自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆テクノロジーで可視化する「8K 文化財」の凄み

2021年06月20日 | ⇒メディア時評

    能登半島の国指定史跡である縄文真脇遺跡を訪れたとき、学芸員から「発掘は最大の破壊」という言葉を初めて聞いた。考古学では遺跡を掘り出す発掘調査は遺跡を破壊してしまうことになることから、発掘前にレーダー探査を行い、遺跡の場所や状態を把握してから必要最小限の発掘を行っているとの内容だった。「地道な発掘」という考古学調査のイメージがひっくり返った印象だった。10年も前の話だ。

   最新のテクノロジーを使い、見えないものを可視化することで研究を深化させる、そうした発想が医療を始め様々な分野で広がっている。ことし3月から4月にかけて視聴したNHK-BS番組「見たことのない文化財」=写真、NHK公式ホームページより=でも、3Dスキャナーによる形状計測と超高精細画像で、まさに「8K 文化財」という世界を描き出していた。NHKと東京国立博物館がタッグを組んで、貴重な文化財をデジタルツールで解析し映像化することで肉眼では難しいところまで可視化するという新たな美術鑑賞を追求するという試みだ。

   面白かったのは、「遮光器土偶」を500倍に映像拡大し、VRで内部に潜入した映像。なんと、この土偶を作った縄文人の指の跡が見えていた。さらに、京都の400年前のパノラマを描いた「洛中洛外図屏風 舟木本」。そこに描かれている2700人は武士だけでなく、庶民や商人まで。当時の衣類やしぐさ、そして表情までもが450インチのスクリーンに浮かび上がる。さらに、ゲームコントローラーで拡大することで、当時の風俗や商売、人物などがリアルに見えてくる。

           ここまでくると考古学や美術史だけでなく動植物を扱う生態学なども調査手法が一変するのではないだろうか。研究領域におけるDX化は始まっている。

⇒20日(日)夜・金沢の天気    くもり

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★エレキと運命をともにした「寺内タケシ」の人生

2021年06月19日 | ⇒ドキュメント回廊

   昭和40年代のエレキギターブームで人気を集め、「エレキの神様」の愛称で親しまれたギタリストの寺内タケシ氏が、18日夜、横浜市内の病院で肺炎のため亡くなった。82歳だった(6月19日付・NHKニュースWeb版)。自分自身にとってはエレキギターは青春の思い出の一つだけに、いまでも、「寺内」「テラウチ」と見たり聞いただけで、つい「タケシ」と連想してしまう。

   エレキギターの音色が最初に耳に入ってくるようになったは、アメリカのバンド「ザ・ベンチャーズ」の来日(1965年1月)だった。自身はまだ小学生のころだ。ヒット曲「パイプライン」や「急がば廻れ(Walk, Don't Run)」に刺激を受けたものだ。続いて、イギリスのバンド「ザ・ビートルズ 」の来日(1966年6月)に心がかき立てられた。

   音楽に興味がわいて、中学生になりブラスバンド部に入った。トロンボーンを始めた。ブラスバンド部で同じくエレキギターを趣味でやっていた仲間と知り合い、2年生のときにエレキギターとドラムによる独自のバンドを結成した。バンド名を「Bombs」とした。激しい音を出すので、「爆弾のようなバンドだ」と周囲からなじられ、bomb(爆弾)をバンド名にした。ビートルズのように歌えるボーカルがいなかったので、ベンチャーズのインストゥルメンタル・サウンドが中心だった。

   バンド「寺内タケシとブルージーンズ」にのめり込んだのは、いわゆる「テケテケ」と特徴のあるギターテクニックだった。とくに、ベートーベンの交響曲第5番をエレキギターで演奏する「レッツ・ゴー 運命」は当時エレキギターを志す誰しもが目指した曲でありテクニックだった。自身はサイドギターを担当し、ベンチャーズとブルージーンズの演奏曲を秋の文化祭で披露することにして練習を重ねた。公演も無事成功し、当時は「エレキの若大将」気取りだったかもしれない。

