自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆自転車競技の大番狂わせ金メダリストは数学の研究者

2021年07月28日 | ⇒ニュース走査

   暑い中では外出を極力避け、テレビでオリンピック観戦をするのが一番だ。ついでにきょうの朝刊に目を通すと、東京での新型コロナウイルスの感染者が新たに2848人となり、1月7日の2520人を超えて過去最高となったと報じている。そして、石川県内でも新たに70人が感染し、これで3日連続で70人台となった(7月28日付・北陸中日新聞)。こうなると、ますます外に出づらくなる。

            きのうのソフトは実にスーパープレーだった。アメリカとの決勝戦。6回の1アウトで一、二塁のピンチ。相手打者のサードへの痛烈なライナーを三塁の山本優選手がはじいてしまったが、その打球を遊撃・渥美万奈選手がノーバウンドでキャッチし2アウト。すぐさま二塁に転送し併殺打とした。まるで忍者のようだった。

   CNNニュースWeb版(27日付)も「スーパースター」の存在を伝えている=写真=。「Anna Kiesenhofer is a math genius who just pulled off one of the biggest shocks in Olympics history」(意訳:金メダリストのアンナ・キーゼンホファー選手は数学の天才、オリンピック史上最大級の大番狂わせを演じた)

   以下、記事の要約。自転車女子個人ロードレースのキーゼンホファー選手(オーストリア)は世界ランキングは94位のアマチュア。その彼女が高温多湿と戦いながら137㌔のコースを疾走し、オーストリアに初めて自転車競技に金メダルをもたらした。30歳。

   キーゼンホファー選手のもう一つの顔は数学の研究者だ。イギリスのケンブリッジ大で数学の修士号、スペインのカタルーニャ工科大学で応用数学の博士号を取得し、現職はスイス連邦工科大ローザンヌ校の博士研究員。自分のトレーニングプラン、栄養、レースの戦略について綿密な計算で計画を練る。彼女の信念は「I dare to be different. I have a different approach and this means that I'm also unpredictable」(意訳:私はあえて違う。私は別のアプローチを持っており、これは私も予測不可能であることを意味する)。

   彼女が考えた競技の最適解は「最初から一人逃げ切り」のレース展開だった。名だたる優勝候補たちは彼女が途中でバテて脱落すると思ったに違いない。しかし、彼女は追撃を許さず、スタートからフィニッシュまで逃げ切った。予測不可能な大番狂わせを演じたのだ。

   上記の記事を読んで、金沢大学の大学院で流体力学を学び、能登で定置網の会社の漁師になっている人物を思い出した。潮の流れと力学に裏打ちされた理論に基づいて、糸を選び、編み目を調節して漁網を仕上げる。その網を海底に張り、魚を網に誘い込む。数年前、会社を訪れ話を聞いたことがある。「学んだ理論と実践が一致することこそ面白い」の言葉が印象に残っている。

            キーゼンホファー選手も同様に、自ら学んだ理論をどう体現していくかが研究者としての醍醐味なのだろう。勝負ではなく、最適解を追い求める知の世界がそこにある。

⇒28日(水)午後・金沢の天気       くもり時々あめ


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★台風の波に乗り、卓球の壁破... | トップ | ★メダル獲得、そして暑さとの... »

コメントを投稿

⇒ニュース走査」カテゴリの最新記事