今回は、「色絵 向かい蝶文 小深皿(5客組)」の紹介です。
表面
裏面
代表の1枚の表面
蝶が左右から向かい合っています。
代表の1枚の側面
代表の1枚の裏面
生 産 地: 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期の終り~後期
サ イ ズ : 口径;12.2~12.5cm 高さ;3.7~3.9cm 底径;5.7~6.0cm
なお、この「色絵 向かい蝶文 小深皿(5客組)」につきましても、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しているところですので、次に、その時の紹介文を再度掲載することをもちまして、この「色絵 向かい蝶文 小深皿(5客組)」の紹介とさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー165 伊万里色絵向かい蝶文小深皿 (平成23年12月1日登載)
初めて見る方は、この小深皿には何が描かれているのか分からないと思う。
翅を広げた蝶二匹が左右から向かい合っている構図なのである。
この構図は、広く好まれたようで、古伊万里のみならず、中国の陶磁器やその他の分野にも多く登場してくる。
ところで、この小深皿には、かなり、コスト削減に取り組んだ努力の跡が見てとれる。
写真からだと良く分からないかもしれないが、見込みを蛇の目状に釉ハギしている。それによって重ね焼きすることが可能なわけである。また、素焼きをしないで、生掛けで、いきなり本焼きしたようである。
つまり、素焼きをしないことによって焼成回数を1回減らし、しかも、重ね焼きして本焼きし、大量に色絵生地を作ることによってコストを削減しているわけである。
色絵付けにしても、例えば、牡丹の花など、花びら1枚1枚を丁寧にダミ染めすることなく、太い赤線1本で済ませ、色絵付けの手間を省き、コスト削減に努めているのである。
では、どうしてこのようなコスト削減に努めなければならなかったのだろうか。
それは、中国景徳鎮の輸出再開に伴い、だんだんと、伊万里は景徳鎮とのコスト競争に敗れ、輸出不振に陥っていったわけで、その分を内需拡大に頼らざるを得なくなったことによると思われる。
しかし、内需拡大を図るには、従来の国内富裕層以外の需要層の開拓を図らねばならないわけで、それにはコストを削減し、従来よりも低価格なものを準備せざるを得なくなったからだと思われる。
そのような時代背景を考えると、この小深皿は、伊万里の海外輸出が終焉を迎えた以後の、江戸中期の終り頃から江戸後期頃に作られたものと思われる。
江戸時代中期の終り~後期 口径:12.2~12.5cm 高台径:5.7~6.0cm
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*古伊万里バカ日誌97 古伊万里との対話(蝶文の小深皿)(平成23年12月1日登載)(平成23年11月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
小 蝶 (伊万里色絵向かい蝶文小深皿)

・・・・・プロローグ・・・・・
主人は、例によって、購入の古い順で、かつ、これまでに対話をしていない古伊万里を、「押入れ帳」を見ながら捜し出し、押入れから引っ張り出してきて四方山話をはじめた。
主人: さすがに、最近ではめっきり寒くなってきた。こうして、日当たりの良い廊下で日向ぼっこをしながら四方山話をするにはふさわしい頃合いとなってきたな~。
小蝶: でも、私は蝶文ですから、この時季に登場するにはふさわしくないのではないですか。
主人: まあな。私はそもそも、季節に合わせて登場してもらうとか、正月とかの行事に合わせて登場してもらうというようなことはしてないんだ。というのは、我が家は貧庫ゆえ、そんな芸当が出来ないからだ。
季節はずれに登場させ、寒いおもいをさせてしまったようだけど、許してくれ。
でもね、屁理屈を言うようだけど、蝶の中でも、1割くらいの種類は成虫で越冬するらしいよ。成虫で越冬する蝶は、暖かい日には活動するものもいるらしいから、今頃登場させてもあながち誤りということもないかもしれないな。
小蝶: そうでしたか。蝶といえば暖かい季節にしか飛んでいないと思いました。
主人: ネットで調べてわかったんだが、そうらしいよ。何事も、常識とか先入観で考えてしまってはいけないんだろうね。そこには新発見なんか生まれて来ないし、何の進歩も生じないものね。
そうそう、新発見と言えば、先月だったか、幻の蝶と呼ばれ、イギリスの博物館にしか展示されたことのない、ヒマラヤの貴婦人と呼ばれる珍しい蝶のブータンシボリアゲハが、日本の調査団によって、ブータンで80年ぶりに再発見されたという記事が新聞に載っていたな。もっとも、これは再発見の話しだから、厳密には新発見の話しにはならないけれども、、、。
小蝶: そうでしたね。もう絶滅してしまったと考えられていたんでしょうね。
主人: そうだね。何事も、常識や先入観に捉われてはいけないということだね。頭を柔軟にして考えないとね。
ところで、ブータンといえば、幻のブータンシボリアゲハが先導してきたかのように、今度は、それに引き続いて、若きブータン国王御夫妻がヒラヒラと我が国に舞い降りてこられ、爽やかな笑顔と「国民総幸福量」という概念を置き土産にして去っていかれたことは記憶に新しいな。
小蝶: そうでした。若い国王御夫妻の爽やかな笑顔が印象的でした(^-^)
主人: 「国民総幸福量」なんていう概念も、物質文明にどっぷりと浸かってしまっている我々に大きなインパクトを与えたね! 人間の本当の幸福って何なのだろうと! 幸福度は何を尺度にすればいいんだろうと!
小蝶: 残していかれた爽やかな笑顔といい、人間の幸福というテーマといい、インパクトが強かったですね。
主人: 人間の幸福の尺度なんていうものも、これまでの常識や先入観で判断してはいけないということを我々に教えていったね。
小蝶: ところで、ご主人は、私のような蝶の文様をお好きですか。
主人: はっきり言って嫌いだな。だいたい、ちょっと見には何が描いてあるのかわからないじゃないの。よ~く見ると、二匹の蝶が向かい合っているということがわかるけど、、、、、。
ホント、私は、最初にこの手の古伊万里を見た時には、何が何だかわからなかったよ。その後、この手の古伊万里を相当数見ているから、結構好まれて描かれている構図なんだろうと思うようになった。
お前を購入する頃には見慣れていたから、すぐ蝶が描かれていることはわかったけどね。お前のように図案化されてしまうと全く困るよ。蝶は一匹でヒラヒラと舞い飛んでいるからこそ美しいんであって、こんな風に図案化されてしまうと、美しいどころかグロテスクささえ感じるな(><)
小蝶: それはお言葉ですね(><)
今、ご主人は、何事も、これまでの常識とか先入観に捉われてはいけないと言ったばかりじゃないですか! 一匹だけでヒラヒラと舞い飛んでいる蝶だけが美しいわけではないでしょう! ご主人は、これまでの常識や先入観に捉われていますよ! そんなことでは、新しい美の発見など出来ないでしょうし、鑑賞眼の向上も期待出来ないと思いますよ!
主人: これはマイッタ。一本取られたな!
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