   ただ、そのころ教育界ではエレキギターは「不良の温床」と見なされていたようだ。中学3年とき学校の担任から「高校受験もあるのでことしは止めた方がよい」と指導された。その後、全国の多くの学校でいわゆる「エレキ禁止令」が広まった。寺内氏は、偏見を解いてもらおうと1974年から全国の高校を回る「ハイスクールコンサート」を始めた。ライフワークとして2016年まで続け、訪れた学校は1500ヵ所にもおよんだ。エレキギターと運命をともにした人生だった。

⇒19日(土)夜・金沢の天気      くもり

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☆「コロナ禍」と「ケムシ」 ニュース・アラカルト

2021年06月18日 | ⇒メディア時評

           新型コロナウイルスの感染拡大はさまざまが言葉を産んでいる。「ロックダウン」(都市封鎖)や「クラスター」(感染集団)、「ソーシャル・ディスタンス」(社会的距離)、「オーバーシュート」(爆発的急増)、「パンデミック」(世界的大流行)といったカタカナ語は常識となった。さらに、「三密」や「濃厚接触」、「飛沫感染」、「無観客開催」などの漢字も。最近でも「職域接種」という言葉が新聞・テレビのマスメディアでも普通に使われるようになった。言葉を産み出す量が半端ではない。それだけ「コロナ禍」という世界のリスクがいかにすさまじいかを物語る。

   東京オリ・パラに伴う感染拡大のリスク評価について、政府の分科会の尾身会長ら専門家の有志が提言をまとめ、大会組織委員会の橋本会長と西村経済再生担当大臣に提出した。提言では「無観客開催が最も感染拡大リスクが少なく望ましい」としたうえで、観客を入れるのであれば、現行の大規模イベントの開催基準より厳しい基準を採用することなどを政府や大会の主催者に求めた(6月18日付・NHKニュースWeb版)。むしろ、新型コロナウイルスのワクチン接種を証明する「ワクチンパスポート」を自治体が発行し、これで会場に入れるようにすればよいだけの話ではないだろうか。

   能登半島で聞いた話。半島の北部にある能登町の山間部では、マイマイガの幼虫(ケムシ)が大量に発生している。電柱や建物の壁、木の幹などに大量の卵塊を生みつけられ、卵塊から続々とケムシがはい出している。この地域ではほぼ10年周期で大量発生していて、一度大量発生すると2、3年は続く。これまで、ケムシを駆除するため農薬散布を行ってきた。が、多量の農薬散布そのものが自然環境に過度の負荷をかけることになると最近では散布そのものを敬遠する傾向にある。ガムテープに貼り付けて取り除く方法もあるが、それだけではなかなか追いつかない。(※写真は公益社団法人「農林水産・食品産業技術振興協会」の公式ホームページより)   

   時事通信の世論調査(今月11-14日実施)によると、菅内閣の支持率は前月比0.9ポイント増の33.1%と横ばい。不支持率は0.4ポイント減の44.2%だった。不支持が支持を上回るのは6カ月連続。菅総理が感染対策の「切り札」とするワクチン接種については、「遅い」が69.4%で、「順調だ」の20.0%を大きく上回った。 政党支持率は自民党が22.8%、公明党3.7%。立憲民主党2.9%、共産党1.7%、日本維新の会1.2%、国民民主党0.5%、社民党とれいわ新選組がともに0.2%で、「支持政党なし」は63.2%だった(6月18日付・時事通信Web版)。

⇒18日(金)夜・能登町の天気     くもり   

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★「必要は発明の神さま」で祭り復活

2021年06月17日 | ⇒トレンド探査

   「必要は発明の母」と言われる。この場合は「必要は発明の神さま」かもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大で、昨年に引き続きことしも各地域の祭礼や神事などの恒例行事の中止が相次いでいる。インターネット調査で、コロナ禍で失われる可能性が⾼い⽇本⽂化として、「祭り」がもっとく高く42.3%、「花⽕⼤会」32.8%、「屋形船」29.0%、「花⾒」24.3%と続く(⼀般社団法⼈マツリズム、有効回答:男女400人、調査:2021年02月27日-3月1日)。祭りについては以前から高齢化や少子化で担い手不足が指摘されていたが、コロナ禍が拍車がかけたとも言える。

