日が経つにつれ「放射線物質による汚染水」を「処理水」と強弁し公海に放出し始めた日本に対する周辺か国の反発がますます高まっている。
少なくとも政府の説明は正しくないと、フリーランスライタの木野龍逸が詳細に解説していた。
「トリチウム水と政府は呼ぶけど実際には他の放射性物質が1年で65回も基準超過」
福島第一原発で発生し続ける汚染水からトリチウム以外の放射性物質を取り除いたと東電が説明してきた水、いわゆるトリチウム水に、実際にはその他の放射性物質が取り切れずに残っていることがわかった。8月19日に共同通信が取り残しを報じた後、23日には河北新報が、2017年度のデータを検証したところヨウ素129が法律で定められた放出のための濃度限度(告示濃度限度)を60回、超えていたと報じた。 東電は23日の会見で、超過した回数は65回だったことを明らかにした。筆者がさらにデータを精査したところ、告示濃度限度を超えたのは昨年度下半期に集中していることがわかった。 トリチウム水は、8月30日と31日に今後の取り扱い方針を議論するための公聴会が開かれることになっているが、資源エネルギー庁が公表している説明用の資料にはヨウ素129は「ND」、つまり検出されていないと記載されている(8月25日現在)。 この資料は東電が2016年11月に作成したものをそのまま使っている。それにもかかわらず東電は、記者会見で資料の記載内容について質問すると「確認する」と繰り返し、回答を避けようとしていた。また実際には基準を超えていることもあったにも関わらずNDと記載していることについては23日の会見で、「ヨウ素に限らず、核種の濃度はフィルターの状況等によって、凸凹がある。もしNDと書いていればNDで、ND以上の数値が出るんであれば示している」と説明。記載に問題はないという認識を示した。 <資源エネルギー庁の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 説明・公聴会 説明資料」>(PDF開きます) 福島第一原発の汚染水は、多量に含まれる放射性セシウムと放射性ストロンチウムについては、セシウム除去設備や多核種除去設備を使って大部分を取り除いた状態で貯蔵している。このうち多核種除去設備について東電は、62種類の放射性物質を告示濃度限度以下まで除去でき、残るのはトリチウムだけと説明してきた。 例えば2016年11月2日に東電が原子力規制庁との面談で示した資料では、「62核種について、告示濃度限度を下回る濃度まで除去されていることを確認」と記載している。 <増設多核種除去設備処理済み水の分析結果>(PDF開きます) また、トリチウム水の取り扱いを検討しているエネ庁の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」の2016年11月11日の会合で東電が提出した資料では、「タンクに貯蔵している水は、トリチウムを除く放射性物質の大部分を取り除いた状態」と記載。貯蔵水に含まれる放射性物質は、ルテニウム106を除き、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129、コバルト60、アンチモン125は検出限界以下と、グラフで表示している。 <福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水処理の状況>(PDF開きます) ところが実際には、これら62核種のうちヨウ素129(I-129)、ルテニウム106(Ru-106)、テクネチウム99(Tc-99)が、17年度だけで65回、告示濃度限度を超えていた。 さらにデータを精査すると、2017年8月24日から18年3月26日の間は、2種類がほぼ常時稼働している多核種除去設備のうちのひとつ、増設多核種除去設備で、84回分析したうちの45回で告示濃度限度を超えていたこともわかった。稼働期間の半分は、基準を超えていたということになる。なぜこの期間に集中して超過していたのか、東電は説明していない。 またタンクに貯めている水は、東電は分析をしていなかった。東電が示したのは、ある一時期に多核種除去設備の出口側で採取した水の分析結果だけで、最終的にタンクに溜まっている水の性状はわからない。それでも東電は、タンクの水はほとんどの放射性物質を取り除いていると説明してきた。