ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

フェアウェル

2020-04-08 22:57:34 | は行

やさしくて、不思議に心地いい。

 

「フェアウェル」72点★★★★

 

**********************************

 

NYに暮らすビリー(オークワフィナ)は

6歳のとき、両親とアメリカにやってきた移民二世。

 

大学を卒業したものの、希望する仕事に就けず

落ち込む日々。

 

そんな彼女を励ましてくれるのは

故郷・中国で暮らす

仲良しの祖母のナイナイ(チャオ・シュウチェン)だ。

 

今日も電話でナイナイと話し、

「じゃまたね」と少し元気をもらったビリーは

近くに住む両親を訪ねる。

 

しかし、なんか両親の様子がおかしい。

 

問い詰めたビリーに両親は口を割った。

「ナイナイは肺がんの末期で、余命わずかなんだ」――。

 

驚くビリーに、さらに父は追い打ちかける。

 

「親族一同、このことをナイナイにナイショにすると決めた。

お前はすぐに顔に出るから、ナイナイに会いに行ったりするなよ」

 

――えええ?!

当惑するビリーは、果たして?!

 

**********************************

 

 

余命宣告された祖母に

親族一同が「やさしいウソ」をつき通そうとするお話。

 

「ルーム ROOM」(15年)「ムーンライト」(16年)でいま、一番勢いある

映画スタジオ「A24」が手がけ、

わずか4館公開から、全米トップ10入りを果たした作品です。

 

 

監督ルル・ワンの実体験が基になっているそうで

これは、たしかに映画的題材だよなあと(笑)

 

祖母ナイナイに病気を知らせず、

孫息子の結婚式を口実に、中国に集まった親族たち。

何も知らないナイナイの前で

大いなるウソをつき通そうとする

主人公ビリー(演じるオークワフィナがいい!)や一族の

ドタバタやハラハラが可笑しくて(笑)

 

笑いあり、ホロリあり、

やさしくて、不思議に心地いい映画でした。

 

 

舞い込んできた小鳥、披露宴会場の隅で休憩する獅子舞――など

「ささやかなもの」への監督の目線も

映画にやさしさを醸している。

 

さらに

家族が海外に散らばるグローバル社会の現状、

自由の国・アメリカで実はいろいろ不自由な主人公ビリーの様子など

映画はいろんな「いま」を写してもいる。

 

何処にいても"異邦人”なビリーの姿を見ながら、

監督自身が、この物語を通して

自分のルーツを再確認しているように感じました。

 

それにね。

ワシもビリーと同じく

余命は知りたいし知らせる派、だったけど

この映画をみて

「知らせなくていいや」と思うようになった。

これ、けっこう大きい気がしました。

 

「AERA」でルル・ワン監督にインタビューさせていただいてます!(スカイプです)

上記のことを監督に伝えたところ

「それは嬉しい!でも、私は正直、撮影前より、どうしたらいいか迷ってしまってる」と

おっしゃっていました(笑)

 

 

ちなみに。

「やさしい嘘」キーワードで思い出すのは

この映画。

「やさしい嘘と贈り物」(08年)

これ、すっごくいい。

 

あと

「グッドライ~いちばん優しい嘘~」(14年)

もなかなかの良作です。

(ブログ見返すと、番長おおむね辛口、張ってんですけどね(苦笑)

 

いい映画、棚にいっぱいあります。

こんな時分だからこそ、ぜひぜひ楽しんでください。

 

★近日公開。

「フェアウェル」公式サイト

※公開情報は公式サイト、劇場情報をチェックしてください。

よきタイミングでご鑑賞いただけることを願っています。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ムヒカ 世界でいちばん貧しい... | トップ | WAVES/ウェイブス »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (kaitaimachi)
2020-04-09 13:00:58
はじめまして。
素敵なレビューで観たくなりました。
優しい嘘、、、「グッバイ、レーニン!」を思い出しました^^*
返信する
よかったです! (ぽつお番長)
2020-04-09 14:34:05

そう言っていただけて嬉しいです。

新作映画が続々と公開延期になるなかで
紹介のタイミングをすごーく迷ってるのですが
(ホントはもちろん
紹介してすぐ観られるのがベストだし)

でもまあ
このブログはまったくの非営利だし
情報が枯渇してるなかで
逆に楽しみに待っていただけることもあるかな~と
細々と続けております。

ぜひ、楽しみに、ご覧ください!

そうだ
「グッバイ・レーニン!」もあった!
あれも最高でしたね。
返信する

コメントを投稿

は行」カテゴリの最新記事