NHKの「民営化」に向けた動きがあわただしくなってきた。政府の規制改革・民間開放推進会議が年末にまとめる最終答申案が明らかになった、と朝日新聞などが報じた(15日)。21日に予定している同会議での了承後、小泉総理に答申し、来年3月に閣議決定する「規制改革・民間開放推進3カ年計画」に内容を盛り込む計画という。
報じられた具体案では、(1)05年11月時点で34団体ある子会社等の統廃合による業務の効率化(2)番組制作委託を含む外部取引での競争契約比率の向上(3)受信料収入の支出使途の公表(4)BSデジタル放送の有料化について06年度早期に結論を出し、アナログ放送をやめる予定の2011年以降の実施―などを求めた。このBSデジタル放送の有料化とは、暗号処理により受信料を支払った世帯だけに見せる「スクランブル化」を指す。また答申案では、保有チャンネル数の削減、つまり「チャンネルをリストラせよ」とも言っている。
では、規制改革・民間開放推進会議がなぜここまで切り込んでくるのか。テレビ受信は全国で4600万件、うち未契約は985万件、1年以上の滞納は135万件、そして支払い拒否が130万件に及んでいる。つまり4件に1件は未払い。さらに相次ぐ不祥事の影響で未払いが加速度的に勢いを増していて、これはすでに構造的な問題と化しているからだ。また、インターネットによる調査(10月10日付・日経新聞)で、「NHKがなくなり、テレビ局が民放だけになったら困ると思いますか」の設問に、56.7%が「困らない」と回答した。「NHK受信料制度を今後どうしていくべきだと思いますか」の設問で、「廃止して民放のようにCM収入で運営」の回答が56%と過半数を占めた。「廃止して国の税金で運営」はわずか12%、「現状のままでよい」は10%である。つまり、NHKを民営化しろ、との意見が圧倒的に多い。
このNHK民営化の流れに対し、NHKも民放も警戒感を強めている。きのう15日に開かれた自民党の通信・放送産業高度化小委員会に呼ばれた民放連の日枝会長(フジテレビ)は「NHKと民放の二元体制が崩れないようにすることが大事だ。NHKの経営基盤を強化してほしい」と述べ、政府・与党内にあるNHK民営化論に反対の考えを示した。また、NHKの橋本会長も、民営化につながりかねないBS放送のスクランブル化について「有料放送に近いものになり、公共放送としての放送の性格を変えてしまう」と述べ、受け入れられないとの立場を表明した。
民放は、NHKの民営化につながるあらゆる動きを封じ込めたいのだろう。しかし、素朴な国民感情の「郵政公社も民営化するのに、なぜNHKが民営化してはダメなのか」という疑問に答えていない。民放の本音は「民営化するとパイ(広告マーケット)の奪い合いになるから」だが、国の参入規制に守られ高収益を誇る民放がそれを言っても説得力を持たないだろう。
来年3月の閣議決定、そして「骨太の方針」へとNHK改革が立て板に水を流すが如く動き始めた。
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