ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

あまつさえ「運」ですら何とかなると考える、人の傲慢さよ

2024年08月13日 | R100Trad (1990) クロ介


立秋を過ぎても連日の暑さ

もちろんボクたちオートバイ乗りは知っている

日陰に秋の空気が淀んでいることを

信号待ちでジリジリと聞こえてくるような日差しに焙られても

ボクたちはこの瞬間を味わいたくてじっと夏に耐えて走るのだ

もう秋は目の前に来ている



またメジャーリーガーの話なんだけど

大谷翔平がドジャースに移籍が決まったころ

高校時代のエピソードとして目標達成シート(マンダラチャート)が話題になっていた

本人の発想だったのか周囲の助言だったのか

彼の目標「ドラフト1位指名を8球団から」に対して

一般的にアスリートに必要だとされる「心・技・体」を網羅した8個の題目と

その題目ごとにそれぞれ8個の具体的な行動目標が書き込まれていた

球速160キロ、コントロール、キレといったピッチャーの本質に関わる事だけでなく

ドラフトでより多くの指名をもらうためには

人間性や運も大切だと考えていたことが見て取れた

感謝、礼儀に始まり、道具を大切に使うとかゴミ拾いとか

一見野球とか、トッププレーヤーとかにマストとは思えない項目が並ぶ

けれど世界中の人が知っている

大谷翔平の素晴らしさはそのプレーだけでなくむしろ人間性の方だと

彼に目を奪われない人間なんておそらく一人もいないだろう

「神は細部に宿る」とはドイツの建築家ミース・ファンデルローエの言葉だが

大谷翔平の細部にはまさしく神が宿るようだと云えば持ち上げすぎか



大谷選手の話をしながらふと我に帰ると

本当にイヤになるくらい自分を恥ずかしく感じる

もちろんあれほどの存在は奇跡に近い

ボクたち(あなたも?)市井の人間には切ない話だ

けどね

市井の民には市井の民なりの努力もある

その価値や大きさは比べられるものではないはずだし

少なくとも得られるものだってあるだろう



ボクはオートバイが好きだから

オートバイで死にたくないと思っている

それと同時にオートバイに乗っている人みんなに死んでもらいたくないと考えている

大好きなオートバイに乗って死んではダメだよ

だから走る時は交通安全に留意し

いつもオートバイを確実に整備しておくように努力している

正しい経験を積んで予測運転の精度を上げたりすることも大切だ

けれど正直なところ事故に会う会わないはやはり「運」だったりもする

大谷翔平のマンダラチャートにも「運」というキーワードがあったように

あれほどの資質と実力を持つ超一流プレーヤーでも

人間である以上「運」の部分があると考えている訳だ

その具体的な行動目標として大谷選手は

あいさつ、ゴミ拾い、部屋そうじ、道具を大切に扱うなどを挙げる

これらは野球とはなんの関係もないようにも見えるし

逆に人間として社会人として当たり前だとも感じる

ボクたちオートバイ乗り

「運」を上げる必要はないか?

いや多いにあるだろう

なぜなら事故は「運」の部分もあるからだ



実際には何をどうすれば運が良くなるのかはわからない

お祓いを受けたりお札を授かるのもいいかもしれない

左足からブーツを履き左手からグローブをはめるとか

ジンクスやルーティーンなんかもある

正直逆に何もしていなくても

結局のところ「運」はどうなるものでもないのかもしれない

大谷くんだってゴミ拾いしたり部屋の掃除をしたりしたって

それでチャンスにクリーンヒットを繰り出せるとは思っていないだろう

それだったらバッティング練習に励み、対戦ピッチャーを研究した方が

遥かに効果的だと素人のボクでも思う

でも何か人知れず務めるストイックさに意味を感じることはある

かのイエス様も云われた

「自分の義を見られないために人の前で行わないように、注意しなさい」

さらには「右手のしていることを左手にさえ知られるな」と仰る

そうしてこそ神が細部に、ほんの少し宿らないかな、と思う訳だ

けれどオートバイの事故だって「運」まかせではなく防げるものも実は多い

単独の自爆事故や一旦停止無視みたいな自殺行為の事故もある

右直の事故でもニュース映像で原型が無くなるほど潰れたオートバイを見る

オートバイを操る技術

雑多で混沌とした混合交通を走る経験値

本来はそういった具体的な取り組みで事故にあう確率を下げるべきだ

そんな姿勢でオートバイに向き合っているだろうか

そこでボクが思うのはこんなことだ



誰かの後ろに付いて走っていたり

すれ違うオートバイを見送ったりしていると

とても気になることがある

「爪先」だ

爪先が外に向いて開いたいわゆる逆「ハ」の字になっていたり

これも案外多いんだけど

その爪先がステップより下に(シフトアップの時みたいに)突き出したようになっている

これは全くの個人的な印象だが

オートバイへの向き合い方があの爪先に見て取れるような気がするのだ

なにも教習所で習ったことを蔑ろにするな、と云いたい訳じゃない

あの爪先のみっともなさ、だらしなさ、無頓着さに寒気がするのだ

何度も云うけど個人的な印象に過ぎないと念を押す

ご本人がどういう意識でああなっているのかは知らないしどうでも良い

でもボクはとてもあんなみっともない格好で

大好きなオートバイに向き合いたくはないと考える

それこそ「運」が逃げていきそうだ

第一、あれは本当にカッコ悪いよ



土踏まずをステップに乗せて爪先を前へ向けペダルの上に置く(ペダルに触れてはいない)

素早く踏みかえられるなら母趾球でステップを踏んで踵をフレームに当ててもいい

疲れてくるとどうしてもああなるというなら休憩すべきだ

爪先を前へ向けると自然に股関節が閉まる

大切なのはむしろこっちで

股関節を閉めることで下半身全体がオートバイに自然に密着する

爪先を前に向けていればニーグリップを意識する必要はない

技術的にも理にかなっているし

とにかくオートバイ乗りとして真摯にオートバイと向き合っている感じに

好感が持てるし憧れてしまう

もちろん好感を持たれたくてやっているつもりはないんだけどね

ステップに置いた爪先を前へ向ける

それはボクのオートバイへの敬意と畏怖、愛情と恐怖の表現だ



まあとにかく事故にはくれぐれも気を付けよう

むかし読んだ本にオートバイに乗る人の寿命は乗らない人より7年短いとあった

これは病気にかかるのではなく事故で命を落とすという意味なのだろう

特に若い人は周りの人の人生をも大きく変えてしまうことが多い

オートバイで死んではだめだよ

気を付けて、気を付けて

今日も大切な人が待つ家へ帰り着こう



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