そして今後については、今のところ分析の計画はないという。 多核種除去設備で取り切れていない放射性物質があることについて記者会見で質問すると、「敷地境界での放射線量を年間1ミリシーベルト以下にすることが目標だった」のであり、すべてを告示濃度限度以下にすることではないと繰り返した。だからその目標に合わせて、放射性物質を低減する吸着材の交換頻度を調整していた。 また福島第一原発で測定している放射性物質についてはデータをすべて公表しており問題はないという認識を示した。 こうした東電の説明には、大きな問題があるというしかない。 まず濃度限度を超えていても目的には適っているので問題ないと東電はいうが、前述の資料にあるとおり、東電は多核種除去設備で告示濃度限度以下にできると説明してきた一方で、運用状況によって基準を超えているという説明はしていない。しかも昨年度下半期は、分析回数の5割以上が超過しているのに、記者会見など公の場ではまったく説明がなかった。これが誠実な姿勢といえるのだろうか。 また、データをすべて公表しているという東電の説明は、ウソではないが、CSVファイルに含まれる大量のデータを精査しないとなにがなんだかわからないのはあまりに自分本位だろう。 なにしろ使用中の多核種除去設備だけでも分析計画が21もあるうえ、分析期間が細かく分割されていて、ひとつひとつファイル名を確認しながら探す必要がある。期間によってファイルが変わってしまうので、ひとつのデータを追い続けるのも極めて困難なのが実情だ。 <データの例:福島第一原子力発電所における日々の放射性物質の分析結果(汚染水処理設備、構内タンク等、項目は1〜13まであり、それぞれに細かな分析計画がぶら下がっている)> そのうえ今回の件で、分析結果が東電の説明と違っていても、東電が自ら公表しないことがあることもわかった。これでは外部から福島第一原発の状況を確認するのは、ほぼ無理だろう。原子力規制庁の規制事務所が浜通りにあるとはいえ、常に原発構内に入っている職員は1〜3人程度。毎日5000人の作業員が入る現場をこの人数で監視するのは不可能だ。 今週、8月30日と31日にはトリチウム水の扱いについての公聴会が開催される。これまでトリチウム水の取り扱いについては、東電の資料にあるようにトリチウム以外はほぼNDであること(ルテニウムのみ検出)を前提に政府内で議論が進んでいた。その前提が崩れた中で、公聴会が開かれようとしていることになる。 東電は公聴会の時に最新のデータを公表するとしているが、いったいどのような説明になるのか。また主催者のエネ庁は、実際には残っている放射性物質があることをどのように参加者に説明するのか。注意深く見る必要がある。 |
処理水の中にはまだ放射性物質が入っていますので純粋なトリチウム水とは違うものとして扱わなきゃいけない。
— あらかわ (@kazu10233147) August 26, 2023
他の国の原発や施設からトリチウム水が大量に流れているから、これも大丈夫だとする説明は私は間違っていると思う。(鈴木達治郞 元原子力委員会委員長代理)#報道特集 pic.twitter.com/CNaOO6Y0aU
こればかりは、中国側の分析の方が科学的。
— 蓮池透 (@1955Toru) August 20, 2023
「第一に発生源が異なり、第二に放射性核種の種類が異なり、第三に処理難度が異なる」#汚染水海洋廃棄に反対します
中国原発の廃水と福島の汚染水は根本的に異なる 中国権威機関 https://t.co/C7Cm6M0jgP
根拠のないデマを流布すればそれは「風評被害」でもあろうが、現実に、5月に福島第1原発の港湾内のクロソイからは基準値180倍の放射性セシウムが検出されている。政府が港湾内と海洋の違いを言い「アンダーコントロール」と強弁しようとも、漁業関係者の不安は当然のものだ。https://t.co/anmJxHCpXH
— 一水会 (@issuikai_jp) August 26, 2023
原発の運転を支障なく継続するために、トリチウム水の海洋投棄を世の中に認めさせるという政府の狙いをズバリ暴いていた。
この問題だけでも岸田文雄内閣の前途は闇の中であるのだが、永田町界隈からも足を引っ張る動きが出ている。
「ついに国民の「大ブーイング」を"無視"しはじめた岸田総理…もはや「危険レベル」の総理に永田町で出回る「怪文書」の衝撃中身」
