今日の料理(こだわりがないのがこだわり)

フードリテラシーに沿いつつも、なるべく夢のある料理や飲食をジャンル・国境・時代・時間をボーダレスに越えて書いています。

秋刀魚の歌

2014年10月22日 | 今日の料理
すだちが大量に手に入った(貰った)ので、秋の味覚秋刀魚と食してみた。

ちょっとおおぶりだったので甘めだったすだち。
何もかけなくても、塩焼きだけで、秋の秋刀魚は美味いなあ!!


完食
アタマもいこうと思えばいけたんだが、流石にな。
(骨も揚げて骨センベイに?)

「魚をきれいに食べる女性は素晴らしい」という言葉があると素敵な女性が秋刀魚を食べながら「そう父に教わって育ってきた」と聞いた事がある。

さんま、さんま、さんま苦いか、塩つぱいか
「秋刀魚の歌」の一節・by佐藤春夫

佐藤春夫と谷崎潤一郎の妻千代(その後正式に離婚し佐藤と共になる)とその娘と3人で食事をしている時のおかずが秋刀魚だった時の切ない詩でした。

クラプトンのLaylaみたいなものか?と最初思ったが、谷崎一郎が恋多き男で、佐藤は悲しむ千代に同情してそれが恋心に変ったのですね。
(佐藤春夫と谷崎一郎は絶交してしまう。)


「秋刀魚の歌」

あはれ
秋風よ
情(こころ)あらば伝へてよ
―男ありて
今日の夕餉(ゆうげ)に
ひとりさんまを食らいて
思ひにふけると。

さんま、さんま
そが上に青き蜜柑の酸(す)をしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
そのならひをあやしみてなつかしみて女は
いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児(こ)は
小さき箸(はし)をあやつりなやみつつ
父ならぬ男にさんまの腸(はら)をくれむと言ふにあらずや。

あはれ
秋風よ
汝(なれ)こそは見つらめ
世のつねならぬかの団欒(まどゐ)を。
いかに
秋風よ
いとせめて
証(あかし)せよ かの一ときの団欒ゆめに非(あら)ずと。

あはれ
秋風よ
情あらば伝へてよ、
夫を失はざりし妻と
父を失はざりし幼児(おさなご)とに伝へてよ
―男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
涙をながす と。

さんま、さんま
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは 問はまほしくをかし。
コメント
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