ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

2013年映画総まとめ

2013-12-28 20:32:10 | ぽつったー(ぽつおのつぶやき)

2013年もたくさんの映画がありました。

今年の傾向、気になったことなどをつらつらと。

まず、今年は
みんなが知ってるあの監督による「久々にキタ―!」(喜)作品が多かった。

ブライアン・デ・パルマ監督「パッション」
マイケル・ウィンターボトム監督「いとしきエブリディ」
ジャームッシュ監督の「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」
そして
トルナトーレ監督の「鑑定士と顔のない依頼人」









カムバック歓迎。

ニューカマーといえばやっぱり
グザヴィエ・ドラン監督。
「マイ・マザー」「わたしはロランス」が相次いで公開された
恐るべき24歳。次はなにを繰り出してくるであろうか。






大作にがっかりさせられることも多い昨今、
今年は夏の大作映画がハイレベルだったし
「パシフィック・リム」「ワールド・ウォーZ」
「スター・トレック・イントゥ・ダークネス」






トム・クルーズ映画が
どっちもイケてたってのもニュース(笑)
「アウトロー」「オブリビオン」






それから

ままあることだけど
同時期、同テーマというタイミングの不思議な符号も目立った。

例えば
ゴミ問題ドキュメンタリーが続いたり
「トラブゾン狂騒曲」「もったいない!」「TRASHDE -ゴミ地球の代償-」






ホワイトハウスが相次いで攻撃され
「エンド・オブ・ホワイトハウス」「ホワイトハウス・ダウン」





各国で息子が取り違えられ
「そして父になる」「もうひとりの息子」





音楽と中高年世代が関わる作品も。
なんかビジュアルから似ちゃってるというややこしさ(笑)

「カルテット」「アンコール!!」「25年目の弦楽四重奏」







そして
主人公が高齢化、というのは
もう世界各国共通の現象でしょうね。
「クロワッサンで朝食を」「キューティー&ボクサー」
「31年目の夫婦げんか」「燦燦-さんさん-」「愛、アムール」「母の身終い」
「ペコロスの母に会いに行く」・・・・・・書き切れません。














ということで
2013年もありがとうございました。

そして2014年も番長を
どうぞよろしくお願いいたします。
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ハンガー・ゲーム2

2013-12-23 16:01:06 | は行

誰がなんと言おうと
ワシはこのシリーズ好きなんじゃい。

「ハンガー・ゲーム2」73点★★★★

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独裁国家パネムが毎年開催する
<ハンガー・ゲーム>。

12の地区から若い男女二人を選出し
最後の一人になるまで闘わせる残酷な死のゲームだ。

先のゲームで優勝した
少女カットニス(ジェニファー・ローレンス)と
ピーター(ジョシュ・ハッチャーソン)は
各地区をまわる凱旋ツアーを行うことになる。

が、各地でカットニスを
英雄視する動きが広まっていた。

革命を怖れたスノー大統領(ドナルド・サザーランド)は
再びカットニスを
過酷な闘いの場に引きずり出そうと策略し――?!

***************************


しょっぱな、ジェニファー・ローレンスが
静寂の湖畔(だっけかな)で遠い目をしている。

この場面だけで
よーし、キタキタとにんまり(笑)

それほどに彼女の存在感が立つ映画。

はじめは前作から少し間が空いたんで
凱旋ツアーとか「?」だったんですが

カットニスが再びハンガーゲームに
参加させられる展開に最大級ハラハラする。
146分があっという間。
続いてくれるのが嬉しい数少ない映画っす。


設定が“殺し合いゲーム”ということで
いやな感じを持つ人が多いのかもと思うんだけど、

単なるバトルロワイヤルではなく、
圧政や格差社会を誇大化した、アホみたいに理不尽な世界設定にこそ
この話のおもしろさがある。

理不尽だけど、しかし確実に
いまの世の中の鏡ではある世界で

そのなかで
自分の命を賭しても「正しき行い」を貫こうとしたりする
ヒロイズムは

人々にくすぶる不満や反抗心の
かりそめにせよ、有効な解放手段であり、

それによって少しずつ、人々が変わっていったりする様も
神話や古典物語に通じる快感と
酔いをもたらす構図なのだと思う。

まあなにより最高にヒロイックな
主人公に
ジェニファー•ローレンスを当てたのが勝因ですな。

カットニスは民衆を解放するシンボル、
ジャンヌ•ダルクになれるのか?!
そして、
出たなフィリップ•シーモア•ホフマン、怪しいぞ!(笑)

前作をめちゃくちゃ引きずっているまっとうな「続編」なので
前作、見ておくことをオススメします。
そして、さらにまだまだ続きます!(笑)

★12/27(金)から全国で公開。

「ハンガー・ゲーム2」公式サイト
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フォンターナ広場 イタリアの陰謀

2013-12-21 19:11:44 | は行

すっごくマニアックな映画と思ってたけど
前売り、売れてるらしいすよ☆


「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」62点★★★


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1969年、ミラノ。

労働者たちのデモ隊が警察と衝突し
若い警官が命を落とす。

カラブレージ警視(ヴァレリオ・マスタンドレア)は
デモに関わるアナキストたちのリーダー、ピネッリ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)に近づき、
情報を得ようとする。

が、12月12日。

フォンターナ広場にある銀行で
大規模な爆発事件が起こり――?!

