自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆五輪とパラリンピックの垣根を取り払うという発想

2021年08月31日 | ⇒ニュース走査

           パラリンピック競技をテレビで視聴していると、自らの視聴目線が「感動ポルノ(Inspiration porn)」ではないのかと考えたりする。この言葉が知られるようになったのは、2012年にオーストラリア放送協会(ABC)のWebマガジン『Ramp Up』で、障がい者の人権アクティヴィストであるステラ・ヤング氏が初めて用いた。意図を持った感動シーンで感情を煽ることを「ポルノ」と表現するが、障がい者が障がいを持っているというだけで、「感動をもらった、励まされた」と言われることを意味する(Wikipedia「感動ポルノ」)。

   話は変わるが、日経新聞Web版(8月30日付)のニュース。パラリンピックに合わせて来日しているフランスのソフィー・クリュゼル障がい者担当副大臣は30日、都内で記者会見を開き、2024年パリ五輪・パラリンピックは「オリンピックとパラリンピックの垣根を取り払う大会にする」と述べた。大会ボランティアの6%を障がい者にする考えを示し、あらゆる人々の社会参画の必要性を強調した。(※写真はソフィー・クリュゼル障がい者担当副大臣=在日フランス大使館公式ホームページより)

   NHKニュースWeb版(8月25日付)でも、クリュゼル氏が重い障害のあるスタッフがロボットを遠隔操作して接客する都内のカフェを訪れ、障害のある人の新たな働き方を視察したと報じている。このカフェでは、難病や脊髄の損傷などで重い障害のある60人が、自宅や病院にいながら、自分の分身のように、さまざまな大きさのロボットを遠隔操作して接客し、ロボットのカメラとマイクで客とコミュニケーションも取れる。クリュゼル氏は「多くの人が働き続けることを可能にする、すばらしい試みだと思います。2024年のパリ大会は私たちにとって大きな挑戦になるので、日本のよいアイデアを見て役立てたいと思っています。ハンディキャップのある人たちが解雇されることがないよう、人々の意識が変わっていくことを期待しています」と話した。

   オリンピックとパラリンピックの垣根を取り払うという発想が心を打つ。そして、ハンディを持った人が解雇されないよう、ロボットの遠隔操作という日本の技術を世界に広めてほしい。パラ競技を視聴していて、自らの目線が障がい者に対する「上から目線」ではないのかと自問自答しながらそんなことを想った。

⇒31日(火)夜・金沢の天気      くもり 


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