エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

乗鞍紀行・・・栗鼠の神話

2013年05月21日 | ポエム
栗鼠は、冬眠をしない。
秋になると食料をせっせせっせと貯め込んで冬に備える。

これを貯食という。
従って、食料はたっぷり供え、身にはふさふさとした毛を纏う。
冬対策は万全なのである。



栗鼠は、賢くも愛おしき小動物である。

俳句結社「からまつ」の由利主宰の山荘周辺には自然が豊かに残されている。
雪解けのころ、主宰は蕗の薹などの山菜を摘まれて春の香りを満喫されるようである。

そんな中で、由利雪二の語る「栗鼠の神話」が産まれるのである。







「雪解けの木の実に栗鼠の齧り跡」







由利雪二・・・からまつ主宰であって、我が師である。
語り出す。
何故、胡桃がこうなっているのかの由来である。



「栗鼠が二匹いたと想いたまえ。その栗鼠は年頃の男と女である。真中に胡桃を一つ置いて両サイドから齧っていく。上手に齧り終え、胡桃を食べきればその二匹の栗鼠の恋は成就するのである。けれども、この胡桃を見て御覧。両サイドの齧り口は繋がっていないね。だからきっと、この恋はならなかったんだ。こうした寂しい未完成の恋の躯は、この辺りにはゴロゴロしている。未完の恋だから、来年もまた胡桃を蓄え、こうして二匹で食べるんだ。」
「乗鞍の悲恋神話は、未来永劫繰り返されるんだとさ!」



この未完成の恋の胡桃。
なんだか愛おしいね。
愛おしさが、ますます募っていく。

小さな小さな生き物の神話が生まれる瞬間である。




             荒 野人