ワシはこちらのラブストーリーのほうが
「シェイプ・オブ・ウォーター」よりオトナで、好き。
「しあわせの絵の具」72点★★★★
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1930年ごろ、カナダの小さな町。
絵を描くことが好きなモード(サリー・ホーキンス)は
両親を亡くしてから、冷たい叔母と暮らしていた。
若年性リウマチを患い、
手足に不自由がある彼女は
ちょっと風変わりで、地域でもはみ出し者だ。
ある日、彼女は
家政婦を募集している男エベレット(イーサン・ホーク)の家へ行く。
町外れで一人暮らす彼もまた
地域のはみ出し者だった。
無骨なエベレットに怒鳴られながらも
モードは住み込みで家政婦を始める。
そしてこの出会いが
モードの絵の才能を開花させることになる――。
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この映画、予想以上によかったんです。
日本ではあまり知られていない
カナダの画家モード・ルイス(1903-1970)の物語。
伝記ふうに、その人となりを描くのかなあ、と思ったら
違う。
胸を打つのは
彼女と夫エベレットの物語であることなんです。
二人の関係は
ズキュン!ときめいた!とか、
好いた惚れた!で始まるわけじゃない。
家政婦と雇い主で始まった関係なんですね。
でも次第にお互いに情が湧き、それが愛に変わってゆく。
監督は、優しい視線で
ゆっくり時間をかけて、その軌跡を描くんです。
そこが、たまらなくいい。
モードとエベレットの
二人の歩みを遠景で映すシーンがすごく好き。
モードはいつも足を引きずって歩くんですが
最初のうち、エベレットはそんな彼女に全然かまわない。
でも、その歩みが
いくつもの季節を経て、
次第に相手を思いやる歩みとなり、やがて重なっていく。
――く~!たまりません!
劇中の絵も自分で描いている
サリー・ホーキンスも熱演ですが
無骨な夫を演じるイーサン・ホークが
いままでで一番いい。
「網戸がほしい。ほこりが入るの」というモードに
「網戸なんていらん!ふざけるな!」と言った後に
そっと取り付けてくれたり。
怒鳴ったあとに
「すまん(心のなかで)」という感じで、モードの様子を伺ったり。
なにより、モードが絵を描くことを止めなかった、
その、心の広さ。
それが彼女の才能を開花させることになったんですから。
おなじみ『AERA』で
アシュリング・ウォルシュ監督にお話を伺うことができました。
二人の物語が、予想以上に史実に基づいていることにびっくり。
さらに驚きの事実もありました!
来週3/5発売号に掲載されますので
ぜひ、映画と会わせてご一読くださいませ~。
★3/3(土)から新宿ピカデリー、Bunkamura ル・シネマ、東劇ほか全国で公開。
「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」公式サイト