今年のノーベル物理学賞に地域温暖化予測の第一人者として知られるプリンストン大学上級研究員の真鍋淑郎氏が選ばれた=写真=。真鍋氏は京都大学と東京大学大学院で地球物理を学び、それまで物理学とは考えられていなかった気候変動を数式を使うコンピューターでシミュレーション解析を行うことで、「気候物理学」という新たな研究ジャンルを切り拓いた。
実にタイムリーな受賞ではある。今月31日からイギリス・グラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催され、各国の代表やNGOが脱炭素の目標や具体策について話し合う。今回のノーベル賞受賞で、温室効果ガスの削減こそ国際的な課題として広く認知されることになるだろう。
ひょっとして、真鍋氏のノーベル賞受賞はアメリカのバイデン大統領へのメッセージではないだろうか。アメリカは2015年に採択された温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」について、「不公平な経済的負担」を強いているという理由で2017年6月、当時のトランプ大統領が協定から離脱すると宣言し、2020年11月に正式に離脱した。政権を引き継いだバイデン氏はパリ協定への復帰を表明し、ことし1月20日に復帰手続きの開始を命じる大統領令に署名した(2021年1月22日付・BBCニュースWeb版日本語)。ノーベル委員会は「パリ協定復帰を急げ」とバイデン氏にメッセージを贈ったのだろう。
話は変わるが、先の菅政権はことし4月に日本が2030年度の温室効果ガスの削減目標を46%減(2013年比)に引き上げて設定し、「2050年カーボンニュートラル宣言」に向けた青写真を示した。さらにG7首脳会議(ことし6月・イギリス)で途上国などで建設する石炭火力発電への新たな公的支援の廃止に合意した。これらの削減目標と対策は前出のCOP26で国連に提出することになる。日本は温室効果ガス削減に向けて舵を切った。
これも実にタイムリーだった。これまでの温暖化対策が経済成長の制約やコストと考える時代に終わりを告げ、経済成長の新たなチャンスとらえる時代の到来だ。日本には脱炭素化のさまざまな先端技術(水素と二酸化炭素から天然ガスの主成分メタンを合成するメタネーション技術など)がある。日本が本気になって温暖化対策のイニシアティブを握る好機でもある。環境関連に投下される「ESG投資」は世界でさらに強まるだろう。日本経済に「真鍋効果」がもたらされるのではないか。
⇒6日(水)午前・金沢の天気 あめ後くもり
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます