ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

イタリアは呼んでいる

2015-04-30 20:42:31 | あ行

イタリアの美食にワインに、美しい景色!
GWにピッタリですねえ!(やや怒。笑)


「イタリアは呼んでいる」55点★★★


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イギリスのショービズ界で活躍する
スティーヴ・クーガン(本人)とロブ・ブライドン(本人)は
気の置けない友人どおし。

二人にイタリアを巡り、グルメ記事を書くという
オイシイ仕事が舞い込んでくる。

ミニクーパをレンタルし、
美食の旅に出発した二人だったが――?!


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イギリスの人気コメディアンにして
「あなたを抱きしめる日まで」(いい映画!)の脚本も共同執筆した
スティーヴ・クーガンと

同じくイギリスで人気のコメディアン
ロブ・ブライドン。

実生活でも仲がいいという二人が
実名でイタリアを旅する映画。

しかも監督は
マイケル・ウィンターボトム。


男二人のきまま旅は
映画ネタと俳優のモノマネ芸で盛り上がり
美しい景色に贅沢料理に、ワインにホテル……と
最高のシチュエーション。


なんですが
本当にオヤジ二人がしゃべりっぱなし(苦笑)。
このマシンガントークには正直ウンザリ。

ワシ、おしゃべりな男きらいなんだよー(笑)

レストランでも観光地でも
この人たち、
周りの迷惑顧みず大声でガハガハと
しゃべるしゃべる、騒ぐ騒ぐ。

いつ
「お客様、お静かに」と注意されないかと期待したのだけど
残念ながら、最後までやりたい放題でした(笑)

でもね、この映画に出てくる食事は
心底、美味しそう。


いずれも田舎町や港にあるさりげないトラットリアで
その知る人ぞ知る感じがたまらん。

ピエモンテ州の葡萄畑にあるトラットリアの
チーズをその場でかけるトマトソースのパスタ!
(アマトリチャーナ?ボロネーゼ?)

岬近くにあるレストランの海鮮!

トスカーナの街にあるトラットリアのラビオリ!

いつか行くことができたら
絶対に訪れてみたいと思いました。


★5/1(金)からBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。

「イタリアは呼んでいる」公式サイト
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アラヤシキの住人たち

2015-04-28 21:45:01 | あ行

本当は、こういうところで生きたい。

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「アラヤシキの住人たち」74点★★★★


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長野県小谷村。

車も通らない山奥にある
二階建ての大きな古民家、アラヤシキ=新屋敷。

そこでは
若者から60代くらいの人まで20人ほどの男女が
犬や猫、山羊たちと暮らしている。

その共同体の春夏秋冬を
「ナージャの村」「アレクセイと泉」の本橋成一監督が映した
ドキュメンタリーです。

そこは
1974年に設立された「真木共働学舎」で
さまざまな差異を持つ人が
協力して、共同生活を送る場所だそう。


でもこの映画は
そうした詳細はあまり語らず、
そこにいる人々のバックボーンも知らせない。

ただ、美しく厳しい自然のなかでの
彼らの日々の暮らしを静かに追っていく。


毎朝、当番が木の板をたたき、
ごはんの時間を知らせる。

みんな一緒に食事をしながら
「今日は、裏の畑を耕します」とリーダーが言う。

働からざるもの、食うべからずで
全員、作業をするのだけど
みんな年齢も違うし、ハンデも違うし、
作業のペースも全然違う。

でも誰も「サボってる」なんてことは言わない。

できる者が、できる分をやる。


それぞれが、それぞれの役割りを引き受け、
共存しているんですね。

そのなかで
四季が移り、人も入れ替わり
一人の青年が、少しずつ変化していったりする。
新たな命も生まれる。


なんという豊かでまあるい
しあわせなんだろうと

ああ、いいなあ、とつくづく思いました。


創設者・宮嶋眞一郎氏の
「あなたという人は 地球が始まって以来、絶対にいなかったはずです」という言葉が
見ているうちに、どんどん心に染みてきましたよ。


★5/1(金)からポレポレ東中野で公開。ほか全国順次公開。

「アラヤシキの住人たち」公式サイト
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Mommy/マミー

2015-04-23 23:40:42 | ま行

この人、超えてきましたよ、自分自身を。


「Mommy/マミー」82点★★★★


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とある世界にある、カナダという国での出来事。

シングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)は
ピンチに立たされていた。

15歳の息子スティーヴ(アントワン=オリヴィエ・ピロン)を
施設から引き取り、自宅で見なければならなくなったのだ。

スティーヴは知的な少年だが
ADHD(多動性障害)を持ち、
攻撃的になると手が付けられない。

そんな二人の前に、隣人の女性が現れて――?!


