ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

TSUKIJI WONDERLAND 築地ワンダーランド

2016-09-30 23:38:59 | た行

築地移転問題がまさか、こんな状況になろうとは
試写を見たとき、思いもしませんでした。


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「TSUKIJI WONDERLAND 築地ワンダーランド」74点★★★★


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遠藤尚太郎監督が
築地市場の1年を追った初のドキュメンタリー。


見ながらまずは
「日本人が撮ってくれてよかった!」とつくづく思いました。


英語タイトルで、映像もテンポもセンスいいし
「世界照準」なんだけど
“外国人向け”の日本紹介というわけじゃない。

映画の芯に、日本人の感性がしっかり発揮・発信されていて
ジーン、とくるんです。


そもそも
築地にこんなに長時間、カメラが入ることは
前代未聞だそうで

そこをクリアした監督は
150人以上の築地の人々にインタビューを慣行。

魚を売る仲卸(なかおろし)さんをはじめ、
著名料理評論家や「すきやばし次郎」の小野親子などスゴイ料理人
なんと「noma」のレネ・レゼピ氏まで
「うわお!」と唸る人々が登場し、

魚に人生をかける彼らの仕事ぶりの凄さ、真剣さに
感銘します。

さらに
市場内で子どもたちに食育をするシーンなど
「魚食文化を未来へ」という築地の“中の人”の切実な思いが
実に的確に捉えられている。


「なぜ、築地が特別なのか?」についての
山本益博氏の解説は、実にわかりやすかったなあ。


映画に移転問題についてはほとんど出てこないけど
撮影開始は2014年6月からの1年間で
状況を考えると、それは当然。

逆に
移転関連のニュースが日々溢れる今だからこそ
じゃあ「築地って、どんなところ?」を刻んだこの映画は
とても貴重だと思います。

取材で一緒になったカメラマンに勧めたところ
「泣きました・・・」との感想。
そう、日本人の心意気を感じて、なんか泣けるんですよ(笑)

ちなみに
「通販生活」今週の読み物サイト
監督インタビュー記事、書かせていただいてます。


遠藤監督が、なぜ築地に受け入れられたのか?
この風貌と人柄で納得!かも(笑)
映画と合わせてぜひご覧くださいませ。


★10/1(土)から築地<東劇>で先行上映。10/15(土)から全国で公開。

「TSUKIJI WONDERLAND 築地ワンダーランド」公式サイト
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高慢と偏見とゾンビ

2016-09-29 23:37:37 | か行

ハイ、けっこう笑いました(笑)


「高慢と偏見とゾンビ」69点★★★★


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18世紀末のイギリス。

謎のウィルスが蔓延し
それに感染した人間はゾンビとなり、人々を襲っていた。

田舎に暮らすベネット家の5人姉妹は
ゾンビ退治のためにカンフーを習い、自らの身を守っていた。

そんなある日、
次女エリザベス(リリー・ジェームズ)はパーティーで
高潔で腕利きだが
どうもいけすかない騎士ダーシー(サム・ライリー)と出会い――?!


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ジェイン・オースティンの
「高慢と偏見」をベースに作られたゾンビ話。

原作小説をナタリー・ポートマンがベタ褒めし
まさかのベストセラーとなり
そこから映画化まで発展した・・・ということだそうです。

確かに
単に舞台設定をいただいた、とかでなく
話もかなり「高慢と偏見」なのがおかしい。


まあ映画的には
ドレスの下に剣を隠し、カンフー仕込みのアクションで、
ゾンビをなぎ倒す美少女・・・って発想とビジュアルだけで
かなーりオイシイでしょう(笑)

ゾンビ映画にしては
意外に想像よりグロさは抑えめで

美少女の遠慮ない「ガスッ!」という蹴りとか
アクションの唐突さやザックリさで
笑いにつなげているのがいい。


「シンデレラ」
主演のリリー・ジェームズは
今回もブルードレスが似合ってるし

ラスト「え?終わり?」と思わせて・・・?な展開にも笑いました。

ただ
ダーシー役のサム・ライリー。
ハンサムなんだけど
声のイメージが
こういうコスチュームプレイの“王子”っぽくないんだよね~とか
ちょっとボヤいてみたり(笑)


★9/30(金)からTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国で公開。

「高慢と偏見とゾンビ」公式サイト
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ある天文学者の恋文

2016-09-21 23:06:40 | あ行

「ああ、そういうことか!」と、わかるまで
時間がかかった自分が情けない(笑)


「ある天文学者の恋文」72点★★★★


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大学生のエイミー(オルガ・キュリレンコ)は
天文学者で大学教授のエド(ジェレミー・アイアンズ)は
恋愛関係にある。

妻子のあるエドだったが
エイミーと彼は学問を介し、深い絆で結ばれていた。

その日も授業の直前まで
エドからのメールを受け取っていたエイミー。

だが、授業が始まり
壇上の教授が告げる。

「偉大な教授、エドが亡くなりました――」

――ウソ!さっきまでメールを受け取ってたのに?!