   多くの祭りは、神輿を担ぎ、その先導に獅子舞などがいて、それを見学する人々がいる。いわゆる「3密」の状態になることから、祭りが中止となるケースが多い。このような中、伝統の祭りを絶やしてはいけないと、神様を神社から外にお連れする神輿の代わりにミニ台車を手作りした神社の宮司がいる。きょう神社を訪れる機会に恵まれ、その想いを聞いた。

   石川県羽咋(はくい)市にある深江八幡神社。羽咋は祭礼の獅子舞が盛んな土地柄だが、昨年ほとんど中止となった。宮司の宮谷敬哉氏は3密を避けるために神輿を出せないとなれば、一人で押せる台車を作れないかとホームセンターに何度も通い、高さ150㌢ほどのものを完成させた=写真=。みこしに欠かせない鳳凰(ほうおう)は手作りが難しかったので、通販で小型のものを購入し飾り付けた。「神座(みくら)台車」と名付けた。

   昨年7月12日の例祭「祇園祭」では、神のより代である御霊代(みたましろ)を台車に収め、獅子頭だけを乗せた手押しワゴンが先導した。宮谷宮司が神輿の代わりに1人で台車を押して後に続いた。各家を1軒1軒回った。例年ならば神輿と獅子舞でにぎやか祭礼だが、簡素ではあるものの中止することなく続けることができた。

   この地区は500年ほど前に疫病が流行したことから、京都の八坂神社から神を招いて七日七夜祈祷したところ疫病が収まり、それを機に祇園祭が始まったと伝わる。宮谷宮司は「苦労して疫病を鎮めた歴史が地元にあり、『できない』ではなく、『どうしたらできるか』と考えた末にアイデアが浮かんだ」と。

   この神座台車と獅子頭の手押しワゴンが意外な展開を見せる。1965年(昭和40)年前後に神輿の渡御が途絶えていた集落から復活させたいと申し出があった。10月18日に地元の子どもたち6人が中心となって、神座台車と獅子頭の手押しワゴンで町内を歩いて回った。少子高齢化で担い手が少なくなり中止していたが、実に55年ぶりに祭りが復活したのだ。

   宮司は「祭りの復活で地域の様子が活き活きとしていることを一番感じたのは地域の人たちだと思う」と。この秋も神座台車と獅子頭の手押しワゴンの出番となる。

⇒17日(木)夜・金沢の天気     くもり

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☆「北斎」の次は「ダヴィンチ」 中国のおちょくり

2021年06月16日 | ⇒トピック往来

    中国は名画で風刺する広報戦略をとっている。ネットのニュースでみつけた記事(6月16日付・FNNプライムニュースWeb版)=写真・上=によると、G7首脳会議に中国が反発を強める中、ネット上で拡散されている『最後のG7』と題したイラストを、中国共産党系のメディア「環球時報」英語版が報じた。G7の国々に、オーストラリア、インドを加えた9ヵ国を動物に模し、テーブルには中国の地図が描かれたケーキが置かれている。

   レオナルド・ダ・ヴィンチの壁画「最後の晩餐」を模したものだ。図をよく見ると、日の丸の帽子をかぶった犬が、ヤカンからグラスに緑色の液体を注いでいる。この液体は福島第一原発の処理水を意図しているのだろう。 アメリカの国鳥のハクトウワシを中心に動物たちが囲んでいる。芸が細かいと思うのは、ワシの前ではトイレットペーパーをドル紙幣にプリントするような図柄。金融緩和と称して、価値のないドル紙幣を刷りまくり世界にバラまいているとでも言いたいのだろう。

