今回は、「金襴手 欄干に花蝶文 豆皿(5客組)」の紹介です。
表面
裏面
代表の1枚の表面
代表の1枚の裏面
生 産 地: 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ: 口径;8.6~8.8cm 底径;4.8~5.1cm
なお、この豆皿につきましても、既に、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で紹介しておりますので、ここで、その時の紹介文を次に再度掲載し、この豆皿の紹介に代えさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー169 伊万里金襴手欄干に花蝶文豆皿 (平成24年4月1日登載)
このお皿を、「小皿」と区分するのか、「手塩皿」と区分するのか、或いは「豆皿」と区分するのかは微妙なところで、人それぞれであろうが、ここでは、一応、「豆皿」に区分した。
この豆皿は、小さいながら、華やかであり、気品もあり、なによりも春爛漫を感じさせるところがいい。
この豆皿は、作られた当座、本当に塩を盛られてお膳に添えられたのであろうか?
確かに、食器として作られたのだから、塩を盛られたり、醤油を入れられたり、香の物を入れられたには違いなかろう。
でも、今では、その役目も終り、次なる活躍の場が与えられているように思える。
この豆皿を見ていると、春を感じるからである。今では、鑑賞陶器として、人に春を感じさせるという立派な役目を果たしているように思えるのである。
江戸時代中期 口径: 8.6cm~8.8cm 高台径: 4.8cm~5.1cm
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*古伊万里バカ日誌100 古伊万里との対話(春爛漫の豆皿)(平成24年4月1日登載)(平成24年3月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
豆 子 (伊万里金襴手欄干に花蝶文豆皿)
・・・・・プロローグ・・・・・
例年になく寒くて長い冬もようやく去り、春爛漫を迎える時分となってきた。
そうした中、主人は、春爛漫を感じさせるような古伊万里との対話がしたくなったようで、押入れの中をひっかきまわし、小さいながらもなんとかそれらしいものを見つけ出したらしく、さっそく引っ張り出してきて対話をはじめた。
主人: 今年の冬は長く厳しかったな~。春が待ち遠しかった。
豆子: そうでしたね。やっと春らしくなりましたね。
主人: 春らしくなってきたところで、周囲に春爛漫をふりまいているような古伊万里と対話をしたくなったのでお前に出てもらった。
豆子: でも、私は小さいので、迫力不足ですね。大皿ぐらいの大きさがありますと、ドーンと迫力もあり、いかにも「春爛漫」という感じになるんですけど・・・・・。
主人: まあね。確かに、1枚だけだったらちょっと寂しい感じで、早春ぐらいにしか感じさせないかもしれないが、幸いお前は5枚揃っているので、5枚を一度に並べれば、まぁまぁ、春爛漫を感じさせると思うよ。
豆子: ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。
ところで、私のような小皿は、「豆皿」とか「手塩皿」とか言われるんですが、それについては、何か、いわれと言いいますか、定義みたいなものがあるんですか。
主人: そうね。「豆皿」については、「豆電球」とか「豆本」とかと言うように、「豆」は、形の小さいものを指し示す時に使われるから、「豆皿」は文字どおり、「小さい皿」ということだね。そして、「手塩皿」との関係だが、「手塩皿」のうちでも特に小さいものを「豆皿」と言っているようだね。
じゃ、何故、お前のようなものを「手塩皿」と言うのかだね・・・・・。
「手塩皿」については、昔、膳部を浄(きよ)めるために、小皿に塩を盛ってお膳につけたのがその起こりだとか、昔は、食べる人が自由に取れるように膳に塩を盛った小皿を添えて出したのがそのいわれだとか、或いは、民俗学的には、掌を皿がわりにしてそこに塩を置き、食べ物にその塩をつけて食べたことからくるとか言われているね。
私は、「手塩皿」には、「手」・「塩」・「皿」が全部直接関連してくる民俗学的な説明が一番説得力があると思っているがね。
「手塩皿」の命名のいわれはそんなところだが、今では、食卓で醤油や香の物、佃煮といったようなものを入れる小さくて浅い皿のことを「手塩皿」と言っているね。「おてしょ」とも言われているかな。
豆子: そうですか。ありがとうございます。
ついでにお伺いしますが、「小皿」とか「手塩皿」とか「豆皿」とかと言われているんですが、それらの大きさには相互にどんな関係があるんですか。何か定義みたいなものがあるんですか。
主人: どのくらいの大きさのものを「小皿」と言い、どのくらいの大きさのものを「手塩皿」と言うのか、或いは、どのくらいの大きさのものを「豆皿」と言うのかは難しい問題だね。大きさの感覚は人それぞれだからね。
まっ、それでも、人によっては、「直径四寸以下の皿」を手塩皿と定義したり、また、表現は異なるが、「手の平全体を覆うくらいの皿」を手塩皿と言うことにしている人もいるね。その場合、その人達は、手の平の半分程度より小さな大きさのものを「豆皿」と呼んだりしているようだね。
古美術の世界では、口径が尺以上あるような皿を大皿と、口径7寸前後の皿を中皿と、5寸前後の皿を小皿と言っているかな。
「鍋島」なんかでは、将軍の食膳具だったから、大きさも厳格に決められて献上されていたようだね。尺皿、7寸皿、5寸皿、3寸皿というような具合にね。これを、現代風に表現すると、尺皿=大皿、7寸皿=中皿、5寸皿=小皿、3寸皿=手塩皿ということになるのだろうか。しかし、「鍋島」が献上されていた江戸時代には、尺皿は大皿とは言わず、「鉢」と言っていたようだね。というのは、「鍋島」の場合は、木盃形に造形されるので、「尺皿」くらいの大きさになると、見込みが深くなって、「皿」というよりは「鉢」のように見えたからだろう。そして、7寸皿を大皿と言い、5寸皿を中皿と言い、3寸皿を小皿と言っていたようだ。
江戸時代にあっても、「鍋島」だけが、大きさについて、独特の基準で呼称していたのかどうかは知らないが、大皿、中皿、小皿というような大きさの区分は、時代によっても、また、使用される環境によっても違ってくるんじゃないかと思うんだ。厳格な区分は難しいと思う。
豆子: はい、わかりました。
お話しは変わりますが、私のような、手塩皿とか豆皿は人気があるんですか?
主人: うん。結構、人気があるんだよ。バラエティに富んでいるし、品もあり、洗練された意匠のものもあったりするので人気があるんだ。それに、古美術の世界では、どうしても、大きな物は値も張るが、手塩皿とか豆皿というような小さな物は値段も安くて買い易いからね。そのような小さな物を集めているコレクター向けに、「小皿・豆皿」というようなタイトルを付けた本も何冊か出されているようだね。
豆子: ご主人も、「小皿・豆皿」を多く集めているんですか。
主人: 私の場合は、「小皿・豆皿」を意識して集めているわけではないので、蒐集品の中に「小皿・豆皿」が多いわけではないね。
ただ、普通言われる5寸前後のいわゆる「小皿」というのが多いかね。市場に一番多く出回っているのは5寸前後の皿が多いので、結果的にそうなったんだね。現代の一般家庭を見てもわかるだろう。各家庭で一番多く存在するのは5寸前後の皿だものね。一番数が多いから、古美術の世界でも一番残存数が多いんだろうね。
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