そしてエイミーは
エドが仕掛けた「謎」を解く旅に出ることになる――。



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「鑑定士と顔のない依頼人」(13年)が
ワシ的にスマッシュヒットだった
ジュゼッペ・トルナトーレ監督の新作です。


自分が死んだ後、恋人だった教え子に
メールや郵便物、動画で
用意周到にメッセージを送り続ける天文学者の話。


教授役は安定のジェレミー・アイアンズ。
教え子で恋人役、物語を牽引するのは
「007/慰めの報酬」や「故郷よ」の美女
オルガ・キュリレンコ。

だけど、二人のシーンはほとんどなく

教授は自分撮りの動画でひとり語りをし、
彼女がそれを受け取るというスタイルなので
ほとんど彼ら二人の
“ひとり芝居”状態なんです。


トルナトーレ監督らしいロマンチックさに溢れていて
ちょっとミステリアスなところもそそられるんだけど

でもさ、
これって、残された人間には残酷だよね・・・
ちょっと引っかかりながら見ていたんですよ。

でも、ラスト近くでようやく
「意味」がわかって腑に落ちた。


これはネタバレとは違うと思うので
書いてしまいますが
この映画のキーは“天文学”の視点。


我々が目にする星の瞬きは、ずっと前に光った光。
死んだ星が、死の間際に放った光かもしれない。
このタイムラグがあるから
死んでからも、星は我々の前に生き続けるのだ――ってことなんですよね。

それが、このストーリーを
成り立たせている。

トルナトーレ監督は20年前にこのアイデアを思いついていたそうですが
当時はメールとかスカイプもなかったので
現実的ではなかったそう。

でも「いまの時代ならできる!」と映画にしたそうです。
なるほどなー。


最後の教授の語りには
確かに「これほどまでにか!」と思う愛が納得できました。

それに
エンニオ・モリコーネの音楽が素晴らしい!

これぞ「愛!」ですな。


★9/22(木)からTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。

「ある天文学者の恋文」公式サイト
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ハドソン川の奇跡

2016-09-19 23:49:55 | は行

マジメに作った映画で、そこがすごい。


「ハドソン川の奇跡」69点★★★★


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2009年1月15日。

ニューヨークの上空を飛行中の航空機が
突然、全エンジン停止という最悪のトラブルに見舞われる。

大都会の真上で墜落するわけにはいかない――!

ベテラン機長サリー(トム・ハンクス)と
副機長(アーロン・エッカート)は
瞬時の判断と、選択を迫られる。

そしてサリーが下した決断は
なんとハドソン川への不時着だった――!


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クリント・イーストウッド監督が
2009年に起こった実際の事故を描いた作品。

この事故には
本当にびっくりし、拍手を送ったものです。

そんな、誰もが知ってるニュースであり
映画を凌駕するほど、ドラマ性のある事件をどう描くか。


見ると、いずれにしても
「こうきたか」だと思う。


実に正攻法であり
いや、ある意味、意表を突いているんですよ。

どっちなんや!というところでしょうが(苦笑)
本当にそうなんだもん。


この映画、
映画っぽい演出が極力抑えられ、
起こった事実を、誠実に描いているんですね。

ゆえにシンプルすぎて
「事故の検証映画」という感じもする。

でも、そこには
我々がニュースでは知り得なかった「現実」がある。


155人の命を救った英雄は、
その後
事故の調査をする委員会に何度も呼び出されて
「本当に、あの対応が必要だったのか?」と
しつこーく事情徴収されるんです。

大勢の命を救ったんだから、いいじゃん?
なぜ、いったい何を疑われるっての?

と思うんですが
これが現実だってことですね。

そしてそれに対応する機長の心境も
丁寧に誠実に描かれる。

事故後、実務が出来ず
「家のローンはどうするの?」なんて問題が出てくるあたりも
非常に人間くさいというか、誠実で。


それらから伝わってくるのは
彼があくまでも
自分の仕事にプライドを持つ
ベテランの“いち仕事人”だってこと。


それは着水後、乗客たちの救助にあたった
ほかの人たちも同じで

“奇跡”を起こした人々の
そんな部分を描いたことが、カッコイイ!と思うのです。

映画的にスカーッとするような
起伏は少ないけれど
こういう描き方もあるんだ、と学びました。
96分っていうのにも拍手!


★9/24(土)から全国で公開。

「ハドソン川の奇跡」公式サイト
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レッドタートル ある島の物語

2016-09-16 23:13:07 | ら行

じわじわと、効く。


「レッドタートル ある島の物語」72点★★★★


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嵐のなか
荒れ狂う海に放り出された男。

九死に一生を得た彼は
無人島に打ち上げられる。

材木を集め、いかだを作り
島から出ようとするが

なぜか、いつも海上で
いかだが壊れてしまう。

あるとき男は
その原因らしき存在に出会うのだが――?


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スタジオジブリがフランスと組んで作り上げた
アニメーション。

高畑勲監督が
マイケル・デュドク・ドゥ・イット監督の短編アニメーションに
惚れ込んだことが、ことの発端だそう。


トーンを抑えた色合い、淡さが美しく、
人物の絵もシンプルでいい。

マイケル監督は絵本も手がけているそうで、
確かにヨーロッパの絵本のような
オトナなアニメーションです。


見た後は「??」が頭をよぎるけど
意外とずっと心に残り
じわじわと効くタイプだと思う。

伝わったのは
人間も動物も大きな自然の中で
生きて、やがて死ぬだけの存在だ――ってこと。

決して悪い意味じゃなく、
シンプルな哲学で

物悲しさもあるけれど、
魂を洗ってもらったようなすがすがしさを感じました。


出てくるカニさんたちが、
ジブリっぽくて微笑ましい(笑)

ただこれ、子どもに見せると
「なんで?」「どうして?」と
質問攻めに合いそうだ。

そのあたり、やはり高畑監督の
「かぐや姫の物語」に似てるかもしれません。


★9/17(土)から全国で公開。

「レッドタートル ある島の物語」公式サイト
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