ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

突然の春の陽気に誘われて山へ踏み込んでみる

2024年02月24日 | SR400 RH16J(2019)シータ


このところの暖かさに驚いたのは雲雀たち

どいつもこいつも慌てふためき

我先にと競いあっては花粉交じりの空へ昇っていく

おかげで長閑な冬枯れの田畑には

そこいら中でけたたましい囀りが響き渡ることになる

それはもう大騒ぎ



そういう人間様の方だって

予想外のこんな陽気

何とはなしにホッとした気持ちにもなるもんだ

雲雀たちも人間も同じ国に暮らす朋輩ということか

私事で云えば

この冬に新しいオートバイを手に入れたりしたもんだから

いつもの冬よりマシマシで

春を心待ちにしている

だからこんな陽気ならもう山へ行っても良いかも

と、途端にそわそわざわつき始める今日この頃だ



走り出してみると

まだまだ路面には乾ききらずにウェットパッチが残る

それでも気温はこの時期としては異様に高く

フリース素材のスウェットに綿のスイングトップを羽織っただけだ

首元を抜けていく風さえも心地よく感じる程だった

チェーンクリーナーを買いに寄った近くの用品屋

駐車場から空を見上げるともう青空だった

--――これなら山へ行ける(ウヒヒッ)

すっかり慣れたキックスタート一発

でもこれ本当にいい

「さぁ、行くぞィ!」とSRにも自分にも気持ちが入る



中央総合公園の丘陵を越えて

下山(しもやま)の方へ踏み込んでみた

両側に樹々が生い茂る細い県道には

このところ続いた風雨のせいで

枯れた枝が降り積もっていた

陽があたらぬ場所も多くて少し気を使うが

それでも山の道は久しぶりで楽しい



ワインディングではまだSRのステアを掴みきれていなくて

INに寄りすぎたり

コーナー出口で帳尻が合わなかったりはある

でもフロントの空気圧をデフォルトの1.75barにあわせてみたら

少し従順になったかな

体重がある方なのでリアのイニシャルをかけてみたのも良かったか

いや、こいつはかけない方が良いような気もする

やはり向き変えの指示を出してからINへ向かう感じがすごい

少し上体をかぶせて(肘をまげて)