■岸田政権は「危険水域」で動けず 「本日、ここに、我々3人は、日米韓パートナーシップの新時代を開いていく決意を示します」 8月18日、ワシントン郊外にあるアメリカ大統領専用の別荘、キャンプ・デービッドで、バイデン大統領や韓国の尹錫悦大統領とともに共同会見に臨んだ岸田首相は、満足そうな表情を見せた。 キャンプ・デービッドは、歴代のアメリカの大統領が、重視する外国の首脳を招き、打ち解けた雰囲気で会談を行う際に利用されてた場所だ。1986年には中曽根首相が招かれ、レーガン大統領と「ロン・ヤス」関係を築き、2001年には小泉首相がブッシュ大統領とキャッチボールを楽しんだことでも知られている。 そのような由緒ある場所に招かれたこと、そしてそこで、中国などを念頭に、日米韓3か国による安全保障面での連携を強化し、「政権が代わっても協力関係を継続する」などとする「キャンプ・デービッド原則」を打ち出せたことは、岸田首相にとって、今年5月のG7広島サミットに次ぐ晴れ舞台にはなった。 とはいえ、岸田首相の前途には暗雲が立ち込めているままだ。 「解散? やれるわけがないよ。ガソリン価格の高騰だって、不満の矛先は岸田さんに向けられる。解散したら自民党は惨敗。10月解散の可能性なんて99%ないね」 とは、自民党議員から聞こえてくる本音である。実際、岸田政権への支持率は、毎日新聞や時事通信による世論調査で、「危険水域」とされる20%台まで落ち込んでいる。 ここで想起されるのが、先ごろ東京・永田町で出回った、岸田政権の低空飛行を受けての怪文書だ。それにはこんな記述が見られた。 「(来年の)総裁選には出ないかもな…。首相はポツリとこう漏らした」 「衆院解散・総選挙について、今秋はおろか来年の党総裁任期までに断行できず、退陣を余儀なくされる」 さすがにこの内容を鵜呑みにする議員や記者はいないものの、現在の岸田首相を取り巻く状況を思えば、「こんな風に書かれるのもむべなるかな」と言うほかない。なぜなら、やることなすこと、理解が得られないものばかりだからだ。 ■反転攻勢の糸口すらない岸田政権 政治が高校野球やラグビーなら、どんなに押されているゲームでも、試合中、1度や2度は反転攻勢の流れが来ることがあるものだ。ところが、岸田首相には、現在はもとより、近未来も、支持率を好転させる材料がない。 ■現在のマイナス材料は理解が得られないものばかり ・マイナンバー問題で収束の兆しが見えない 政治が高校野球やラグビーなら、どんなに押されているゲームでも、試合中、1度や2度は反転攻勢の流れが来ることがあるものだ。ところが、岸田首相には、現在はもとより、近未来も、支持率を好転させる材料がない。 8月8日に公表した総点検の中間報告では累計8000件超の誤りを確認。目標どおり11月末までに総点検を完了できたとしても、その後にミスが発覚すれば完全に信頼を失う。特にマイナ保険証に関しては、各種世論調査で過半数の人が「必要」と感じていない。 ・最側近、木原誠二官房副長官をめぐる疑惑が払拭できない 「週刊文春」で木原氏の“愛人と隠し子問題"が表面化。続いて、妻の元夫の“不審死問題"問題。も浮上。木原氏が何の説明もしていないという問題に加え、岸田首相の傍に、頼れる側近が不在となった点も大打撃。 ・自民党内で汚職疑惑やフランス「物見遊山」研修問題が尾を引く 秋本真利衆院議員が風力発電をめぐる収賄疑惑で離党。松川るい女性局長(その後、辞任)らのフランス研修も「まるで観光」と批判を浴びた。秋本、松川両氏の議員辞職を求める声に、「出処進退は政治家本人が…」などと常套句で返せば、支持率はさらに下がる可能性がある。 ■近未来のマイナス材料も理解が得られそうにない ・福島第1原発処理水の海洋放出で批判を浴びるのは不可避 8月20日、岸田首相の福島訪問、そして22日の関係閣僚会議で処理水の海洋放出が決まり、24日から放出が始まった。 政府と東京電力は2015年、福島県の漁協に「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分も行わない」と約束している。風評被害対策や漁業継続への基金(約800億円)創設だけでは、十分な理解を得たとは言いがたい。早速、中国は、「日本の海産物全面禁輸」という岸田政権も想定外の措置に踏み切った。 