   風刺画やパロティー画は思わず笑ってしまうものだが、それを中国が発信するのでは笑えない。香港やマカオの近くにある広東省の原発で放射能漏れが起きているという報道(6月15日付・CNNニュースWeb版日本語)もあるので、中国にとって、タイミングが悪いのでは。

   パロディー画と言えば、2ゕ月前にもあった。日本政府が東電福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水を海へ放出する方針を決めた(4月13日)。すると、中国と韓国が反発し、中国外務省の趙立堅副報道局長が同月26日付のツイッターで、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模したパロディー画像を投稿して批判した=写真・下=。富士山を原発とみられる建物に、そして、防護服を着た人物が船からバケツで液体を流す様子が描かれている。

   他国を揶揄するような風刺画の投稿がネットで相次ぐ。おそらく、作者は中国御用達のイラストレーターだろう。それにしても見た人を思わずクスリと笑わせるセンスがない。単なる「おちょくり」にしか見えない。

⇒16日(水)夜・金沢の天気      くもり

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★「まん延防止」解除の夜

2021年06月15日 | ⇒トピック往来

   金沢市に適応されていた飲食店での時短や酒類の提供自粛などの「まん延防止等重点措置」がきのう14日に解除された。夜の街の様子を見たかったのと、「家飲み」には少々飽きが来ていたので、さっそく繁華街に出てみた。写真はきのう午後7時45分ごろの金沢の繁華街、片町のスクランブル交差点の様子だ。月曜日なのでもともと人通りは多くない。

   まん延防止の措置は5月16日から今月13日まで適応されていて、期間中に夜の片町のスクランブル交差点を自家用車で通過したことがあるが、これまでのきらびやかなネオン街とは打って変わって、まるで「ゴーストタウン」のようだった。それに比べれば、人影がいくぶん戻ってきたという感じだった。タクシーの運転手は、「人の通りがあるだけましな方ですよ。勝負は今週の金曜の夜ですね」と業界の見方を話してくれた。   

   タクシーを降りて街を歩くと、ガラス越しに見える飲食店も人影がボツボツと見えた。そして、行きつけのワインバーに入る。期間中はメインのワインが出せないので、本格的な中国茶とコーヒーの提供に切り替えて午後8時までの時短営業を続けていた。「普段のサービスに戻れてホッとしています」とオーナーソムリエは顔をほころばせた。カウンターの右隣りにいた客も「仕事がヒマすぎてつらかった。暇(ひま)疲れですよ」と。長かった「まん延防止等重点措置」の解除、カウンター越しにそれぞれに想いを語り合った。

   するとカウンターの右隣りの椅子に女性が腰かけた。地元新聞の記者で、「まん延防止措置」解除の夜を取材しているとのこと。オーナーソムリエはインタビューに「こんなににぎわうもの久々ですね」と無難に答えていた。そして、質問の矛先はこちらにも。きょうはある意味で解除を祝う席のようなもので、拒否するもの無粋と思い、記者に「家飲み」から解放された思いを語った。

   その後、ワインバーを出て大通りでタクシーを拾い自宅に向かった。片町のスクランブル交差点では電光ニュースが流れていた。「G7サミット 中国への圧力鮮明に 台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」

   昨夜、記者に話したことがきょうの朝刊の記事になっていた。以下。「客の男性はほろ酔い気味で『家飲みはもう限界。家族もまた飲んでるのとけげんで、テレビのチャンネル争いをするようになってしまう』と目尻を下げた。」(6月15日付・北陸中日新聞)

   新聞の行数にして7行。自身の話しぶりに対する女性記者の印象は「ほろ酔い気分」で「目尻を下げた」ように見えた。つまり、うれしそうに飲んでいるように見えたのだろう。わがことながら思わず笑ってしまった。