アタマをステアリングヘッドのやや内に置いたまま

いつもよりコーナーの外側を少し長めにトレースしながら進入して

向き変えポイントでスッと抜いてやるだけで

SRが鋭く内向し始めるのがわかる

あまりエンジンを引っ張らずに小刻みにシフトアップして

トラクションをかけ続ける方が良いというコメントを聞くけど

5000rpm以上の振動やパワー感も悪くない

あの音と振動はエキサイティングだ



でも細かくシフト操作しながら

少し高いステアリングヘッドを右へ左へとやっていると

オフ車に乗ってるような楽しさが蘇る

知ってのとおりSRはXTベースなので

股間をタンク後端に乗せて

上体を立て、肘を張ると林道へも行けそうな匂いがする

もともとロングストロークのエンジンって好きじゃない

高回転高出力で育ったもんだから

ここが気持ち良くないと好きになれない

XLR250が楽しかったのはそれかな

たまに代車で貸してもらったブロンコも愛せそうな予感がしたし

キックスタートだって250レプリカやオフ車は当たり前だった

あれだな

家系の演出されたラーメンより

50年続いてる町中華のラーメンが旨い

これに似てる



SRを引き取って家へ向かいながら

ちょっと心配してたのは

もうクロ介(BMW R100)に乗らなくなっちゃうかなってことだった

R100の自分的なマイナスポイントは

停まっている時の取り回しの悪さだ

あとハンドルの切れ角が小さくてUターンに少し気をつかう事

まあこの2点だ

入ってはいけない所に入った時の対応がとても厳しい

何度かいっそ倒してシリンダーヘッド軸にして回そうかと思うくらい

ニッチモサッチモになることがあるのだ

少なくともSRにはそれは絶対ないのだろう

でも実を云えば

クロ介に乗らなくなるかもなんて不安は一瞬で払拭された

クロ介で走り出した瞬間

五感からどばーっとドーパミンが出るのを感じた

好きなんだから当たり前だけど

BMWフラットツインはモノが違うのだよ

良いか悪いか

上か下か

高級か低級か

そんな話ではない

SRとR100は「モノが違う」



SRは間違いなくスポーティーだ

24PSしかないけど

鋼管のフレームとスイングアームだけど

スポーツの魂がある

レーシーではなくスポーティー

誰よりも早く走り切るのではなく

オートバイを工夫して走らせるおもしろさ

それはワインディングだけでなく

シティロードでもカントリーロードでも可能だ

絶対速度に縛られずに走る楽しさを感じられる

これこそがSRの個性であり魅力だ

フラットツインの独自性や趣味性をもってしても

SRは不思議な魅力でライダーの心に忍び込む

そしてそのまましっかりとそこに根付いてしまうようだ



ここまでの長い長い時間は真の理解のための必然だった SRラプソディ その3

2024年02月10日 | SR400 RH16J(2019)シータ


このごろのその日暮らしは

あー、と思いついては

おもむろに(気になる箇所を)覗いてみる

そして、あーやっぱりか

と(不具合箇所の)手直しにかかるか

あるいはピカピカパーツたちを磨きにかかる

そんな感じだ



別に愚痴りたいんじゃなくて

激しい落胆の拠り所が欲しいから書かせてもらうのだけど(いや本当に)



誰にだって単なる見落としや見当違いならあるだろう

でもそれを生業とする者ならばどうだ

中古車販売において販売店の責任は大きいはずだ

昨日免許を取ったばかりの20歳の女の子だってお客さんになりうるのだ

重要度の高いブレーキ周りのチェックを忘れるなんてことがあるのだろうか?



実は今回購入した中古のSR

ブレーキパッドが摩耗限界を超えていた

でも

それに気付いたのは別の不具合からだった



しばらく走った後

再始動しようとするとエンジンの始動に手間取るのだ

フューエルインジェクションなので始動は容易い現行のSR

それはちょっと予想外で

そのたびに空キックを数回かましてやる必要があるのだ(ガス抜き)



プラグでも見てみるか、とプラグキャップに手を掛けたらグラリと動いた

その時は、SRの振動って強烈なんだな

こわいな、とちょっと笑ってしまったボクだった

そのまま外しにかかる

ごそごそと覗き込んでいると

今度はプラグの右斜め上に何かのケーブルがぶら下がっているのを見つけた



それはプーリーから脱落した戻し側のスロットルケーブルだった

「いやーんSRったら…こわいー」

じゃねェーんだよ

いくら振動激しくてもプーリーからケーブル外れるか?

じゃあこのプラグの緩みも怪しいな



ふいにその時ちょっと気になっていたことが脳裏に蘇った

納車の時にフロントブレーキのキャリパーがダストまみれだったことが

気になったのだ、見てないのか?と

スライドピンを抜くだけでキャリパーは外せるので

取ってみたらば「ビンゴ!」

じゃねェーんだよ

ピストン側のパッドはインジケーターの溝がほぼゼロ

ピストンもキャリパーもダストまみれ



メルカリで買ったんだっけ?

だまされちゃったー

こわい、自己責任だもん、自分がしっかりしないとね

ウソ

オートバイ屋さんで買いました



もともと嫌いじゃないから自分でせっせと手直しするんだけど

正直もうあの店にはいかないと思う

いつものテックさんに「申し訳ないけど……」と

他店購入車のメンテをお願いしてみたら

快く引き受けていただけたのがせめてもの救いか



でもSRってメンテがしやすい

キャリパーもシングルだし

タペットもIN OUT一組

部品はみんな剥き出しだし

インジェクションなので燃料ポンプが面倒かな

タンク外すのにパイプやケーブルまであるから

昨日はエアエレメントにタンポポの綿毛が残ってるの発見

いつ吸い込んだヤツやねん



なんやかんやでひと通り触ってやって

おかげでSRとの親密度はいっきに深まった

それはそれでよかったけどさ

タイヤにヒビがあるな、とか

ブレーキオイルちょっと汚いな、とか

取説もおまけ工具もないんだ、とかね

そんなのはいいんだよ

ただね

信頼関係を築く前にその気も無くなることがなんだか切ないのよ



本当はね

どうでも良いからもっとSRで走りに行きたいよ

本当にヤバいくらいかわいいやつだ

すべてが予想以上でうれしい

こんなにボクに響くオートバイなら

もっと早く出会いたかったと少し後悔している

けれど

出会うタイミングには本当に微妙な機微があり

20代や30代でSRに乗っていたら

こんなにも心惹かれなかったかもしれないとも思う

改めて数えてみたら

このSRで32台目のオートバイだった(我ながらちょっと引く数字だ)

