自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆メディア縦乱‐4

2008年02月24日 | ⇒メディア時評

 関西テレビのホームぺージに2月19日付で「お詫び」が掲載されている。北京オリンピックの広報文をマスメディア各社に流した際に、誤解を与える内容があったと釈明したものだ。まずはその文面を以下読んでみる。

    関テレ「お詫び」とオリンピック番組の行方

  【お詫び】2月4日付で「北京オリンピック」を放送するかのような誤った番組広報情報を報道各社にリリースしてしまいました。日本民間放送連盟を除名され、現状では「北京オリンピック」の放送ができないにもかかわらず、このような事態をまねき、視聴者の皆様はじめ、関係各位に多大なるご迷惑をおかけし、深く陳謝いたします。改めて今回の件を肝に銘じ、原因の究明と再発防止に努め、再生への取り組みに邁進してまいる所存です。

  しかし、これだけではなぜ関西テレビが北京オリンピックを放送できないのか、視聴者は釈然としないだろう。もう少し背景の説明が必要だ。去年1月に発覚した関西テレビの番組「発掘!あるある大事典Ⅱ」の納豆データ捏造問題で、日本民間放送連盟は(民放連)は4月19日付で関西テレビを除名処分にした。このことになぜ北京オリンピックが絡んでくるかというと、日本におけるオリンピックの番組を取り仕切るのはNHKと民放連で構成するジャパンコンソーシアム(Japan Consociam=JC)という組織だからである。JCは1984年のロサンゼルス五輪以来この枠組みでオリンピックのほかワールドカップ・サッカーなど大型の国際スポーツイベントを取り仕切っている。民放連から除名処分を受けている関西テレビはこの枠組みから自動的に外れるのでオリンピックの番組は放送できないことになる。

  このような状況であることを知りながら、関西テレビの宣伝部はフジテレビから北京五輪の番組広報データを受け取って、主語に自社名を加えて「フジ・関西テレビ」と書き直して、2月4日付で報道各社にニュースリリースした。広報文には「フジ・関西テレビの北京オリンピック中継…」など、五輪中継を前提とした表現になった。このリリース文を受け取った新聞各社は、「関西テレビは民放連に復帰することを見越してリリースを出しているのか」と問い合わせてことの次第が分かったということらしい。

  単純ミスなのだろうが、それにしてもタイミングが悪かった。関西テレビの民放連復帰について意見集約していた近畿の民放18社の社長らが、この広報のあり方を問題視し、2月18日の会合では結論を持ち越した、との新聞報道もあった。慌てた関西テレビ側はそのけじめとして、22日に記者会見して、平井誠信・常務取締役を減俸10分の1(1カ月)、編成局長と広報を作成した編成局宣伝部の部長をそれぞれ賃金日額2分の1の減給(1カ月)にしたと発表した。しかし、この処分が致命傷になったと私は分析する。民放連とすると、1年後くらいに「粛々と制裁を解除」のシナリオを描いていたのが、関西テレビが役員を処分したことが返って今回のフライング問題を大きく見せてしまう結果になり、民放連は「粛々」とやれなくなったのではないか。単なるフライングとしては済まなくなったのである。

 民放連に復帰できないと、関西エリアではフジ系のオリンピック番組は視聴できなくなる。可能性として、関西テレビやフジが資本参加しているKBS京都や、サンテレビなど関西の独立U局(系列に属していないローカル局)に番組を流してもらうことになるのではないか。経営陣はそのようなことも視野に入れながら対応策を練っているに違いない。あくまでも想像である。(※写真は1月11日、中国・西安空港で撮影したオリンピックのPR塔)

 ⇒24日(日)夜・金沢の天気   雪

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