自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★小麦高騰、ならば米粉スイーツやパンはいかがか

2022年06月18日 | ⇒トレンド探査

   テレビでなどでよく見るウクライナの国旗の、あの青と黄のツートンカラーは上が青空で、下が麦畑をシンボル化したものと有名になった。ウクライナは小麦の生産国で、FAOの統計(FAOSTAT、2020年版)によると生産・輸出量ともに、EU、ロシア、アメリカ、カナダに次いで世界第5位の「小麦大国」でもある。そのウクライナがロシアによる侵攻で黒海が閉ざされ、小麦輸出ができなくなったことから、各国が小麦の買い占めに走り、世界の小麦価格が高騰している。

   農水省公式サイト「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」によると、もともと去年夏の高温・乾燥でアメリカやカナダ産の小麦が不作だったのに加え、ロシアの輸出規制、ウクライナ侵攻で小麦の国際価格が上昇した。このため、農水省は輸入小麦の政府売渡価格を17.3%引き上げている(4月期)。パンやスイーツ、うどん・ラーメンなど麺の原料はほぼ100%が輸入小麦となっている。スイーツはアメリカ産、あの讃岐うどんもオーストラリア産に頼っている。

   この輸入小麦の政府売渡価格引き上げについて、金子農水大臣の記者会見(3月11日)が気になった。記者から「(小麦の)価格がちょっと上がった場合でも、お米で代替できるというようなお考えでしょうか」と質問された。これに対し、大臣は「米を食べてもらいたいという気持ちはあるけれども、やっぱり、パンの業界もあればいろんな業界の方もいらっしゃいますから、そういう方の立場を考えると、こういう厳しいときに、改めて、私どもで、いろいろと、米を、というのは、やっぱり控えなければいけないかなと私は思いますけど」と答えている(農水省公式サイト)。実に煮え切らない返答だった。

   むしろ、もっと米を活用すべきと答えてもよかったのではないだろうか。パテシエの辻口博啓氏を金沢大学の講義に招いて直接聞いた話だ。米粉を使ったスイーツが好評で、パンケーキやロール、バウムクーヘン、シフォン、タルトなど種類も豊富。当初、職人仲間から「スイーツは小麦粉でつくるもので、米粉は邪道だ」と言われた。それでも米粉のスイーツにこだわったのは、小麦アレルギーのためにスイーツを食べたくても食べれない人が大勢いることに気が付いたからだとの説明だった。

   小麦アレルギーの人たちのためにスイーツだけでなく、いまでは米粉によるパンや麺など多様な食材が開発されている。小麦の高騰をチャンスに、日本では余っている米の活用をこうした米粉食品の市場開拓へと広げてはどうだろうか。金子大臣にはそう答えてほしかった。いまからでも遅くはない。

(※写真は、米粉でつくるスイーツを紹介した単行本『辻口博啓のやさしい、お菓子』ソニーマガジンズ)」

⇒18日(土)夜・金沢の天気     くもり

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☆ウクライナ戦地を訪ねるリアルな外交

2022年06月17日 | ⇒ニュース走査

   一国の長が戦地を訪れ外交を展開するという、EUのリアリズムを感じさせるニュースだ。BBCニュースWeb版(16日付)は「Ukraine war: EU leaders back immediate candidate status for Kyiv」の見出しで、ロシア軍がウクライナへの侵攻を強める中、フランスとドイツ、イタリア、ルーマニアの4ヵ国の首脳がウクライナの首都キーウに列車で入り、戦闘が行われた近郊の街を訪れて被害の説明を受け、その後、ゼレンスキー大統領と会談したとの記事を掲載している。

   この訪問で、フランスのマクロン大統領は、EUはウクライナがロシアに勝利するまで支持すると強調。ドイツのショルツ首相は「ウクライナはヨーロッパの家族に属している」と述べた。ゼレンスキー大統領はEUの団結を訴えた。「Ukrainian President Volodymyr Zelensky described Russia's continuing aggression as a war "against the united Europe", adding that the "most effective weapon" was unity.」

   今回の訪問は、EUがウクライナにEU候補の地位を与えるかどうかについて勧告を行う1日前に行われた。その後、今月23日と24日のEU27ヵ国の首脳会議で加盟について議論する。さらに、G7サミットとNATO首脳会議など国際会議が立て続けに開かれる。EUを主導する3ヵ国の首脳がそろってウクライナを訪問することで、EUとして結束して支援する姿勢を示す狙いがあったのだろう。現場を見て交渉するリアルな外交だ。