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「輝ける青春」のジョルダーナ監督の最新作。

1969年、イタリアで実際に起こった
死者17人、負傷者88人という
大規模惨事となった銀行爆破事件を描いたもの。

事件を知らなかったので
予備知識なし、サスペンスのように見ました。

あまり凝った作りではなく、
とつとつと無骨に語られる感じ。

なので
前半はかなり睡魔との戦いでしたが
取り調べ中のある人物が自殺?――という中盤から話が動き出し、

その後の犯人探しには
ミステリーの楽しさがありました。


この事件、一時はアナキストの犯行とされたものの
「実は――?!」となってゆき、
実際、いまも犯人不在のまま終結しているそう。

そこのところが興味深く、
恐ろしい反面、
スッキリ解決!ではないのがどうにも辛い(苦笑)


完全なる正義のヒーローがいないのも
リアルな反面、
映画としては面白みを欠いてしまうんですよねえ。

すごく誠実に作られていると思うし
そういうたぐいの作品ではないと
わかっているんですけどねえ。


1969年当時
「我々はまだ民主主義の経験が浅い(慣れていない)」と話す外相に
イタリアの現代史を思い、なるほど、と思いました。

まあワシの浅いイタリア現代史は
すべて映画で学んだことなんだけど(笑)

詳しい背景を知っていたほうが
お得なタイプの作品だと思います。

★12/21(土)からシネマート新宿ほか全国順次公開。

「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」公式サイト
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ファイア by ルブタン

2013-12-20 21:48:53 | は行

「好きこそ物の上手なれ」っつうのは
まことですなあ(笑)


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「ファイア by ルブタン」3D版 65点★★★☆


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カリスマ靴デザイナーのクリスチャン・ルブタンが
パリの「クレイジーホース」のダンサーたちに靴をデザインし、
ショーを演出。

しかも音楽担当は
デイヴィッド・リンチ。

そんな魅惑のショーを映像化したのが
本作です。

ダンサーたちの舞台は
フレデリック・ワイズマン監督の映画「クレイジーホース・パリ」で体験済みですが、

この映画は3Dなのがちょっとおもしろい。

途中はさまれるルブタンの「足フェチ」語りもポイント。

とにかく
靴と足を魅せることに寄った演出で
ほんっとに、足、好きなんすねえ、という(笑)

もちろん踊り子もダンスも素晴らしいんだけど、
官能的というより、
とにかくひたすらに“造形美”という感じで
あまり足フェチの気のないワシには少々退屈だった。

ただデイヴィッド・リンチによる音楽は素晴らしく、
倒錯の世界観にピッタリマッチしておりました。

★12/21(土)から全国で公開。

「ファイア by ルブタン」公式サイト
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キューティー&ボクサー

2013-12-18 23:33:42 | か行

上がいまの宣伝ビジュアル。

下が、最初の宣伝ビジュアル。


下の、ちょっと取っつきにくい印象ないですか?

中身はおもしろいんで
宣伝で、中身の印象が
かなり変わるという、わかりやすい例かもね。



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「キューティー&ボクサー」73点★★★★


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ニューヨーク在住、現在81歳のアーティスト
「ギュウチャン」こと篠原有司男氏と
21歳年下の妻・乃り子氏を

84年生まれの若いアメリカ人監督が追ったドキュメンタリー。


篠原氏は1960年代の日本で現代美術家としてメジャーになり、
けっこう日本では知られた存在だそう。
すみません、ワシまたしても不肖でよく存知あげませんでしたが

篠原氏は69年に渡米し、
しかし向こうではもうひとつメジャーにはなってない。

ダウンタウンの古いアパートで、
家賃の心配をしながら暮らし
でも、いまでもガッツ満点で創作活動を続けている。


そんながんばるアーティストのドキュメンタリーかと思いきや、

この映画のおもしろいのは
メインが妻、というところ。


もともとアーティストだった乃り子さんは
しかしギュウチャンと出会い、子を育て、
自分の創作は休止せざるを得なかった。


映画には
「凡人が天才を支えなきゃね」と
昔からやりたい放題やってきた“芸術家”の夫に長年耐えてきた妻が、
その内部にムクムクと不満を膨らませ
それを作品に昇華する過程が描かれるんですね。


監督も最初は、主にギュウチャンを狙って
撮影を始めたと思うんですが

どんどん二人の関係と、
なにより乃り子さんがおもしろくなり
成り行きでこうなっていった感じがあって、それが大成功。

奥さんが日々の暮らしのなかで
チクチクと夫に辛辣な言葉を投げ
それを黙って受けている夫=ギュウチャンの顔といったら(笑)

どこの夫婦でも、おんなじよーなものだ、と
そのおかしみと共感に、
クスクス笑うのが楽しいったらありません。

そしてなんのかんのいっても
結局はパートナーのありがたみってあるよなあ、とか

その関係と歴史が
彼らの創作の源、いや糧になってるのか、と
思わせるところが、なんかハッピーでいい。

あ、12/13(金)から
パルコミュージアムで二人の個展が開催されてるので
必見すね。ワシも行こう。

あと、思うに

最近、孫世代の若い監督が
祖父&祖母世代の暮らしや生き方に親和性を持ち、それを作品にするケースが多いなあと。
時代の輪廻なのかなあと、興味深いですねえ。

★12/21(土)からシネマライズほか全国で公開。

「キューティー&ボクサー」公式サイト

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