自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆能登半島地震 地域再生は可能か~4 進化形の復興ファンド

2024年03月28日 | ⇒ドキュメント回廊

  被災した企業や事業所を支援する「100億円ファンド」を、政府や石川県、地域の金融機関が連携して近く立ち上げる。きょう28日付の新聞メディアが報じている=写真=。記事によると、震災前からの負債と事業再建にかかる新たな負担の「二重債務」に戸惑う企業や事業者に対し、ファンドが既存の債務を一部買い取る減免と返済猶予を行うことで、金融機関からの新たな借り入れをしやすくする。

  能登に本社を置く企業は4075社。売上高で見ると、製造業が3分の1を占め、医療や宿泊業などのサービス業、建設業と続く。地震で工場設備や宿泊施設に被害が出ている。地場産業である繊維や輪島塗などの工芸は2割の企業が生産再開のめどが立っていない(28日付・日経新聞)。ファンドは政府系の中小企業基盤整備機構や地域経済活性化支援機構のほか、石川県、地域金融機関の北國銀行、北陸銀行、のと共栄、興能信用金庫、県信用保証協会、商工中金が出資する。中小企業庁は来月4月1日に七尾商工会議所に職員を派遣し、「能登産業復興相談センター」を開設して、ファンドの活用を助言する(同・北國新聞)。このほかにも、出資する金融機関は相談窓口を設ける。

  ファンドの対象は伝統産業から観光・宿泊業、農業や漁業など一次産業まで幅広い業種となる。地域の金融機関はいち早く地元企業や事業所に手を差し延べている。金沢に本店を置く北國銀行はECを手掛ける子会社を通じて、被災で在庫の処理が難しくなった商品を仕入れて全国ネットで販売するなど支援。また、傘下のコンサル会社を通じて被災企業の事業再建も進めている(同・日経新聞)。

  上記の記事からも分かるように、地元の金融機関は単に復旧・復興で融資をするのではなく、能登の未来を見据えた産業をどう構築していくかを企業や事業所と知恵を出し合いながら再建計画を進めている。北國銀行を傘下に持つ北国FHDの杖村修司社長をそのポリシーを「進化した形での復興」と表現している(同・日経新聞)。 

  冒頭の話に戻る。100億円のファンドは災害規模からすると少ないようにも思える。被災企業の返済負担を軽減する公的な金融支援はさまざまにあり、今回のファンドの設立はその窓口機能という位置づけだろう。また、政府は地域の金融機能の強化を通じて、被災地の経済再生を後押しするため、金融機能強化法を活用した公的資金の導入を検討しているようだ。進化形の復興ファンドを能登再生の活力にしてほしい。

⇒28日(木)午後・金沢の天気   くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする