしまったのだ。


©Team Nishimura Project

そのため今年度は、安全面の不安をなくすことを第一に考えて、
東京港内の海上でセーリングを体験してもらうことはあきらめて、
船の科学館の敷地内にあるイベント用プールで開催することにした。

子どもたちにプールでセーリングをさせるのは、
そもそも2004年にNHKの番組に出演したときに考え付いたアイディアだった。

それは、卒業した小学校を訪れて、いくつかのテーマを子どもたちに与えて
自分自身の人生を通じて得たものを彼らに伝える授業をする、という番組でのことだった。


photo by late Hideo Takahashi/撮影 故・高橋英夫氏

風と友達になる、ということのほかに、
チームワークを学ぶことをもうひとつのテーマにして、
故郷の町にあるモーターボートレース場で
子どもたちにセーリングでゲームをやってもらおうと計画した。

しかし撮影日とモーターボートレースの開催日との折り合いがつかずに
そこが使えず、
仕方なく、妥協案として選んだのが、
北九州市内にある屋外50m公認プールだった。

そのプールは、自分にとっても高校生の頃水泳部として泳いだ思い出のプールだった。
コンクリートに囲まれたプールだが、
もしヨットが転覆しても足が立つ、救助の人たちが周りにいっぱい居てくれる、
という安心感のあるプールでは、
子どもたちが転覆を怖がらなくなり、その分セーリングに集中できる、
ということに気が付いた。


photo by late Hideo Takahashi/撮影 故・高橋英夫氏

しかし船の科学館のイベント用プールは、
すでにたくさんのボランティア団体が予約利用されていて、
我々チームニシムラ・プロジェクトが利用できる時間枠は、
毎月第1日曜の午後しか残されていない。

この日程に、
協力してくれるセーリング・インストラクターの人たちや
ぼく自身のスケジュールを合わせなければいけないわけだから、
今年は、毎月体験セーリングを開催することは、難しいことになりそうだ。

今月号のヨット専門誌の、
トップセーラーの井田さんの連載コラムを読んだ。そして深く感じ入った。

その文章に感じ入ったのは、
セーリングを普及させようとする自分たちの活動が、
助成団体からことごとく認められず、
「金はやらん」と言われたことは、「やっぱり、そう来たか」という程度で
ほとんどショックではなかったけど、
助成申請が拒否されたこと、そのことで、
自分たちの、滅私のつもりの活動そのものまで否定されたと感じられ、
エネルギーをすっかり吸い取られてしまったような、
そんな気持ちに囚われていたときだったからかも知れない。

井田さんが書いていることは、とても的を射た、素晴らしい意見だと思った。
実は、1ヶ月ほど前にも、
別のトップセーラーの山田さんにも同じような考えを聞かされていた。

セーリングを簡単で楽だと言って誘うのはウソつきになるし、
興味を抱かない人を無理に引っ張り込むこともおかしい。
無理をしてまで日本のセーリング人口を増やそうとすることに
意味があるんでしょうか。

そう、その通りかもしれない。
特に井田さんの考えは、実はぼく自身の心の奥底にずっと引っかかっているもので、
これまでは、そういうふうに心の中で密かに考えている自分は間違っているのだ、
と否定してきたものだ。

2人の意見は、多分、正しい。

だけど、しかし、自分の場合に限った場合は、本当にそれで、
自分自身に対して、後悔しないだろうか、とも考える。

未来の日本人の間に海を愛する気持ちがなくなってしまったり、
我々の祖先が数千年をかけて培ってきた素晴らしいセーリング能力や
海洋文化が途絶えることになったりしても、
それは、セーリング普及活動を途中であきらめてしまった自分のせいではない、
と割り切ることができるだろうか。

たとえ、大したことはできないにしても、
これまでの人生全部で海とセーリングにガップリ四つで取り組んできた人間として、
何か、できること、やらなければならないことが、あるのではないだろうか。


©Team Nishimura Project

仕事の合間合間を縫って、途切れ途切れに、
このことを考えなければいけないので、
なかなか考えはまとまらないが、ここで正しい行動を選ぶことは
自分自身にとっても、とても大切なことなんだと、ココロが伝えてくる。


©Team Nishimura Project

どうしたらいいのかな。


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