本当にありとあらゆる種類のオートバイの果てに

SRを手に入れたことは

やはり必然だったのかもしれない

本当にこれが生涯最後のオートバイになるんだと思うけど

ボクが免許を取ったとき(1980年)にはもう販売されていたオートバイに

40年も経って最終的に出会うなんて

まるでチルチルとミチルになった気分だ

SRとボクのキャリアには不思議な縁があるのかもしれない



SRラプソディ その後の顛末 やっぱりね

2024年01月29日 | SR400 RH16J(2019)シータ


いろんな理由を考えつくもんだ

オートバイを買うためならね

モーターショーの会場で目が合った、とか

オートバイ屋の店先で「一緒に帰ろう」と云われた、とか

まあまあ大概は下らない言い訳にすぎない

もちろんそれは本人が一番理解している訳だが

けれど、何かしらの理由がそこに在ってくれれば

オートバイを買うという贅沢で無用な

それが故に付きまとう購入への後ろめたさへの

せめてもの救いになるような気がするのだ



一度はもう大きいオートバイは止めよう、などと思った時期があったのに

自分の人生の中で、オートバイが占めてきたモノの大きさに気付き

遠回りしながらも結局ボクサーツインのBMWを手に入れてしまったのだ

それはこっそり乗り始めたエストレヤへの不満から始まったのだが

もともとはR100RSやW800を処分して

年寄りはクルマだよ、とばかりに当時気に入っていたクルマを買い

どうしようもない未練から手元にはカブだけは残していた

カブを走らせるのはもちろん楽しいんだけど

とっても良く回るエンジンなので

どうしてもギャンギャン回転を上げて走らせることが多かった

それなりによく走ってはくれるんだけど

カブってそういうオートバイじゃないよね

だったら250くらいの大人しいやつならいいか、ってことになって

それでエストレヤを買った

ずいぶん前だけど木曽の山の中でエストレヤの排気音を聞いて

痺れた経験があったからだ

でも非力すぎた

最大トルク1.8kg-m

充分走るけどトラクションが足りない

使える回転域も高くて単気筒らしさは出せず

車体もとても足らない

やっぱり(最大トルク)「3」くらいはいるよなー

と漠然と感じたのを覚えている

そもそもあの性格ではのんびり走っても楽しくもなんともないし

ボク自身ものんびり走りたい訳ではない(そもそも結構飛ばす方が好きだし)

スピードをコントロールしてコーナーへ向けてリーンし

エンジンのトルクを利用してトラクションを活かしながらコーナリングしたい

誰かより速く走りたい訳ではないし

レーシングスピードでの限界性能を楽しみたい訳でもない(公道だしね)

オートバイと会話しながらオートバイを自由に操りたいだけなのだ

つまり楽しく気持ちよくスポーツ走行したいのだ



もう一度ボクサーツインを、と探し始めた時

実はツインショックの(R100)RSを考えていた

かつてモノサスから二本サスへ乗り換えた時に

そのフィーリングの違いを目の当たりにし

中速から上の力強さに惹かれていた

それと、モノサスボクサーは

将来を見据え開発されたKバイク(水冷直4)のリリースで

BMWバイクのメインストリームを外れ消え行く運命だった

けれど市場のニーズの多さに動かされたメーカーは

パフォーマンスの追及はKシリーズに任せ

ボクサーは気軽に扱えるツーリングバイクへとシフトし存続が決まった

キャブレターを絞ってパワーダウンさせたエンジン

「日常域で使いやすくなった」と

でもこれ、すごく傷つく言葉じゃない?

下手クソのためにパワー絞って使いやすくしてあげましたって聞こえる

けれどたまたまモノサスボクサーとの出会いがあり

結局それを手に入れた

実際にそれはすごく乗りやすかった

レイダウンしてストロークが伸びたリヤサスと相まって

本当に完成された性能を感じたし

何よりボクの感性がこれを認めるほど成長していたことが大きかったと思う



話を変えてTZR250

ヤマハについて書いておきたい

20代のボクの興味は

カワサキの空冷4気筒400ccを乗り継いできた後

先鋭化する2ストレプリカに移っていた

世界GPでフレディがダブルタイトルを獲るなど

ホンダも2ストに本気を見せていたが

ボク的には2ストといえばRZで

特に750キラーの異名を持つRZ350に惹かれていた



だからTZRが出た時すごく惹かれたんだけど

半面そのマジメ感あふれる外観にちょっとがっかりもしていた

フロントも16インチではないし

アンチノーズダイプフォークでもない

フロントディスクはなんとシングル(でもフローティングだけどね)