⇒15日(火)午前・金沢の天気    はれ

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☆台湾めぐる「海峡」と「WHO」が国際問題に浮上

2021年06月13日 | ⇒ニュース走査

   菅総理がホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領と初めて対面での会談を行った日米首脳会談(ことし4月16日)。「台湾海峡の平和と安定の重要性」が初めて盛り込まれた共同声明「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」はある意味で新鮮だった。あれから2ヵ月、いまでは国際政治、安全保障を語る上でのキーワードとして浮上している。

   そして、台湾をめぐるもう一つのキーワードがWHOだ。WHO公式ホームページをチェックすると、第74回年次総会(5月24日-6月1日、オンライン)=写真・上=の模様が詳しくホームページ掲載されている。今回の総会で注目を集めたのは、台湾のオブザーバー参加についてだった。結局、中国などの反対で認められなかったもの、以前から中国寄りと批判が向けられているWHOへの風当たりがさらに強くなった。

   台湾はWHOに非加盟であるものの、2009年から2016年までは年次総会にオブザーバーとして参加していた。2017年以降は、中国と台湾は一つの国に属するという「一つの中国」を認めない蔡英文氏が台湾総統に就いたことで、「一つの中国」を原則を掲げる中国が反対し、オブザーバー参加が認められなくなった。

   ところが、新疆ウイグル自治区での人権問題や香港の民主主義運動への抑圧などで中国への懸念が高まる中、台湾問題がクローズアップされるようになった。先のG7外相会合(5月3-5日・ロンドン)の共同声明では、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調すると同時に、中国が反対する台湾のWHO会議への参加も支持した(5月6日付・共同通信Web版)。G7の共同声明で台湾問題をめぐる2つのテーマで盛り込まれるのは異例だった。
 
   日本でもこれまでになかった動きが起きている。年次総会に台湾の出席が認められなかったことをめぐり、今月11日の参議院本会議では、次の総会から参加を新型コロナウイルス禍からのより良い回復をテーマとしたセッション認めるよう各国に求める決議を全会一致で可決した(6月11日付・NHKニュースWeb版)。決議文は超党派の議員がまとめたもので、「検疫体制の強化などに先駆的に取り組んできた台湾が会議に参加できないことが、国際防疫上、世界的な損失であることは、各国の共通認識になっている」との内容で、政府にも今後、台湾が会議に参加する機会が保障されるよう各国に働きかけることを求めている(同)。

   そして、現在、イギリス・コーンウォールで開催されているG7サミット(6月11-13日)=写真・下、外務省公式ホームページより=の共同声明でどのような表現で2つの台湾問題がメッセ-ジとして盛り込まれるのか注目している。

   話はそれるが、WHO公式ホームページをふと見ると、北朝鮮が声明文を出している。新型コロナウイルスのワクチンの供給をめぐって、強烈な内容だ。「The development of COVID-19 vaccines and medicines might be the achievement for the common mankind whereas an unfair reality is to be seen that some countries are procuring and storing the vaccines more than its needs by inspiring the vaccine nationalism plainly when other countries can’t even procure it with their affordability. 」
 
   意訳すれば、一部国家が必要以上にワクチンを確保し、ワクチンのナショナリズムをあからさまに煽って、世界に不公平な事態を招いている、と。名指しこそしていないが、アメリカを意識しているのだろう。WHOの「パンデミック宣言」(2020年3月11日)下で、北朝鮮は弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射している(同3月25日)。弾道ミサイルを1発打ち上げると、そのコストはいくらなのだろうか。ミサイルの打ち上げより、ワクチンの確保に自助努力する方が賢明だと誰しもが思うのだが。

⇒13日(日)午後・金沢の天気   くもり時々はれ
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★見かけは「翆玉白菜」、中身は「毒菜」 

