日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

希望について

2013年11月20日 | 日記

希望について


A.希望について

 

1.希望とは何でしょう? 考えてみるに、それは一人の人間の場合、今日今ある状態

とは異なった成果を、今ある状態以降の時間に、生み出すことを言うように思います。

 

2.私は明日こうしたい。私は明日こうする。これは意志です。そして、この意志の持

続と、意志による行動の継続と蓄積が希望の達成に向かって行われます。この場合の希

望は目標とも言います。そして私達は、一つの希望を達成すると、次の新しい希望を心

に描きます。そして歩みを続けます。

 

3.社会の希望とは何でしょう?社会に新しい命(赤ちゃん)が誕生することは、その

社会の希望となります。その子は成長して、古代であれば、一族を率い建国の旅に出る

かも知れません。近現代であれば、新しい発明や発見をして、それまでの社会を変えて

しまうかもしれません。国連やEU、TPPと言うような新しい社会の枠組みを作るか

も知れません。しかし、逆の場合もあります。その子は、独裁者となって、人々の命を

枯らし、国を滅ぼしてしまうかも知れません。悪行の輩に堕するかも知れません。この

譬(たとえ)は、あり得ない話ではありません。むしろ私達の世界の現実です。

 

4.しかし、生まれてくる子供たちの未来は、その子供たちの生まれた社会が同質の倫

理規範を持つ社会であるならば、その子等(ら)の未来の可能性は無限大である点で同

一です。その子がどう育つかは、その子が、成長の過程で出会うものと、社会の規範を

その子がどのように消化し、社会の未来に対してどのように責任を負おうとしているか

によります。彼らの青少年期に社会の規範を教えるのはやはり人と教育です。

 

5.同時に、社会は不平等です。生まれたときの親の財力、地位によって、その子供ら

の選択の範囲は、広かったり狭かったり、既に異なります。この不平等を是正するもの

が、社会の機会均等の原則です。資力のない生徒や学生は、奨学金を受け取る機会が与

えられ、学ぶ機会とチャレンジする機会が均等に与えられるという原則です。そして、

あらゆる職業に就く機会が均等に与えられているという、職業の機会均等の原則です。

この原則が貫いている社会を、私達は、希望の持てる社会と呼ぶことができます。

 

6.この機会均等の貫いている社会の希望は、私達の希望と重なりましょうか?重なり

ます。世界は、人々の希望が社会を引っ張って来ました。そして現在があります。希望

が世界を変革して来ました。


  

B.希望を持つ人間が世界を変革する

 

1.人間は希望と共にあります。そして、希望を持つ人間が世界と社会を変革します。

 

2.この見地から、今回の「原発ゼロ」の小泉発言と、中国の改革者たちについて述べ

てみたいと思います。


 

C.小泉発言

 

1.小泉純一郎氏の「原発ゼロ」発言は、日本の未来社会(原子力発電能力を失ってし

まった社会)を、世界の未来社会(原子力発電能力を維持している社会)から隔絶する

ものです。これは、日本の社会が世界と共に発展して行こうという時に人々の持つ希

望、そしてそれに貢献しようとする人々の希望に対しても、原子力分野というひとつの

道を閉ざそうとするものです。容認できません。

 

2.人は、短期の現在利益を長期の将来利益より重視します。分かりやすい譬えで言え

ば、人は、現在のキャッシュで10兆円と、100年後の200兆円の手形を選択しろ

と言われた場合、多くの人が現在のキャッシュの10兆円を選択するということです。

小泉純一郎氏は、今そこで勝負をしようとしています。

 

3.原子力事故は克服すればよろしい。発電所は、3重・4重の安全装置を備えた事故

の起こらない構造とシステムにし、安全な岩盤の上に据え付ければよろしい。最終処分

場は作ればよろしい。それだけの話です。

 

4.そして現在、ビル・ゲイツ氏が筆頭株主である、テラパワーという会社は、劣化ウ

ランを燃料にするTWRという原子炉を開発中です。日本の東芝もこれに協力していま

す。(出典:ウィキペディア) また、東工大の関本教授が研究された「CANDLE

炉」というのもあります。(出典:同)

 

5.昔、イギリスの産業革命時に産業機械の打ちこわし運動が起こりました。人間は

困難を克服して歴史を切り開いて来ました。それが人間なのです。尻尾を巻いて逃げる

ことではありません。困難に尻尾を巻いて逃げだす民族の行く末はどのようなものであ

りましょうか?そこには、混乱と破壊と強者による蹂躙が待っています。

 