シートもしっかりアンコが入っていてひどく普通なのだ

でも結局TZRを買った

それはマイナーチェンジの時に設定された

美しいソノートヤマハのジタンブル―の外装にメロメロだったからだ



実際に走り出すとTZRは怖ろしく普通でありながら

ワインディングへ行くと本当に速かった

そしてすぐにTZRがボクの指示を待っていることに気付いた

指示をすればTZRは期待以上にそれに応えてくれるのだ

走ることが楽しいと初めて感じた

でも実際は指示待ちしてるわけではなく

入力に対する反応が人の感覚に近いというカラクリなのだ

もちろんワインディングだけでなくて

ロングツーリングもすごく得意な「レプリカ」で

ハンドリングのヤマハとすでに云われていたが

キャリアの浅いライダーにもそれはすぐに理解できるものだった

操る人間の感性に寄りそうバランス

それはヤマハのスポーツバイクに込めた魂だった



けれどバイクブームに後押しされた市場は

オートバイの本質を離れますますその性能(スペック)は先鋭化していった

ホンダの88NSRは刺激的だった

当時の大型オートバイとなら発進加速で負けないし

公道の狭いワインディングでは無敵だった

ゼロ発進でフル加速するとフロントを軽々と持ち上げ

加速Gでは身体中の血が引いていく感触がするほどだった

そのあともボクは馬力の虜になったまま歳を重ね

ZX12Rにまで行きついた

今思えば何たる無知と嘆きたくもなるが

本当はボクはもう気付いていた

TZRがボクの求めるオートバイだったのだ



軽くてコンパクトな車体

強い骨格にコントローラブルなエンジンとブレーキ

YPVSの生み出す豊かなトルクを操って立ち上がる気持ち良さ

あれがボクの理想のオートバイの姿だった

のんびりトコトコではなく

グリグリっとトラクションを感じて走りたい



次はSR400だ

SR400は燃調用ECUを搭載しながら

厳しくなる一方の排ガス騒音規制に対応していた

しかもエンジン本体や車体デザインを変えずに

SRがSRのままであり続ける開発を続けていた

正直いえばSRって興味の中心にはないオートバイだった

けれどSRの広告や記事はこの40年間途切れることなく

当たり前のように「ふーん」と眺めていた

そして2021年

翌年からのABS搭載義務にまるで反旗を翻すように

あっさりと市場から消えてしまった

ファイナルモデルは4263台も販売

「え?新車買えなくなるの?」

そう感じた人がいかに多かったかということだろう

そういうボクもその中のひとりだ

いつでもその気になれば(買える)、はもう通じない



去年の夏にSRに寄せる思いを記事にした

「SRラプソディ 忘れられぬ恋はかなわぬ恋というけれど」

あれから事あるごとにSRについて調べていた

それは、なぜヤマハがSRにこだわってきたのか、がとても気になったからだ

その中でいちばん気になったのが実は最終モデルの開発の話だった

最終のRH16Jは排ガス規制対応のためECUを大型化

それはMTシリーズと同じタイプのECUなのだ

インジェクション化のためにSRはフレームや外装にまで変更が加えられているが

それはすべてSRをSRとして残していくためだった

そしてその最新のECUを得ることによって

SRは少しサイボーグ化しているんだけど

より良い性能、のベクトルが

当然のように「より良いSRとは何か」に向けられていた

「より良いSR」とは、「SRの本質」を求めるということで

スムースでパワフル、ではないということだ

最大トルク発生を3000rpmに落とし

「日常域での使いやすさ」と嫌いなフレーズで云いまわされながら

SRは本当にSRらしく作り込まれた

今まで思っていた高回転での性能より

中速域(アクセル開度2分の1)での性能こそが

ビッグシングルの味わいなのだと云わんばかり

そしてそれは日常速度域でのスポーツ性に最も近い

2500rpmから3500rpmのトルクバンドを使って

コーナリング中に矢継ぎ早にシフトアップすれば

SRはもっとも「らしく」旋回していくのだ

これこそがボクが求めている姿に近いオートバイの筈だ

あらためて強く感じた

ぜひ乗りたい、と



という訳で

これが今回「SR400(RH16J)」をボクが買った理由だ

ヒヒヒヒヒッ