2021年06月12日 | ⇒ニュース走査

   台湾の国立故宮博物院(台北市士林区)を訪れたことがある。2011年11月だった。第二次世界大戦後、国共内戦が激化し、中華民国政府が台湾へと撤退する際に北京の故宮博物院から収蔵品を精選して運び出した。その数は3000箱、61万点にも及び、所蔵品数で世界四大博物館の一つに数えられる。ガイド役を引き受けてくれた国立台北護理健康大学の教員スタッフが真っ先に案内してくれたのが、清朝時代の「翆玉白菜」=写真・国立故宮博物院のホームページから=。長さ19㌢、幅10㌢ほどの造形ながら、本物の白菜より白菜らしい。清く白い部分と緑の葉。その葉の上にキリギリスとイナゴがとまっている。
  

   ヒスイの原石を彫刻して作ったというから、おそらく工芸職人はまずこの色合いからイメージを膨らませ、白菜を彫ったのではないか。これが逆で、白菜を彫れと言われて原石を探したのであれば大変な作業だったに違いない。日本人にとっても身近な野菜だけに、その色合いが和ませてくれた。以来、故宮博物院と聞いて、思い出すのは「翆玉白菜」だ。

   台湾から帰国して1ヵ月余りたって、金沢大学の授業のTA(テーチィング・アシスタント)をしてくれた中国人留学生の院生2人を誘って、金沢の居酒屋で忘年会を開いた。席上で、「翆玉白菜」の話をすると、「ワタシも台湾で見たことがある」と話が盛り上がった。紹興酒が進むと、一人が「でも残念なことに今の中国は『毒菜』が多いです」と語り出し、本国の食の事情を嘆いた。このとき初めて聞いた言葉だった。「毒菜」は姿やカタチはよいが、使用が禁止されている毒性の強い農薬(有機リン系殺虫剤など)を使って栽培された野菜のことを言うそうだ。

   10年も前の話なので、いくらなんでも中国では毒菜はもう栽培されてないだろう思っていたがそうではないらしい。週刊文春(6月17日号)に記載されている「あなたが食べている中国『汚染野菜』」の記事を読むと、日本は消費される野菜の2割を輸入に頼っているが、その輸入量(2019年)1800万㌧のうち実に998万㌧、53%が中国からで圧倒的なシェアだ。輸入の場合は食品衛生法に基づいて検疫検査が行われるが、過去3年間で中国産は232件の摘発を受けている。

   摘発が多い野菜は玉ねぎ。違反理由は「チアメトキサム」という殺虫剤だ。この殺虫剤を玉ねぎの皮に散布すると変色しない。つまり、新鮮な野菜と見せかけ、出荷量を増やすためにあえて散布している。チアメトキサムは玉ねぎだけでなく、ショウガやニンニクの茎でも見つかっている。また、摘発件数が多いのがピーナッツ類で3年間で50件。「アフラトキシン」というカビ毒の付着。このカビは発がん物質でもある。上記の記事を読んで大量の毒菜が日本に入ってきていると考えると他人事ではない。

   2008年に中国から輸入した冷凍ギョーザを食べて中毒症状が起きた、有名な「毒ギョウーザ事件」だ。それ以来、中国製の加工品はイメージがよくない。しかし、加工前の野菜そのものが「毒菜」「汚染野菜」となると、国内で加工されれば防ぎようがない。安心、安全がモノの価値として生産者の間で定着していないのであれば、記事にもあるように、水際で検疫体制を強化するしかない。

⇒12日(土)午前・金沢の天気     はれ

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☆「ニュースは知識のワクチン」とは言うものの

2021年06月11日 | ⇒メディア時評

   きのうテレビで午後のニュースを視聴していて違和感を感じた。東京都の新型コロナウイルスの感染状況についての民放のニュースだった。「インドで蔓延する変異種について、中学校でクラスターが発生し、海外リンクのない感染者も増えていることから、都は、スクリーニング検査などの監視体制を強化する考えです」とのワンセンテンスで意味が分からない言葉が2つあった。「海外リンク」と「スクリーニング検査」だ。

   その後、ネットで「新型コロナウイルス」と検索して調べてみた。「海外リンク」は海外の感染者などとの接触という意味だ。また、「スクリーニング検査」は感染者の中でウイルスの遺伝子変異の有無を判別をする検査を指す。東京都の小池知事がインタビューや会見で述べた言葉であれば、「また、小池カタカナ語が出た」と受け流すこともできるのだが、アンウンサーが読むニュースとして相応しい言葉遣いかと問えば、明らかに「NG」だろう。