   岸田総理も先月23日の日米首脳会談で、来年日本で開催されるG7サミットを広島市で開催することの同意をバイデン氏から取り付けたと語った。「唯一の戦争被爆国である日本の総理大臣として、私は広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はないと考えている」(共同記者会見)と語った。これも実にリアルな外交だ。

    岸田氏は今月下旬にドイツで開かれるG7サミットに出席し、その後、スペインで開かれるNATOの首脳会議に日本の総理として初めて出席する。この際、仏独伊首脳と価値観を共有するためにもウクライナを事前に訪れてはどうか。岸田総理にとって、ヒロシマとウクライナは平和へのコミットメントに欠かせないものになるだろう。

⇒17日(金)午後・金沢の天気    はれ

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★総理がNATO首脳会談に出席する意義は何なのか

2022年06月16日 | ⇒メディア時評

   きのう午後6時からNHKが中継で放送していた岸田総理の記者会見を視聴していた=写真=。淡々と語るその様子は分かりやすい説明で、「有事の価格高騰」に備えて、岸田氏が自らが本部長となり政府内に「物価・賃金・生活総合対策本部」を立ち上げるとの方針は、このところの物価上昇や景気動向に対応する迅速な対応だと思う。

   ただ、納得がいかない点もあった。その一つは、新型コロナウイルスの感染症対策の司令塔機能を強化するため「内閣感染症危機管理庁」を設置するとの表明。さらに、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、アメリカのCDC(疾病対策センター)に相当する「日本版CDC」を創設すると説明した。正直言えば、「いまさら遅い。現状でよい。研究所とセンターに混乱をもたらすだけ」。そう思ったの自身だけだろうか。

   もう一つ、少子化対策として「こども家庭庁」の設置法が成立し、300人規模の準備室を立ち上げる方針を示した。そして、出産費用を助成するため、現在は原則42万円が支給される「出産育児一時金」を「私の判断で大幅に増額する」と述べた。これは聞こえはよいが、現状の42万円はほとんどは「出産一時金」であり、病院に吸い取られている。岸田氏が増額した分は病院に「献上」することになりはしないか。むしろ、「出産」は保険適応、「育児」は幼稚園・保育園の経費無償化などと分けて支援した方が説得力がある。そのためのこども家庭庁ではないだろうか。

   さらに会見では、記者からの質問に岸田氏が戸惑う場面もあった。ジャパン・タイムズの記者が「今回の参院選をひと言で表現すれば、なんという選挙ですか」「勝敗ラインは」と尋ねた。勝敗ラインについては「与党で過半数」とすんなり言葉として出てきた。ところが、選挙(22日公示、7月10日投開票)の日程は迫っているものの、総理の口からは選挙をひと言で表現する言葉がなかなか出てこない。争点として有権者に何を訴えたいのか。結局、明言は避けたカタチとなった。

   道筋はすでにできているはずだ。岸田氏は会見で、6月下旬にドイツで開かれるG7サミットに出席し、その後、スペインで開かれるNATOの首脳会議に日本の総理として初めて出席する旨を明らかにした。ならば、この会議に出席して何を訴えるのか、その意義を語るべきではないのか。ロシアのウクライナ侵攻が象徴するように世界の、そして日本の安全保障環境も大きく変わってきた。参院選を機に、リアリティのある「アンポ」について国民と語るべきではないだろうか。

⇒16日(木)午後・金沢の天気     はれ

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☆スペクタルな能登が「里山里海国定公園」に

2022年06月15日 | ⇒ニュース走査

   能登半島の海岸沿いには景勝地が連なっていることから、1968年に「能登半島国定公園」に指定されている。景勝地の特徴は大きく2つある。「外浦」と呼ばれる波風が荒い、千里浜海岸から能登金剛、曽々木海岸、木ノ浦、禄剛崎かけての西側エリアだ。禄剛崎は半島の尖端で、東側エリアに入ると「内浦」と呼ばれる波風が静かな、見附島や九十九湾、穴水湾、七尾湾、氷見海岸と連なる。まさに動と静が織りなすリアス式海岸の絶景だ。

   中でも自然のスペクタルショーを目にすることができるのは輪島市の曽々木海岸だ。秋の夕方、窓岩で知られる海に突き出た岩石の穴に夕日が差し込む。岩の穴と夕日がちょうど同じ大きさで、すっぽり収まったときは思わず拝みたくなるような神々しさだ=写真・上=。5分間ほどの光景である。

