ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

マダム・マロリーと魔法のスパイス

2014-10-30 23:22:34 | ま行

インドのスパイスって効くねえ・・・


「マダム・マロリーと魔法のスパイス」70点★★★★


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インドの都市ムンバイで
レストランを経営していた料理人一家のカダム一家。

なかでも
次男のハッサン(マニッシュ・ダヤル)は
天才的な味覚を持つ、若き料理人だった。

しかしある事件が起こり、一家はインドを離れ
南フランスのある町でインド料理店を開こうとする。

しかしお向かいには
マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)が経営する
ミシュラン1つ星のレストランがあり――?!

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展開がスムーズに行き過ぎな気もするけど、
とにかく見やすい“映画らしい映画”です。

製作にスティーブン・スピルバーグや
かの米トーク番組司会者オプラ・ウィンフリーが名を連ね、
“良質”の香りがプンプン。

そして
裏切りません。


なんといっても「ミリオンダラー・アーム」に続き、
ここでもインドらしさを盛り上げる
音楽担当A.Rラフマーンが大活躍。

ノるねえ、やっぱり。

かつ
ラッセ・ハルストレム監督らしい“上品さ”“上質さ”
損なわない系統の音楽もちゃんと入っていて、

映画自体がまんま映画の題材である
「インドのスパイスと伝統フレンチ(ヨーロッパ)の融合といいとこ取り」ですな。

で。
見終わってどちらが食べたくなったかというと
……あれ?意外にフレンチ?(笑)


★11/1(土)からBukamura ル・シネマほか全国で公開。

「マダム・マロリーと魔法のスパイス」公式サイト
コメント (2)
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馬々と人間たち

2014-10-29 23:36:54 | あ行

アイスランドって、ここにあるのか・・・(地図を見てます)


「馬々と人間たち」68点★★★☆


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馬と人間たちが共に暮らす
北欧の国アイスランド。

独身男のコルベイン(イングヴァル・E・シグルズソン)は
美しい牝馬に乗り、

村中が双眼鏡で見守るなか
未亡人(シャーロッテ・ボーヴィング)に会いに行く。

だがその帰り道、
未亡人の種馬がコルベインの馬に突然のしかかり――?!

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いい意味で“風変わり”な映画です。

馬と人間との関わりをいくつかのエピソードで繋いでいて

エピソード合間合間に、馬の目のアップが入り
馬の視点から人の営みを
「ほ~」(時に「アホやなあ」)と、冷静に見ている感じ。

テンポも雰囲気も独特で、
妙な生々しさがあったり、「え?」という展開があったり

おもしろいことはおもしろいんですが
状況がわからないまま過ぎる場面が多く
(後でわかってはくるんですが)

なにより人もあっさり死ぬけれど
馬の死が関わるシチュエーションが多くて
イマイチ乗り切れない。

そんな結果になるならもっと真剣に止めようよ!とか
思ってしまうのですよ。


まあしかし
アイスランドという場所は
自然も厳しく
人の営みにも荒々しくむき出しな感じがある。

暮らしがまさに人馬一体な国ならでの感覚なのかと
そう考えると生き死にへのクールな視点も
お国柄というか、なるほどと思えるんですけどね。

音楽もちょっと変わっていて
「知らない文化を知る」趣きがありました。


★11/1(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「馬々と人間たち」公式サイト
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美女と野獣

2014-10-27 23:25:54 | は行

実はこの話、ちゃんと知らなかったんですよねー。


「美女と野獣」69点★★★★


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昔むかし。

ベル(レア・セドゥ)は
裕福な商人の父に愛されている末娘。

だが父は破産し
ベルは家族で田舎に超してくる。

ある夜、森で道に迷った父は
不思議な城にたどり着き、豪華な食事を振る舞われる。

しかし帰り際に一輪の薔薇を
ベルの土産に、と手折ったことで
父は城の主である野獣の怒りを買ってしまい――?!


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ああ、クリストフ・ガンズ監督って
「ジェヴォーダンの獣」(01年)の人かあ!
懐かしいなー。そして獣好きね(笑)


本作はお話をよく知らなかったのも幸いしたのか
思ったよりおもしろく
単純に「こういう話だったのか…」と、楽しめました。

「なぜ野獣になったか」については
オリジナルにもハッキリ書かれていないそうで

そこに
独自の解釈を加えているのでしょう。
そこがよかったのかも。


それにドレスや美術が
本当に美しい。

細工も細かくて、惚れ惚れ。

レア・セドゥが様々なドレスをまとう、
そのコスプレ見るだけでも意外と楽しいですよ。

そして
野獣役のヴァンサン・カッセル、
魔法にかかる前の王子時代も
フツーに野獣っぽいんですけど
それがいいのか、かえってイマイチなのかはビミョー(笑)