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グザヴィエ・ドラン監督の新作。

これは衝撃を受けました。


前作「トム・アット・ザ・ファーム」で
ちょっと走りすぎではと不安になっただけに
この飛躍には、驚いたというか感動した。


自分のテリトリーから、
大きく一歩外に出たという感じ。


「マイ・マザー」と同じ母親と息子という
テーマに回帰しながらも

これまでの自分の分身のようなキャラクターから
また違う“困難”を持った主人公を作り出すことで

自意識や自己探求から踏み出し、
広い視点を得たのだと思います。

でも、その核にある
絶対的な自分は、揺るがない。


母親、隣人の女性などのキャラクター造形、洞察も
深みを増しているし、
ユーモアもたっぷり。


特に今回、特徴的な
1:1比率の正方形の画面の息苦しさといったら!

それは人間の“個”の限界を表現しているんだと思う。

その関係がつながった瞬間の
開放感と高揚がたまりません。

それは悲しいことに一瞬だったりするんだけどね。

いや~
この人、どこまで跳べるんだろうと
心がワサワサしてきますね。

余談ですが
この映画のプレス資料は
ファション誌並みのクオリティで



監督が自身のビジュアルを計算し尽くした
超オシャレな写真がたくさん載ってるんですよ。

映画を観る前は「若干のケッ」がありましたが
観た後は大声で言います。

「うん!好きなように、やっていい!」(笑)


★4/25(土)から全国で公開。

「Mommy/マミー」公式サイト
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パパ、遺伝子組み換えってなあに?

2015-04-22 23:45:33 | は行

すべての話は、あのモンサント社に通じる(笑)


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「パパ、遺伝子組み換えってなあに?」67点★★★★


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アメリカに住む3児のパパ監督が
身近に溢れるGM食品(遺伝子組み換え食品)の危機に気づき
調査するドキュメンタリー。

子を持って、初めて問題意識に目覚めた
パパの視点が素直に出ています。

ノルウェーにある「種の保管施設」のシーンは
「へえ!」と思ったけど

ほかは
モンサント社に、除草剤ラウンドアップの恐ろしさ……と
いままで勉強してきたことのおさらいではあって
ネタとしては特別な新味はない。
(終盤のラット実験の話は
「世界が食べられなくなる日」の教授の話でもあるしね)

それでも
可愛らしい子どもたちを写しながら、
大きな問題に自分の背丈から真剣に向き合おうとするパパの姿は
真摯でいいな、と感じました。

植物の“種”を集めるのが大好きで
「人生の半分は種に捧げている」という5歳の長男の
未来がたくましいね!


★4/25(土)から渋谷アップリンク、名演小劇場ほか全国順次公開。

「パパ、遺伝子組み換えってなあに?」公式サイト
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抱擁

2015-04-21 23:51:04 | は行

人と関わり、よく笑うことこそが
一番の薬だという実証。

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「抱擁」72点★★★★


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200本以上のテレビドキュメンタリーを手がけ、
映画「青の塔」「ネムリユスリカ」などを撮った
坂口香津美監督が

自身の母親のすちえさんを4年間撮ったドキュメンタリー。


すちえさんはパニック障害で
素人目にも、うつ症状があるとわかる。

パニックを起こすと
苦しそうにうめきながら
「息子が私をいじめる!助けて!」とわめいて
電話をかけたり

「死に場所を見つけた」と言って
深夜の公園に行こうとしたり。

どうにも辛く重い題材なんですが、
手早いカット割でリズムよく見せて、飽きさせない。

厳しい現実に向き合いつつも
客観性と、そこはかとなく漂うユーモアが
作品を、そして誰もの問題である老老時代を
救っていると感じました。


中盤、すちえさんは
故郷の種子島に帰り
妹さんのややゴーインな介護を受けることになるんですが

そこでだんだん治癒していく過程が
映画をさらに愉快にしていく。

すちえさんが
「薬より、食べなきゃ!」と妹さんに
無理矢理ケーキを食べさせられて

「美味しい・・・・・・。あ、頭痛が治った」と言い
姉妹が爆笑するシーンには、見ているこちらも大笑い。

よく食べて、人と交わり、よく笑うことこそ薬……が
よくわかります。

とはいえ
「島に帰って、すっかりよくなった!」とは当然いかない。

それでも、パニックの回数が減ったりしていて
完全に良くなっているのは事実で、

さらに製作・配給の方のお話では
いま、すちえさんは
この映画のラストより、さらに元気になっているとのこと。

よかった~と思います。

近い将来、まったくもって他人事ではない問題を
じっくり見せて考えさせていただきました。

だって、うちの母親
すちえさんにかなーりダブるんだよなあ・・・・・・(笑)


★4/25(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「抱擁」公式サイト
コメント (2)
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