この発言はまるで他人事のようだ。東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件に関連し、大会組織委員会(6月解散)元会長の森喜朗元総理はきのう都内での会合であいさつし、「組織委員会や五輪関係者が問題になったわけではなく、個人的な問題で、大変残念で、皆さんにご迷惑をかけている」と述べた(12日付・時事通信Web版)。
森氏が「個人的な問題」と述べたのは、大会組織委員会の高橋治之元理事が五輪スポンサーをめぐり、受託収賄容疑で逮捕された一連の事件についてだろう。組織委の理事は「みなし公務員」という立場であり、職務に関連した金品の授受は違法だ。そもそも、スポンサー選定に絡む汚職事件は個人的な問題ではなく組織の問題ではないのか。
オリ・パラが民間ファンド中心の運営に切り替わった1984年ロサンゼルス大会以降で、五輪のスポンサーは「1業種1社」の原則が貫かれてきた。だが、組織委はスポンサー獲得業務の委託先とした電通とともに、東京大会での原則緩和をIOCに打診。提供する物品やサービスの種類を細分化することで業種の裾野も広がり、スポンサー料収入の拡大へとつながったが、その裏側で談合が手広く行われていたことになる。
電通の元専務もある高橋容疑者はオリンピックそのものを誘致するロビイストだった。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)は、五輪招致をめぐり高橋容疑者が招致委員会から820万㌦の資金を受け、IOC委員にロビー活動を行っていたと報じた。IOC委員に対するロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていて、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長は2019年6月に退任している。
不思議に思えるのは、組織委のチェック機能がなぜ働かなかったのか、組織委のガバナンスはどうなっていたのか。そもそも、会長で任命者でもあった森氏が、「個人的な問題」と他人事として済ませることができるのだろうか。
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