自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆地デジ、電器屋の夏

2011年01月10日 | ⇒メディア時評
 前回のブログで、昨年7月24日に能登半島の先端エリアがアロナグ波を止め、完全デジタルに移行した話をした。この日は地元に総務省や民放・NHKのテレビ業界の関係者らが訪れ、記念セレモニーが開かれた。このとき、「珠洲モデル」という言葉を初めて聞いた。

 珠洲モデルというのは、地域の電器店15軒が手分けして、高齢者世帯などを一軒一軒回り、アナログ受信機(テレビ)にチューナーの取り付けをした。ボランティアではない。ただ、お年寄り宅を何度も訪ね、丁寧に対応し、見事に地デジ化のウイークポイントといわれた高齢者世帯の普及に成し遂げたと評価された。記念セレモニーでは、デジタル放送推進協議会の木村政孝理事が一人ひとり電器店の店主の名前を読み上げ感謝状を贈ったほどだ=写真=。

 その珠洲モデルの内容をさらに詳しく説明する。能登半島は少子高齢化のモデルのような地域だ。珠洲市では6600世帯のうち40%が高齢者のみの世帯で、さらにその半分に当たる1000世帯余りが独居である。デジタル対応テレビの普及は進まない。では、そうした世帯にチューナーを無償貸与すれば、お年寄りは自ら上手に取り付けて、それでOKなのだろうか。問題はここから始まる。高齢者世帯を町の電器屋が一軒一軒訪問し、チューナーの取り付けからリモコンの操作を丁寧に教える。このリモコンにはチューナーとテレビの2つの電源がある。一つだけ押して、お年寄りからは「テレビが映らないと」とSOSの電話が入る。このような調子で、「4回訪ねたお宅もある」(同市・沢谷信一氏)という。チューナーを配っただけでは普及はしない。丁寧なフォローが必要なのだ。

 話はがらりと変わる。先日、金沢市内の電器店の経営者と雑談を交わした。電器屋氏いわく、「ことしの7月24日が怖い」と。街の電器店が1年の中で一番忙しいのは6月から7月という。エアコンの工事も増え、冷蔵庫などの修理も多くなる。そんなときに、ことしは「地デジ」と重なり、駆け込み発注でパニックになるかもしれない、と。

 地デジの場合、家庭ごとに条件が違っていて、アンテナの位置が少しずれただけで映りが悪くなったり、屋内の配線やブースターが原因で映らない場合もある。「とにかく、やってみないと分からないケースが多い」。普通、アンテナ工事は2、3時間で済むが、地デジのアンテナの場合は半日から丸1日かかるケースもあるという。しかも、長梅雨が続けば、屋根には上がれない…。

 7月24日といえば、ことしは日曜日。おそらく夏の高校野球ローカル大会の決勝戦がこの日、ラッシュを迎える。そんな日に、歴史的な日本の地デジ化が訪れるのだ。

⇒10日(祝)朝・金沢の天気  ゆき
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