   前置きが長くなった。きょうの地元紙の朝刊は、海岸線が中心だった能登半島国定公園に内陸部の里山を含め広げる拡張候補地として選ばれたと、環境省の発表を報じている=写真・下=。その選定理由について、環境省公式サイト「国立・国定公園総点検事業フォローアップ結果について」(6月14日付)では以下のように記載されている。

「既存の国定公園周辺には、棚田や谷地田、塩田、まがき集落景観がみられ、気候や地形といった自然条件に適応した人の営みが里山の風景を形作っている。こうした人と自然との関わりが評価され、国内初の世界農業遺産に登録されている」「地域は昆虫類が豊富で、シャープゲンゴロウモドキをはじめとした二次的自然環境に依存する希少種も生息・生育し、生物多様性が高く、トキの本州最後の生息地であった」「これらの里山域は、隣接する既存の国定公園の風景を成す一体の要素と考えられる」

    能登半島は2011年に世界農業遺産(GIAHS、FAO国連食糧農業機関)に認定されていて、里山里海が一体化した風景は国際評価を得ているとの理由だ。生物多様性に富んだ能登では、ため池で見られるシャープゲンゴロウモドキなど希少種も多い。そして、本州最後のトキの生息地であったと記されている。ちなみに、本州最後のトキが絶滅したのは1971年、国定公園に指定されて3年後のことだった。

   今回の拡張候補地の選定によって、能登の里山里海そのものが国定公園化する。環境省は2030年度をめどに地元自治体とともにどの里山区域を指定するか作業を進める。今回の拡張候補地の選定で、環境省が進めている2026年度に向けた本州でのトキ放鳥の候補地としてさらに弾みがついたのではないだろうか。ブログ(6月12日付)でも紹介したコウノトリのひな3羽も能登で育っている。トキもコウノトリも国の特別天然記念物だ。人々に見守られて国定公園で羽ばたく日を楽しみにしている。

⇒15日(水)午後・金沢の天気    あめ

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★「機を逸す」ヒトとコト

2022年06月14日 | ⇒ニュース走査

   手を打つべきときのタイミングを逃したのではないか。アメリカのダウ平均株価が800㌦を超える値下げを受けて、きょう14日の日経平均も前日に比べ一時630円安い2万6300円台に落ち込んだ(午前10時過ぎ)。円安も強烈で、きのう外国為替市場で1㌦が135円台前半まで下落した。メディア各社は24年ぶりの円安は、金融不安で「日本売り」に見舞われていた1998年以来と報じている。

   この円売りの背景として上げられるのが、日本とアメリカの金利の差だ。アメリカは物価上昇を抑えるためにFRBが大幅な利上げを行うとの見通しが広まり、日銀が超低金利政策を継続させていて、それぞれの金利差がさらに広がるとの読みから円売りドル買いが加速している。

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☆配膳ロボットが器用に立ち振る舞うファミレスの光景

2022年06月13日 | ⇒トレンド探査

   JR金沢駅近くにあるファミリーレストラン「ガスト」に久しぶりに入った。客席と厨房を行き来しているのは従業員ではなく、なんと、自走ロボットだ=写真=。従業員に尋ねると、ことし2月から2体が稼働しているそうだ。「料理配膳ロボット」と言い、「BellaBot」と体に書いてある。(※写真は配膳ロボットが料理を客席で渡し終えて厨房に帰るところ)

   配膳ロボットが料理を注文した客席の近くに到着すると料理が載っているトレイが青く光り、客はトレイから自分で料理を取り上げる。数秒たつと自動的に厨房に戻っていく。なるほどと思わせるのは、客が通路の床に置いている荷物を上手に避けている。おそらく、赤外線センサーや3Dカメラで感知し避ける機能が搭載されているのだろう。

   そして、通路で人とすれ違うときは止まって、「お先にどうぞ」などと言葉を発している。料理を受け取った客が「ありがとう」と言いながら頭の部分をなでると、モニターに映る顔が笑顔になり、「くすぐったいニャ」と発声する。ロボットの顔つきはネコをイメージしている。「ご注文ありがとうニャ」と少し高めの声でお礼を言い、なかなか愛嬌がある。

