「ボヴァリー夫人とパン屋」監督。
この人は、うまい。
「夜明けの祈り」77点★★★★
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1945年、12月。
ポーランドの赤十字で働く
フランス人医師マチルド(ルー・ドゥ・ラージュ)のもとに
深刻な顔をしたシスターが駆け込んでくる。
修道院に苦しんでいる女性がいるので助けてほしいとシスターは言う。
一度は断ったマチルドだが
雪の中で何時間も祈り続ける彼女を放っておけず
夜中に修道院へ向かう。
そこにいたのは、身ごもり、苦しむ若い修道女。
彼女を助けたマチルドは
ほかの修道女たちもまた妊娠している事に気づく。
そしてマチルドは修道院で起こった
恐ろしい出来事を知ることになる――。
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1945年、ポーランドで
修道院を襲ったソ連軍の蛮行によって
集団で身ごもってしまった大勢の修道女たち。
立場上、事を公にもできず
どんどん大きくなるお腹を抱えて苦しんでいた彼女たちを助ける
実在した女医を描いた作品です。
出来事の衝撃を静かに匂わせながらも
直接的な描写はせず
やわらかい光で、つらい物語を包み込む。
そこには厳しい状況のなかでも
生まれてくる命に対する畏敬と、喜びが
確かに写っていて
さらに危険を顧みず行動する
女医の善の清らかさ、崇高さが
凜として美しい。
監督は
「ドライ・クリーニング」(97年)を経て、
「ココ・アヴァン・シャネル」(09年)、
「美しい絵の崩壊」(13年)
そして
「ボヴァリー夫人とパン屋」(14年)とキャリアを積んできた
アンヌ・フォンティーヌ。
この人は女性の自然な美を撮るのが
抜群にうまいんですよね~。
そして
ストーリーテリングも絶妙。
重く、つらいだけの味ではないので
ぜひ見ていただきたいです。
個人的には
試写状に使われていた
このシーンが、ズキュンでした。
それにしても、思うのは
ここでも「女を助けるのは女」だってこと。
そしてソ連軍の蛮行に
「人でなし」とは文字通り
「人」で「なし!」(木皿泉さん風に)なことなのだと
つくづく感じました。
★8/5(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
「夜明けの祈り」公式サイト