エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

みやこわすれ

2013年05月23日 | ポエム
みやこわすれ、なんという悲しく、そして美しい響きを持つ言葉だろう。
人によって受けとめ方は、郷愁であったり、はかない慕情であったり・・・人夫々だろう。



ぼくは成就しない愛を思って、少しばかりしんみりとしている。
ここのところ、思いがけず「はしり梅雨」に降り籠められたりしたせいだろうか。



晩春であって、初夏である。
季節の鬩ぎ合いが続く。
けれども、春の肌寒さはもうないだろう。

夏が寄り切りで決着をつけんとしているのである。
新緑は、緑陰となってやがて万緑となる。

季節は変われども、ぼくの心の傷は消えない。







「みやこわすれ咲けば必ず菓子一つ」







みやこわすれ。
花言葉は「しばしの憩い」「別れ」「短い恋」「また合う日まで」である。

鎌倉時代に承久の乱で北条氏に敗れ、佐渡へと流罪になった順徳天皇が、ある日、庭の片隅に咲いている小さな白い可憐な花を見つけ「この花を見ていると、少しの間でも都を忘れることができる」と言ったことからこの名で呼ばれるようになったといわれている。

江戸時代から茶花などとして栽培されてきたのである。
ぼくはこの花を見ていると、いつでもきみを脳裏に浮かべる事が出来る

そう淡い初恋のように。



初恋 鮫島有美子




今日は、石川啄木の歌にメロディーを付けた日本歌曲をお聞きいただきたい。
ぼくの時々口ずさむ歌である。

  砂山の砂に腹這ひ
   初恋の
    いたみを遠くおもひ出づる日

歌集「一握の砂」にある。



初恋とは、なんどでも繰り返し感傷に浸るのだろうか。
ぼくは、過ぎた恋を忘れる事は無い。
しかし、ペーソスに浸ることはない。



今、恋の季節である。



       荒 野人