   ネットで「BellaBot」を検索すると、配膳ロボットは中国・深圳の「PUDU Robotics」社が開発したもの。重量は57㌔で充電時間は4.5時間。稼働時間は12時間、バッテリーを交換すれば24時間、365日のフル回転が可能。同じバージョンのロボットを最大20台、同じフロアに配置することができる。障害物は35㍉×50㍉×100㍉以上のものを感知する。1つのバッテリーで約400皿の料理を運ぶことができ、飲食店での高い回転率を誇る、とある。

   配膳ロボットの動きを眺めていてふと思った。客が席の机にあるタブレットで料理を注文し、それを運ぶのがロボットの役割だが、運びと同時にカード決済も行えるにようにしてはどうだろうか。配膳・決済ロボットになれば、ロボットの格が上がる。ひょっとして、そのような新型がまもなく登場するかもしれない。

   今回、店に入ったときはすでに昼食を終えていてドリンクバーを注文したので、コーヒーは自身が運んだ。なので、ロボットとは対面で話してはいない。このロボットはどこまで進化するのか、気になる光景だった。

⇒13日(月)午後・金沢の天気    はれ

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★コウノトリとトキが能登の空に舞う日

2022年06月12日 | ⇒トレンド探査

   前回のブログの続き。能登半島にコウノトリのつがいが3羽のひなを育てているという記事を読んで、兵庫県豊岡市のコウノトリにまつわる、ある物語を思い出した。

   江戸時代には日本のいたるところでいたとされるコウノトリが明治に鉄砲が解禁となり個体数は減少。太平洋戦争の時には営巣木であるマツが燃料として伐採され生息環境が狭まり、戦後はコメの生産量を上げるために農薬が使われ、その農薬に含まれる水銀の影響によって衰弱して死ぬという受難の歴史が続いた。1956年に国の特別天然記念物の指定を受けるも、1971年5月、豊岡で保護された野生最後の1羽が死んで国内の野生のコウノトリが絶滅した。

   その後、飼育されていたコウノトリの人工繁殖と野生復帰計画は豊岡市にある兵庫県立コウノトリの郷公園が中心となって担い、ロシア(旧ソ連)などから譲り受けて人工繁殖に取り組んだ。豊岡でのコウノトリの野生復帰が知られるようになったのは2005年9月、秋篠宮ご夫妻を招いての放鳥が行われたことだ。ある物語はここから始まる。

   カゴから飛び立った5羽のうち一羽が近くの田んぼに降りてエサをついばみ始めた。その田んぼでは有機農法で酒米をつくっていた。金沢市の酒蔵メーカー「福光屋」などが酒米農家に「農薬を使わないでつくってほしい」と依頼していた田んぼだった。秋篠宮ご夫妻の放鳥がきっかけで地元のJAなどが中心となってコウノトリにやさしい田んぼづくりが盛んになった。

   コウノトリが舞い降りる田んぼの米は「コウノトリ米」として付加価値がつき、ブランド化した。こうした、生き物と稲作が共生することで、コメの付加価値を高めることを「生き物ブランド米」と称されるが、豊岡はその成功事例となった。そして、豊岡にはコウノトリを見ようと毎年50万人が訪れ、エコツーリズムの拠点にもなった。

   さて、3羽のひなの誕生が能登にコウノトリが定着するきっかけとなるかどうか。能登の自治体では同じく国の特別天然記念物トキの野生放鳥の候補地として環境省に名乗りを上げている。8月上旬をめどに3ヵ所程度を選定し公表され、2026年度以降の放鳥となる(5月10日付・環境省公式サイト)。3ヵ所の一つに選ばれれば、将来コウノトリとトキが能登の空に舞う日が来るのではないか。世界農業遺産(GIAHS)でもある能登の里山に。夢のような光景だ。   

(※写真・上は豊岡市役所公式サイト「コウノトリと共に生きる豊岡」動画より、写真・下のトキは1957年に岩田秀男氏撮影、場所は輪島市三井町洲衛))

⇒12日(日)午後・金沢の天気    はれ

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☆トキより先にコウノトリがやって来た

2022年06月11日 | ⇒トレンド探査

   これは絶妙なタイミングと言えるかもしれない。きょうの各紙朝刊によると、能登半島の志賀町で営巣していた国特別天然記念物のコウノトリのつがいからひな3羽が誕生した=写真・上=。石川県内でのひなの誕生は1971年に日本で野生のコウノトリが絶滅して以来初めて。能登の自治体は同じく国の特別天然記念物トキの野生放鳥の候補地として環境省に名乗りを上げているので、コウノトリのひな誕生は追い風になりそうだ。

