自然にも人間にも
全方位緊張が絶えないサスペンス!
「ウインド・リバー」76点★★★★
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アメリカ中西部、ワイオミング州にある
ネイティブアメリカンの保留地「ウィンド・リバー」。
厳しい自然が牙をむくその土地で
白人男性コリー(ジェレミー・レナー)は
野生生物局のハンターとして働いている。
ある日、彼は雪原で
ネイティブアメリカンの少女の死体を発見する。
少女はマイナス30度にもなる夜中に
裸足で雪原を走り、血を吐いて死んだ。
通報を受けてやってきた
FBIの新米女性捜査官のジェーン(エリザベス・オルセン)は
地元に詳しいコリーの助けを借りて捜査を開始する。
だが、ジェーンはまだ
この土地の恐ろしさを知らなかった――。
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冒頭、極寒の雪原を必死に走る少女。
そして続いて
羊の群れを狙うオオカミが映される。
冷え切った空気のなかで、不穏の予感が張り詰める。
寒々しく過酷な環境にある「保留地」で起こる事件は
自然にも人間にも、全方位緊張が絶えない。
「ボーダーライン」(15年)の脚本家で
本作が監督デビュー作であるテイラー・シュリダンは
今回も少女が殺される、ひとつの事件だけでなく、
社会派の視点を持って大きな問題を投げかけてくる。
それは
先住民をかつてこの荒涼とした土地に追いやった
アメリカという国の「罪」。
国家も国民も目をつぶり、そらし続けている問題に焦点をあて
かつエンタテイメントとして極上なハラハラを提供する、その手腕。
深く、うまいと思います。
ネイティブ・アメリカンの保留地については
「フローズン・リバー」(09年)にもキーンと冷え冷えと描かれていたけれど
本当に暗い淵なのだ・・・とあらためて。
それに主演二人がベストキャスティング!
経験値は低くも、正義感に溢れるエリザベス・オルセン。
経験と苦しみも深く、苦渋なジェレミー・レナー。
シリーズ化してもいいんでないかというほど
この二人、ものすごい科学反応を起こしてる。
そして、この話は、実際の事件というか
状況に基づいているんですね。
実際、先住民の女性が行方不明になる事件は多く、
しかも、その数はしっかり数えられていないという。
映画ができることを探る
監督の想いが、これまた全方位伝わってきました。
★7/27(金)から角川シネマ有楽町ほか全国で公開。