★11/1(土)から全国で公開。

「美女と野獣」公式サイト
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イラク チグリスに浮かぶ平和

2014-10-25 16:45:39 | あ行

見るべき映画。
我々日本人も、無関係ではないのだ。


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「イラク チグリスに浮かぶ平和」73点★★★★


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2003年3月のイラク戦争開戦から
現地を取材してきたジャーナリスト・綿井健陽氏による
10年間のドキュメンタリー。

数々の映画賞を受賞した
「Little Brids イラク 戦火の家族たち」(05年)に
登場した家族を、再び取材しているそうですが
(未見です)

改めて開戦から順を追って描かれているので
前作を知らずとも“イラクで何が起こっているのか”が
よくわかります。

そして
かなり、打ちのめされました。

なんということが起こっているのだろうと。
そして
自分はなんと、よくわかっていなかったんだろうと。

ちょこちょこニュースや特集で
見てはいたんだと思うのですが
108分、しっかり腰を据えて見ると全然違いますね。


開戦の数日前からカメラは
バグダッドの日常や
ニュースで見慣れた映像の裏側を果敢に撮り続ける。

倒されるフセイン像を
しらけたような、複雑な表情で見守る人々の表情なども強烈ですが


空爆で3人の子を亡くしたアリ・サクバンという男性と知り合い交流が始まり、
映画の主軸が彼になってからは
より戦火の市民の窮状が身近に、胸に迫ってくる。

悲しみを抱えつつ
生活を立て直そうとするアリ氏だけど

数年ごとに綿井氏がアリ氏を訪ねるたびに、
本当にどんどん、イラクの状況が悪くなっていくんだもの!


05年ごろからシーア派とスンニ派の宗教抗争が激化し
町を歩くのも危険な事態になる。

綿井氏もなかなか取材に行けず、
数年後、ようやくアリ氏を探しに行った綿井氏は
またしても一家の悲劇を知ることになる・・・・・・。

「日本にも責任がある」という
義足の少女の言葉が
はっきり突き刺さります。

それにしても
開戦前夜のバクダッドの町の
静かに「取り返しのつかない明日」に向かっていく様子が
いま、なぜ、こんなにも恐ろしく見えるのだろうか。


★10/25(土)からポレポレ東中野ほか全国順次公開。

「イラク チグリスに浮かぶ平和」公式サイト
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トム・アット・ザ・ファーム

2014-10-24 23:34:30 | た行

うーむ、早熟の天才、
ちょっと立ち止まって、息を整えたほうがいいんじゃないかい。


「トム・アット・ザ・ファーム」57点★★★


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カナダ、モントリオールの
広告会社で働くトム(グザヴィエ・ドラン)。

彼は同僚で恋人だったギョームの葬儀に参列すべく
彼の実家である農場に行く。

そこにはギョームの母親(リズ・ロワ)と
威圧的な兄フランシス(ピエール=イヴ・カルディナル)がいた。

ギョームは母親に自分がゲイであることを知らせておらず、
トムはフランシスに命令され、嘘を突き通すことになる。

次第にフランシスは
トムを暴力で懐柔するようになり――?

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「マイ・マザー」「胸騒ぎの恋人」「わたしはロランス」と立て続けに世間を驚かせ、
25歳にしてカンヌ国際映画祭の常連である
グザヴィエ・ドラン監督&主演の4作目の新作。

初の原作(戯曲)ありな作品で、
サスペンやホラー、田舎の閉塞感を盛り込み
暴力に抗いつつも、それに囚われてしまう人間の
心理の不可思議が描かれます。


才能ほとばしる監督であることは疑いもないのですが

うーむ・・・
だんだん物語が置いてきぼりになっている。


天性のセンスで
語りたいことは、確かにほとばしっているんだけど
今回は
「とりあえず、いくでしょ?」的な波とスピードに乗り、
結果として
いわゆる“技巧に走ってしまった”感じ。


中身が伴わないまま、
カット割や音楽で怖がらせテクに走ったりとかねー。

まあ
本人はとっても楽しそうですけどね(笑)。


アメリカ文化への屈折もあるようなんですが
いまいち探りにくく
どうみても
軸となるストーリーの幹が細い。

撮影期間も17日間だったそうですし。

焦らず慌てず、もう少し練って撮るといいのにな。

・・・と言いつつ、
すでに6作目を製作中だそうで。
はい、楽しみにしています(笑)


★10/25(土)から新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開。

「トム・アット・ザ・ファーム」公式サイト
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