また、多核種除去設備(ALPS)で取り除くセシウムやストロンチウム等の放射性物質を最終的にどのように処分するのか明示されていない点も問題。 ・レギュラーガソリン「1L=200円」時代への怒り ガソリン価格の急騰で、9月末で打ち切られる石油元売り各社への補助金の延長は不可避。ガソリン価格は物価全体の高騰につながるため、国民の実質賃金を減らさない施策、たとえば、ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」発動、もしくは、ガソリン・電気・ガス料金への補助金継続に踏み切らなければ、二重課税を余儀なくされている国民の不満は岸田政権に向けられる。 ・中国の不動産大手の中国恒大集団のアメリカ連邦破産法の適用申請での余波 中国の不動産バブル崩壊で、日本企業の中国向け輸出が減る。それだけでなく、中国富裕層が日本の不動産に投資するようになり、マンション価格がアップしてしまう。岸田政権としては「注視する」だけでは済まなくなる。 ・難しくなった電撃的訪朝 小泉訪朝時のようなパイプ役が存在せず協議が進んでいない。仮に訪朝できたとしても、訪朝に見合う拉致被害者や特定失踪者の帰国が期待できない。ただ、岸田首相は5月27日、「私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と述べており、結果が求められる。 ・自民党役員人事と内閣改造は両刃の剣 茂木敏充幹事長の交代、小渕優子元経産相の抜擢などがあれば波紋を拡げる。特に小渕氏を重要ポストに起用すれば、女性抜擢になる一方、「ドリル問題」(政治資金規正法違反事件で、証拠隠滅のため、会計書類などを保存したパソコンにドリルで穴を開けた疑惑)が再燃する。 ■頼みの綱は、安倍派の内紛と菅グループの失速 そうした中で、唯一、頼みの綱と言えるのが、自民党最大派閥、安倍派の内紛と「ポスト岸田」に影響を与える菅グループの失速であろう。 このうち、安倍元首相死去のあと「会長」不在の安倍派は、8月17日、総会を開き、代表となる「座長」に塩谷立会長代理が就く新体制を了承した。当面は会長を置かず、主なメンバーが参加する「常任幹事会」を設け、その取りまとめ役を塩谷氏が担うというものだ。 新設される「常任幹事会」は、「5人衆」と呼ばれる、松野博一官房長官、萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長、そして、当選回数ごとの代表者らで運営されるが、こういう集団指導体制は脆い。 筆者が在京ラジオ局で政治キャップを務めていた頃、最大派閥だった小渕派は、2000年に小渕元首相、竹下元首相が亡くなったのを契機に、派閥の求心力と党内への影響力が著しく低下した。 「5人衆」と下村博文元文部科学相ら古株の議員との間で確執が続く安倍派も同じ運命をたどるように思えてならない。 「誰かがトップになれば混乱に拍車がかかる。萩生田氏では統一教会の影が残り、過去に女性下着窃盗疑惑が浮上した高木氏だと『安倍派=パンツ派』と呼ばれかねない。西村氏のように、2025年までに首相になるという野心を隠さず、自家用車のナンバーを『2025』にするような人もちょっと…」(総会を取材した在京局政治記者) 「マスメディアは、亀裂だ、分裂だと騒ぐが、安倍派の状況は1年前と全く変わっていない。去年の記事を今もそのまま掲載できるくらい変化がない。所属議員が100人もいる大派閥が簡単に割れたりしない」(安倍派中堅議員) つまり、安倍派は分裂せず存続する反面、来年秋の自民党総裁選挙で岸田首相の対抗馬を、派閥として擁立できないということだ。これまでどおり、最大派閥の安倍派が岸田首相支持を継続するなら、第4派閥のトップにすぎない岸田首相にとってはプラスになる。 もう1つは菅グループの失速である。前回の総裁選挙で菅氏らが支持した河野行革相(当時)は、デジタル相としてマイナカード問題の渦中にあり、菅氏を「政界のおやじ」と慕い、河野氏の側近を自認してきた秋本氏は、先に述べた収賄疑惑で離党を余儀なくされた。これらの影響で菅氏は倒閣に動きにくくなった。これも岸田首相には好材料だ。 後略 |
消去法的に考えれば、当面は岸田文雄の地位を脅かすヤカラは見当たらないが、今回の汚染水海洋垂れ流し問題が時間が経つにつれて「アキレスの腱」になるのではないだろうか、とオジサンは思う。