 

D.中国の改革者たち

 

1.中国共産党の「第18期中央委員会第三回全体会議」が11月12日に終わりまし

た。

 

2.彼らは、①.価格の自由化 ②.土地収用保障制度の整備 ③.法治の確立(その

一つとして、法律の手続きを経ることなく、人々を任意に拘束し、矯正名目で強制労働

に従事させていた制度の廃止) ④.自由貿易区の建設の加速 を決定しました。(出

典:北京時事、人民網WEB) 注; 決定事項はたくさんあります。 その内の4点を特

筆します。

 

3.彼らの思いと努力が伝わってきます。しかし、結びは、「国内の調和的な発展を図

(はか)り、世界の互恵と発展に尽くす」ではなく、「中華民族の偉大な復興という中

国の夢の実現」で結んでいます。コミュニケに書きこんでいる内政の目標項目を実現

し、チベットと新疆ウイグル地区の独立を認め、彼らを援助し友好関係を築くだけで

も、中国は十分世界から尊敬されます。ちょっと考えてみてください。例えば、「中華

民族」の中華を日本に変えてみてください。そうすれば、あなた方は勿論(もちろ

)、世界から日本軍国主義の野望の復活だという非難の大合唱が起こることで

しょう。それと一緒です。そういう時代は終わりました。かつて中国も「互恵」を掲げ

ていた時があります。その時に戻って、「互恵平和」の旗を掲げてください。そうすれ

ば、尖閣の問題も現在とは変ったものになります。

 

4.今年の9月15日に、許志永 氏を紹介しました。ここで再び、氏の獄中メッセージ

を聴いてください。中国共産党は、今回の「三中全」で「社会が法治社会である」こと

を決定しました。それ故、彼の出獄を期待しています。しかし、氏は解放されなくても

その志が砕(くだ)けることはないでしょう。何故なら、許志永 氏は、自分の主張して

いるものは正しいと確信し、人や社会に対して希望を持っているからです。志や希望と

いうものはそれを持つ人を強くします。

     

    許志永 氏 (出典:VOA)

 

5、ちなみに、許志永 氏達の運動である「新公民運動」の「新公民」とは、自由主義諸

国の「市民」とは少しニュアンスが異なります。それは、社会主義社会の住民である公

民が、自由主義諸国の市民が持つ自由と基本的人権を具(そな)えた、ニュータイプの

人間だと考えて大きく違う所はないと思います。更に補足しますと、イギリスの「権利

の章典」、アメリカの「独立宣言」、フランスの「人権宣言」によって、近代の市民像

が形作られたと言われています。このようなものの新しいタイプとして、「新公民」が

あります。

 

6.そしてもう一つ、中国に女性が発起人となった新しい政党ができたニュースを付け

加えさせてください。御存じの方も多いと思います。「至憲党」といいます。合法政党

です。BBC中文網とロイターが大きく報道していました。そして、もう一度書きます

が、今回の「三中全」で中国共産党は、「中華人民共和国の社会が法治社会であるこ

と」を決定しました。それ故、理不尽な理由で、政党の解散命令を出したり、関係者を

拘束したりすることは自分自身の決定に反することになります。この確認を行った上

で、彼女の写真を貼付致します。その運動は、憲法運動であると報告されています。

                                                                              

    

王錚 至憲党発起人 (出典:BBC中文網)

 

7.中国社会は確実に変って行きます。指導部の人々もそのことを明確に意識していま

す。そして新しい中国社会を作るのは、新公民運動や憲法運動、権利の意識に目覚めた

人々の運動であり、その人たちの持つ希望を社会の希望として受容できる社会を作って

行こうとする人々とその意志です。その先に「新公民宣言」があります。これが出来れ

ば、歴史的な事跡となります。これを行う人々にエールを送ります。

  

E.結語

 

1.社会は、人々の何らかの希望に対して閉じたものであってはならず、全ての希望は

機会均等の原則によって、その希望を持つ人が実現できる機会が与えられなければなり

ません。そうすることで、社会は活力を保ち、新しい発見や発明、新しい文化、新しい

産業、新しい社会が生まれる機会を持ちます。一つの可能性や分野に対して閉じてしま

うことは、将来の可能性に対して道を閉ざすことであり、これほどの人間に対する不寛

容はありません。心すべきです。

 

 

                    空

 

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