   記事によると、ひなを育てているつがいは足環のナンバーから、兵庫県豊岡市で生まれたオスと、福井県越前市生まれのメスと分かる。4月中旬に近隣住民が電柱の上に巣がつくられているの発見し、町役場がメスが卵を抱いている様子を定点カメラで確認した。5月下旬には親鳥がひなに餌を与え、3羽が巣から顔を出した。ひなが順調に育てば、8月上旬ごろに巣立つという。

   コウノトリは江戸時代までの身近に見られた鳥だった。留鳥として日本に定住するものがほとんどだった。明治以降、餌場となる湿地帯や巣をかけることのできる大きな木が少なくなったこと、農薬や化学肥料の使用によって餌となる水生生物が減ったことなどが災いし、1971年に野生のものが絶滅した。その後、人工繁殖・野生復帰計画は豊岡市にある兵庫県立コウノトリの郷公園が中心となって担い、中国や旧ソ連から譲り受けたコウノトリ(日本定着のものと同じDNA)を元に繁殖に取り組んだ。現在国内での野外個体数は244羽が生息する(5月31日付・兵庫県立コウノトリの郷公園公式サイト)。

   もう14年も前のことだが、能登半島の先端・珠洲市の水田にコウノトリ=写真・下=が飛来していると土地の人から連絡をもらい、観察にでかけた。3時間ほど待ったが見ることはできなかった。そのとき聞いた話だ。この水田地帯には多くのサギ類もエサをついばみにきている。羽を広げると幅2mにもなるコウノトリが優雅に舞い降りると、先にエサを漁っていたサギはサッと退く。そして、身じろぎもせず、コウノトリが採餌する様子を窺っているそうだ。ライオンがやってくると、さっと退くハイエナの群れを想像してしまった。堂々したその立ち姿は鳥の王者を感じさせる。(※写真は2008年6月・珠洲市で坂本好二氏撮影)

⇒11日(土)午後・金沢の天気      くもり

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★参院選が間近、有権者が戸惑うこと

2022年06月09日 | ⇒トレンド探査

   きょう金沢市内で、きたる参院選挙での候補者ポスターの掲示板が設置されているのを見かけた=写真=。選挙日程は閣議決定されていないが、今月22日に公示され、7月10日が投開票の見通しとメディア各社が報じている。掲示板が設置されているのに気が付いたのは金沢歌劇座のバス停の付近。きのう夕方通ったときはなかったので、設置作業はきょう始まったのだろう。選挙が動き始めた。

        ことし石川県内は選挙ラッシュだ。3月13日は県知事選と金沢市長選、そして同市議補選のいわゆる「トリプル選挙」、4月24日は参院石川選挙区の補欠選挙、5月22日は能登半島の先端で珠洲市長選が行われた。そしていよいよ国政選挙なのだが、参院選に対する有権者の関心度は高いだろうか、投票行動はどう動くのか。

   実は、4月24日の参院補選の投票率は惨たんたるものだった。参院比例区の自民党議員が選挙区補選に鞍替えで立候補し、立憲民主や共産など野党の新人3人を破って当選したが、投票率はこれまで最低の29.9%、大票田の金沢市では22.9%だった。先の知事選(3月13日)61.8%と比べると、その半数にも満たない。この投票率の低さをどう読むか。民意に潜む本音をあえて語れば、議会制民主主義は国家の基本なのだが、「はたして参院は必要なのか」と参院無用論の声もあるのではないだろうか。

   参院は「良識の府」と学校で教わるが、タレント議員の巣窟と化しているという違和感があるのではないだろうか。参院比例区で2001年から非拘束名簿式が採用されていて、候補者の氏名を書いても政党名を書いても、その政党の得票となるので、知名度のあるタレントや著名人を候補者に擁立するケースが目立つようになった。一方で、志を抱いたタレント議員の存在は政治を身近に感じさせてくれるという前向きの意見もある。

   もう一つ。これも学校で教わるが、「衆院の優越」だ。法律案が衆院で可決し、参院がこれと異なった議決をした場合、衆院において出席議員の3分の2以上で再び可決すれば法律となる。予算案も最終的に衆院の議決が国会の議決となる。だったら、国会は衆院一院制でよいのではないかと考えてしまう。ただ、衆院解散中は参院も同時閉会となるが、国に緊急事態が生じた場合は、内閣の求めにより参院の緊急集会が開かれ、国会の機能を果たすことになる。そろそろ、賛否を含めて参院の有り様について議論する時期に来ているのではないだろうか。

