能登半島の尖端、珠洲市の大谷町地区は震源に近い場所だ。リアス式海岸が続き、くねくねと曲がりながら国道249号を車で進む。途中、がけ崩れで落下した岩石が路上に転がっている。かろうじて避けて通り越すと、今度は倒壊した民家が国道に倒れ込んでいた=写真・上、珠洲市大谷町地内の国道249号で、3月16日撮影=。震災から80日経ってはいるものの、住宅が倒れたままとなっているのはここだけの光景ではない。被害が大きかった輪島市、珠洲市、志賀町、穴水町、能登町の各地で目にする。この光景を見るたびに復旧・復興の道のりは遠いと感じる。
では、なぜ倒壊した民家などが手つかずの状態になっているのか。考えうるのは、能登には空き家が多くあることだ。今回の地震では石川県全体で全半壊・一部損壊が7万3500棟に及んでいて(3月15日現在)、このうち全半壊の2万3700棟については自治体が費用を負担して解体ならびに撤去する。政府が能登半島地震を特定非常災害に指定したことから、いわゆる「公費解体」が可能となった。県ではこの作業を来年秋の2025年10月までに終える計画だ。ただ、問題がある。公費解体は所有者の申請、あるいは同意に基づいて行われるが、空き家の場合は所有者と連絡がつかない、あるいは所有者が誰なのか不明というケースが多いのだ。
「能登の過疎化は空き家問題」とも言われている。総務省が5年に1度実施している「住宅・土地統計調査」(2018年版)によると、金沢市などを含めた石川県全体の空き家率は14.5%ではあるものの、能登は空き家率が高く、輪島市は23.5%、珠洲市は20.6%、能登町は24.3%となっている。ちなみに県内で空き家率がもっとも高いのは、原発が立地する志賀町の28.1%だ。
倒壊した空き家とは言え、私有財産ではある。それを易々と公費解体できるのか。この問題をクリアする手立てを環境省が『公費解体・撤去マニュアル』=写真・下=として1月にまとめ、全国の都道府県などに配布している。概要は、2023年4月施行の改正民法にのっとり定められた新制度「所有者不明建物管理制度」を活用し、裁判所が選任した管理人(司法書士ほか)に所有者不明の建物の処分を任せるノウハウを説明している。
ただ、自治体と管理人は財産管理に関する協定を結ぶなど、相当に手間がかかることになりそうだ。制度はあれど、所有者が見つからない空き家は後回し、それが自治体の本音かも知れない。
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