自在コラム

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★アッと思わず手を打つ「英語の語源」

2022年01月26日 | ⇒ランダム書評

   面白い本を紹介してもらった。小泉牧夫著『アッと驚く英語の語源』(サンマーク出版)だ。日常でなにげなく使っているカタカナ英語の由来を知ると現代も見えてきて実に興味深い。

   本の内容をいくつか紹介すると。英語で「銀行」は「bank」だが、イタリア語のbancaが語源で「銀行」のほかに、「ベンチ」「土手」という意味がある。さらにそのツールをたどると、ゲルマン語のbanKōn「バンコーン」に行きつく。「土で盛り上がった平たい場所」という意味だ。キリスト教では利息を取って金を貸すことは教義に反するとされていた。しかし、中世後半に入ると、ローマ・カトリック教会はサン・ピトロ寺院の再建費用などに「免罪符」を大量発行し、それを高利貸しが販売を引き受けるという構図が出来上がる。これにドイツの神学者マルティン・ルターはローマ教会の堕落と非難し、宗教改革を起こす。賛同した画家ルーカス・クラーナハは『金貸しを神殿から追い出すキリスト』という木版画を描いた=写真、Wikipedia「金貸し」=。

   当時は地中海貿易で諸地域の通貨が流通するようになり、高利貸しは「両替商」も兼ねるようになる。彼らは教会前の広場でベンチに座り、勘定台を置いて金のやり取りをした。そうした勘定台での金銭の扱いをイタリア語でbancaと呼ぶようになった。bankの語源をたどるだけで、世界史に記されている歴史ドキュメントが浮かんで来る。

   もう一つ。英語のschool「学校」は、ギリシア語のskholē「スコレー」、ラテン語のschola「スコラ」が語源で、もともとは「暇」「余暇」という意味だ。古代ギリシアや古代ローマは奴隷制で成り立っていたが、その分、貴族や市民は暇な時間を政治や哲学、芸術に費やした。英語で「学者」という意味のscholarは、ギリシア・ローマでは文学を専門とする「古典学者学」のことで、ラテン語で「学校の」という意味のscholāris「スコラーリス」から派生した。

   ここで著者は述べている。元来「暇」という意味だった「学校」が、日本ではまったく逆の「忙しく余裕のない場所」になっている。受験戦争が激化して、ゆとりというものがなくなった。古代ギリシア人やローマ人のように、時間的にも精神的にも余裕を持って勉強することができないものだろうか、と。なるほど、これは時空を超えた問題提起かもしれない、と思わず手を打った。

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