⇒9日(木)夜・金沢の天気    くもり   

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☆撮影禁止の威風堂々「百万石行列」

2022年06月08日 | ⇒トピック往来
   新型コロナウイルス感染拡大の影響で3年ぶりの開催となった「金沢百万石まつり」(今月3-5日)が盛り上がって無事終わり、市民の一人として、めでたし、めでたしと思っていたが、ある問題が浮上している。メイン行事の百万石行列(4日)が行われた際、主役の前田利家役の竹中直人とお松の役の栗山千明の2人のタレントに対し、撮影禁止の札を持った数人の係員が大声で「写真を撮らないでください」と呼びかけていたようだ。自身は行列は見に行かなかったのでその場面は見ていない。
 
   いまの時代、沿道ではスマートフォンを掲げて写真を撮る人が多く見られる。これはごく普通の光景だ。わざわざ沿道に来てパレードを見学に来た観衆とすれば、見せ場を撮るなというのは解せないだろう。ツイッターでも相当な数が上がっている。「2022年6月4日の3年ぶりに開催された #百万石まつり 印象に残ったのは撮影禁止とSNSの投稿禁止を高らかに叫ぶスタッフの声でした、とても残念な印象だけが残った。周りので見てる方も困惑してた」(7日付)など違和感の声だ。
 
   金沢百万石まつり実行委員会の公式サイトをチェックすると、5月28日付で「百万石行列 観覧の方へ撮影・録画に関するお願い」と題して、「前田利家公役(竹中直人氏)、お松の方役(栗山千明氏)の肖像権保護のため写真撮影・録画及びSNSへの投稿をご遠慮ください」とある。さらに、31日付では「百万石まつり写真コンテストについて」と題して、「昨今、無断でSNSにアップロードするなどの肖像権に関するトラブルが多発しているという意見があることを受け、実行委員会として関係者等と調整した結果、中止の判断にいたりました」。屋外の公道をパレードするタレントに対し、撮影・録画を禁止し、さらに写真コンテストも中止の措置。前回2019年までは可能だったことがなぜ禁止に。

   そもそも、タレントの肖像権はどういう扱いなのか。いわゆる「人格権」としての肖像権はタンレント、有名人、一般人に関わらず誰にでも一律に認められている権利だ。ただ、「財産権」あるいは「パブリシティ権」としての肖像権は一般人には認めらず、タレント・有名人のみに認められている権利となる。では、街角でたまたまタレントをみかけて撮影し、その写真をSNSにアップしたとして、タレントが訴えるだろうか。多くの場合、タレント自身は「有名税」で済ませ、訴えたりはしない。タレント側としても裁判にかかる時間や経費、裁判所への出頭義務などから判断して、自分の写真を無断掲載されたからといって、その都度、告訴はしない。
 
   むしろ、タレントの肖像権をめぐるトラブルはメディアとの間のトラブルだ。社会的反響が大きい場合、肖像が無許諾で使用されることがある。しかし、メディア側は肖像権よりも「国民の知る権利」を背景に公に報道することの方が優越的利益ととらえて掲載する。

   観衆が集まる公道での公の行事でタレントの撮影禁止は誰もが納得いくだろうか。ツイッターで
金沢市議の広田みよ氏が市役所の担当者にこの件を質問した際の回答を載せている。「昨今、無断でSNS投稿するなど肖像権に関するトラブルが多発しているという意見を踏まえ、百万石まつりでは同種のトラブルはこれまで起こってないが、実行委員会として関係者等と調整した結果、お二人の肖像権保護のため、撮影・録画及びSNS投稿をご遠慮いただくこととした」
 
   これまでトラブルがあって、今回はやむなく撮影禁止にしたというのであれば理由がつく。それもないのになぜか。得体の知れない大きな問題がそこに潜んでいたのか。来年も同じ措置が講じられるのであれば、百万石行列は体育館、あるいは県立野球場でクローズの状態で撮影禁止の念書にサインした観衆のみ入れるということになるのではないか。(※写真は、ことしの第71回金沢百万石まつりのPRポスター)
 
⇒8日(水)午後・金沢の天気     はれ
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