エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

薔薇の雨

2013年05月06日 | ポエム
薔薇と云う花は、育てるのに手間暇がかかるのだという。
薔薇館の女主人がそう嘆いた。



虫が付きやすいのだそうだ。
加えて、蔓が伸びてあらぬ方向に出かけていく。
厄介な花だ。



けれど、咲くとこれまた見目麗しい。
芳香を辺りに放ちつつ、周囲の花々を睥睨する。
確かにそれだけの価値はある。



同時に薔薇ほど、人の深奥に偲びこんでくる花もない。
妖しげだし、愛でるのも悩ましい。



色、香り、その姿・・・。
どれを執っても、一流品である。







「薔薇の雨滴はじける女一人」







薔薇の香水は、朝一番に花を摘み、やおら水の中に香りのエキスを移し採るのだと云う。
薔薇の香りの息が、淑女の嗜みであるとは言ったものである。

薔薇が濡れている様は、より一層悩ましげに思えるのはぼくだけだろうか?




        荒 野人