   新聞とテレビのニュースを担当した経験で、「テレビのニュースは小学5年生が分かる言葉で」「新聞は中学2年生が理解できる記事を」と叩き込まれた。それは今も変わらないだろう。そのポイントは難しい漢字やカタカナ言葉を安易に使わず、分かりやすい言葉でニュース原稿を作成するということだ。

   そもそも、ニュースって何だ。「ニュースは知識のワクチン」という言葉がある。新型コロナウイルスや悪性のインフルエンザなどが流行する恐れがある場合、予防接種でワクチンを打っておけば、免疫がついて病気にかからない。それと同じように、まちがった情報やうわさにまどわされないために、普段から新聞やテレビのニュースを読んだり見たりすることで、間違えのない判断ができるようになる。なので、ニュースそのものが理解できなければ意味がない。

   冒頭の話に戻る。2つの言葉がすでに日常でも使われているのであればニュース原稿の言葉として問題はないだろう。ただ、記者が書いた原稿をニュースデスクがチェックしたのだろうか。あるいは、担当したアナウンサーが「この言葉、分かりにくくありませんか」と記者やデスクに問い合わせをしなかったのだろうか。ひょっとして、テレビ局の報道フロアで通用している業界用語なのだろうか。

⇒11日(金)午後・金沢の天気    はれ

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★続・アルツ新薬の論調 「ボケた者勝ち」なのか

2021年06月10日 | ⇒メディア時評

   今回もアルツハイマー病の新薬がアメリカのFDAで承認された話題を。新薬「アデュカヌマブ」の開発に携わった日本の「エーザイ」の株価が8日、9日と連日でストップ高となり、株式投資家の間でも注目の的になっている。定年を過ぎて株式投資を楽しんでいるという知人がこのブログを見て、メールを送ってきた。「オレは厚労省が承認したとしてもこの薬は点滴しない。だって、ボケた者勝ちだよ」と。

   その後、知人とメールで何回かやりとりして、「ボケた者勝ち」の言葉の背景を知ることができた。知人の父親はアルツハイマー病ですでに亡くなったが、自宅で奥さんといっしょに入浴や食事、排泄などの世話をしていた。80歳を過ぎてボケが始まったころは独りでトイレに行っていたが、そのうちにトイレがどこにあるのかも分からなくなった。介助しようとすると、「何する」としかられ、その都度「トイレへ行こう」と言うと、「世話かけるな」と礼を言う。また、5分もたつと忘れてしまい、同じことを繰り返した。

   ただ一つ発見したことがあったという。何かと心配性だった父親の顔から不安げな表情がなくなり、ボケたとは言え、表情が以前よりはつらつとしていた。不安なことはすっかり忘れて、自分が言ったことや行ったことも覚えていない状態。「父にとって毎日が新鮮な気分なんだろうと思えるようになった。幸せなんだろうと」

   確かに、頭脳は普通に動いているが、自分が寝たきりになって、食事や入浴、排泄の介護を受ける自分の姿を見て、何を思うだろうか。家族や周囲との人間関係のしがらみを記憶から一切外し、家族に面倒や世話をかけていると認識もせずに、その日を暮らしていければ、それで十分ではないか。「ボケた者勝ち」とはそういう意味ではないかと知人から教えられたような気がした。

   「エーザイ」の公式ホームページによると、アメリカ人の平均体重74 kgの場合の点滴投与は1回当たり4312㌦、4週間に1回の投与で年間コストは5万6000㌦、つまり610万円となる。自らの「ボケ封じ」に金を注ぐより、貧困にあえぐ難民の子どもたちへの教育や環境問題と向き合っているNGOに寄付をした方が後悔しないですむかもしれない。

⇒10日(木)午前・金沢の天気     はれ

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