いま、これを見る意味は大きいす。
「ニッポンの嘘~報道写真家 福島菊次郎90歳~」72点★★★★
カメラ片手に真実を追い求め、
90歳の現在もなお現役な
フリー報道写真家のドキュメンタリーです。
対象のおもしろさもありますが
この作品はまず
ドキュメンタリーとしてよくできている。
冒頭、原発デモを真っ正面から撮る
か細いおじいさん(=菊次郎さん)の姿が
全て語る導入となるんですが、
警官隊にも一歩も引かず
グイグイと、いやスイスイと
撮り進める姿に
「……ただ者じゃない」感ありありで(笑)
「報道は法を犯すこともある。
しかし相手が法を犯している場合はそれは必要だ」と
実に明瞭なしゃべりで語る彼に
グイと引き込まれる。
ヒロシマの被爆者から写真を撮り始めたこと、
学生運動、安保、新宿のフーテン・・・
さまざまな時代を切り取ってきたことが
整然と並べられて、とても見やすい。
なにより、その間に
彼が愛犬ロク(11歳。賢くカワイイ!)と一人暮らしする
その生活ぶりが、丁寧に描かれるのがいいんですわ。
きちんと整理された部屋で、
朝からきちんと朝食を作り
犬と一緒に食べる。
その暮らしぶりから、
彼の性格や規範が、たち現れてくるという。
基本だけど
なかなかこうは描けない巧い見せかただと思います。
年金を拒否し
子供たちからの援助も拒否して暮らす、
その芯の通った生き方に
感銘を受けます。
「なぜ子供たちとも距離を置くのか?」という
疑問は次第にほのかながら分かってきたりして。
けっこう色っぽい90歳でありますからね。
再びカメラを構えた時機や理由は
詳しく語られないけれど、
やはり3.11と原発問題がきっかけなのでしょう。
ラストもすごくよくて、
彼のつぶやく一言の
その真の意味は何だろう?と、考えさせられました。
原発デモなど
市井の声の力がようやく見直され、今後も高まっていくだろう
このタイミングに
彼の生き様は多くの人の心に響くと思います。
ぜひ!
★8/4(土)から銀座シネパトスほかで公開。全国順次公開。
「ニッポンの嘘 ~報道写真家 福島菊次郎90歳~」公式サイト