関係者全員の良心が映画から立ち昇る!
「モーリタニアン 黒塗りの記録」77点★★★★
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2005年。
人権派弁護士のナンシー(ジョディ・フォスター)のもとに
ある案件が持ち込まれる。
2001年に米同時多発テロの首謀者として
キューバのグアンタナモ米軍基地に連行された
アフリカ・モーリタニア出身の青年モハメドゥ(タハール・ラヒム)の
弁護の案件だった。
拘束されてから4年、モハメドゥは裁判も受けられず
「無実だ!不当な拘禁だ」と訴えながら、過酷な収容生活に耐えていた。
モハメドゥに面会したナンシーは弁護を決意し、
彼に手記を書くように言う。
だが同じ頃、モハメドゥを
死刑第一号にすることを望む米政府は
スチュワート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)に
モハメデゥの裁判を担当させることを決める。
9.11のハイジャックで親しい友人を失った
スチュワート中佐は
裁判の準備を始めるのだが――?!
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2015年に出版され
グアンタナモ収容所の非人道的な所業を世に知らしめた
元死刑囚と弁護士の闘いを
本人の手記をもとに描いた作品です。
ベネディクト・カンバーバッチが
「どうしても映画化したい!」と製作に名乗り出て
かつ、脚本の見事さから「自分も出る!」となったそうで(素敵!笑)
カンバーバッチほか
弁護士役のジョディ・フォスター、
モハメドゥ役のタハール・ラヒム、
弁護士の助手を演じるシャイリーン・ウッドリー、
そして監督は「ラストキング・オブ・スコットランド」(06年)の
ケヴィン・マクドナルドと
全員が社会派&シリアスな内容に共鳴し
「この物語を、世に出さねば!」という強烈な使命感のもとに
集ったことが、よくわかる作品でした。
もうね、画面から漂ってくるの、その静かな熱気が。
しかもここまで主役級が集まりつつ
誰も「出過ぎ」ないのがポイント。
「真実こそがすべての主役」とばかりに
見事なアンサンブルを見せてくれるんですよね。
特に
年齢を重ね重みを増したその表情を
正面から撮らせるジョディ・フォスターがすごい。
毅然とした態度、そして威厳と、美しさが増してると感じます。
そして我らがカンバーバッチ!(笑)
モハメドゥの無実を晴らそうと奔走する弁護士役のジョディ・フォスターは
まず正義と公平の側かな、と思うけど
カンバーバッチ演じる中佐は
米政府側の人間で
9.11のハイジャック機に副操縦士として乗っていた友人を失ったという
個人的な経験もあるわけです。
そんな彼が、どう動くのか?!
それが大いなる見どころでもあり
その複雑な「正義」「公平性」をさすが見事に演じています。
しかしこの映画には
9.11犠牲者への、複雑な配慮も相当にあると思う。
製作がイギリス、監督もイギリス人というのが
それを物語っていると思いますが
でも、どんなに憎いからといって、誰でもいいからやり返せ!が
いいわけない。
拘禁期間は実に14年と2カ月――!
そんな経験をしたモハメドゥが、いま思っていること。
それこそが
とてつもない衝撃であり
この映画に、全員を集めた理由なのだとつくづく思う。
ぜひ、映画でその思いに触れてください。
★10/29(金)からTOHOシネマズほか全国で公開。