マカティ市にある国連食糧農業機関(FAO)フィリピン事務所所長補のアリステオ・ポルツガル(Aristeo A.Portugal)氏=写真・中央=を訪ね、今回のプロジェクトの代表、中村浩二金沢大学特任教授がJICA草の根技術協力の経緯を説明した。ことし5月に能登半島で開催されたFAO主催のGIAHS国際フォーラム(閣僚級会議)の「能登コミュニケ」で、先進国と途上国のGIAHSサイトの交流が盛り込まれ、それに基づいて前向きに取り組んでいると述べた。ポルツガル氏は、GIAHSでは農業における生物多様性や景観の維持、伝統文化の継承などが柱となっているので、ぜひ金沢大学とフィリピン大学が協力してイフガオの若者たちの人材育成に取り組んでほしい、と期待を込めた。
イフガオ棚田のスノボードで滑走することの意味、
話の中で話題になったことを2つ。ポルツガル氏が「こんな動画がユーチュ-ブで話題になっているのを知ってるかい」と、タブレットで見せてくれたのは、欧米人と見られる若者がイフガオの棚田をスノーボードで滑り下りるという映像だった。すでに99万アクセスもある。ポルツガル氏は「こんなことでイフガオが話題になっても、地域にとってはどのようなメリットがあるかね」といぶかった。私自身、最初にこの動画を見たときは、少々驚いた。山の頂上の細長い棚田をまるで海上のように滑る。意外性を演出したものだ。ただ、後でだんだんと腹が立ってきた。「無神経な若者の冒険」と。
今回の訪問に同行し、自身もイフガオ出身のフィリピン大学教授のシルバノ・マヒオ(Sylvano D. Mahiwo)氏もこう言った。「バチカンの大聖堂の屋根をスケートボードで滑走するようなもの。本人はやったという気になるかも知れないが、カトリック信者は拍手しますかね」と。2000年コメ作りを行ってきたイフガオの民にとって、田んぼは「聖地」なのだ。動画作成に協力した地元民もいたのだろうが、多くの人は不信感を持っているに違いない。「イフガオの田んぼの文化価値を知らなさすぎる」(マヒオ氏)
もう一つ出た話が、ABS(遺伝資源へのアクセスと利益の公正な配分)だ。フィリピンのタガログ語で「花の中の花」の呼び名で知られる「イラン イラン」。「シャネルの5番」でも知られる香水は、バンレイシ科のイランイランの木の花の精油でつくられる。原料である花の産出国、そして由来の名前などがタガログ語であるものの、「フィリピンでは恩恵は感じられない」。ABSに関しては、国連生物多様性条約第10回締約国会議も論争があったように、例えば資源利用国(主にEU、日本などの先進国)のバイオ企業が遺伝資源へのアクセスにより儲けた利益を資源提供国(発展途上国)に適切に還元すべきである、との資源提供国側の主張により盛り込まれた規定だ。利益の適切な配分が環境保全の資金調達のために必要であることは明らかなのだが、資源提供国と資源利用国の間で利益配分を巡る対立がある。
フィリピンでは、国家先住民族問題対策委員会(NCIP)が、イフガオのような先住民地域で、日本のような資源利用国が生物資源のサンプル採集などを行うにあたっては、ガイドラインに従って、事前情報に基づく同意の取得、利益配分について交渉の上で合意などが求められる。
ポルツガル氏が言いたかったのは、先進国と途上国の関係について、先進国側が途上国の文化の問題や資源の活用について十分に注意を払ってください、という念押しだったのではないかと想像している。もちろん、イフガオにおける人材育成プログラムに関しては「能登コミュニケ」に則ったプロジェクトであると評価いただいた。
⇒27日(水)夜・マニラの夜 はれ
イフガオ棚田のスノボードで滑走することの意味、
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今回の訪問に同行し、自身もイフガオ出身のフィリピン大学教授のシルバノ・マヒオ(Sylvano D. Mahiwo)氏もこう言った。「バチカンの大聖堂の屋根をスケートボードで滑走するようなもの。本人はやったという気になるかも知れないが、カトリック信者は拍手しますかね」と。2000年コメ作りを行ってきたイフガオの民にとって、田んぼは「聖地」なのだ。動画作成に協力した地元民もいたのだろうが、多くの人は不信感を持っているに違いない。「イフガオの田んぼの文化価値を知らなさすぎる」(マヒオ氏)
もう一つ出た話が、ABS(遺伝資源へのアクセスと利益の公正な配分)だ。フィリピンのタガログ語で「花の中の花」の呼び名で知られる「イラン イラン」。「シャネルの5番」でも知られる香水は、バンレイシ科のイランイランの木の花の精油でつくられる。原料である花の産出国、そして由来の名前などがタガログ語であるものの、「フィリピンでは恩恵は感じられない」。ABSに関しては、国連生物多様性条約第10回締約国会議も論争があったように、例えば資源利用国(主にEU、日本などの先進国)のバイオ企業が遺伝資源へのアクセスにより儲けた利益を資源提供国(発展途上国)に適切に還元すべきである、との資源提供国側の主張により盛り込まれた規定だ。利益の適切な配分が環境保全の資金調達のために必要であることは明らかなのだが、資源提供国と資源利用国の間で利益配分を巡る対立がある。
フィリピンでは、国家先住民族問題対策委員会(NCIP)が、イフガオのような先住民地域で、日本のような資源利用国が生物資源のサンプル採集などを行うにあたっては、ガイドラインに従って、事前情報に基づく同意の取得、利益配分について交渉の上で合意などが求められる。
ポルツガル氏が言いたかったのは、先進国と途上国の関係について、先進国側が途上国の文化の問題や資源の活用について十分に注意を払ってください、という念押しだったのではないかと想像している。もちろん、イフガオにおける人材育成プログラムに関しては「能登コミュニケ」に則ったプロジェクトであると評価いただいた。
⇒27日(水)夜・マニラの夜 はれ