エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

「交響曲第1番」佐村河内 守を聴く

2013年05月30日 | ポエム
佐村河内 守は、障害と闘っている。
彼は、音を聴き取る事が出来ない。



だがしかし、このシンフォニー1番は、壮大な曲想であって緻密な音の重なりで荘重にして繊細な音楽を紡ぎ出している。
現在のベートーヴエンと称される所以である。



「交響曲第1番」より 第3楽章 佐村河内 守作曲




  佐村河内の一番を聴く
「カリヨンの織りなす生命梅雨に入る」



梅雨入りの昨日、ぼくは改めてこの1番を聴いた。
滂沱として涙が止まる事が無かった。

3.11以降、この曲は震災地における鎮魂の交響曲となっている。
佐村河内 守は、震災地を歩きレクイエムも発表している。
聴こえないけれど、聞こえている。
彼の耳の中で、ゴーゴッーと轟く耳鳴りは彼を苦しめ、一層の懊悩を彼に与える。

けれど、彼は音を紡ぐ事を止めない。
寝る事も出来ない苦痛の中で、佐村河内 守は五線紙に向き合っている。
絶対音感で、音を紡ぎ出している

この交響曲の初演の棒を振ったマエストロ・大友 直人は「細部の一音一音にまで魂のこもった音が書き込まれている。」「作曲家の、深い「祈り」と「希望」の音楽とも言えるでしょう。」と書いている。



「シャコンヌ」と題したCDもリリースしている。
シャコンヌとは、3拍子の舞曲の一種である。
バロック時代にはオスティナート・バスによる変奏曲の形式として盛んに用いられたのである。

かつて交響曲の歴史的役割は終わったといわれた。
オペラも同様であった。

だが、いま改めて交響曲のブームとなっている。
著名な作曲家は競って交響曲を書いている。

ハンデを負って曲を生み出し続ける佐村河内 守は、崇高でさえあるではないか。
魂の作曲家なのである。



CDは一枚、2,980円。
価値ある一枚である。
大友直人 指揮  東京交響楽団 である。

作家、五木寛之は、こう言っている。
「佐村河内さんの交響曲第一番<HIROSHIMA>は、戦後の最高の鎮魂曲であり、未来への予感をはらんだ交響曲である。これは日本の音楽界が世界に発信する魂の交響曲なのだ。」

季節は梅雨。
雨に降り籠められたら、このCDを静かに聴いて欲しい。

あなたの人生のステージが一段上がること、請け負える一枚である。



       荒 野人