自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「国連軍縮会議」が吹っ飛ぶとき

2022年06月07日 | ⇒ニュース走査

   IAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長の発言は国際世論を喚起する、ある意味で絶妙なタイミングだった。NHKニュースWeb版(7日付)によると、グロッシ氏は本部があるウイーンで理事会を開き、北朝鮮のプンゲリにある核実験場の坑道の1つが再び開いた兆候がみられると指摘した。さらに、記者会見で、その事実は衛星写真から確認していると明らかにし、「専門家の分析はこの活動は過去の核実験とも似ているというものだ」と核実験が行われる可能性に懸念を示した。

   IAEA公式サイト(6日付)=写真・上=にグロッシ氏のコメントが掲載されている。以下(意訳)。

豊渓里(プンゲリ)の核実験場では、おそらく核実験の準備のために坑道の1つが再開されたという兆候を観察した。核実験の実施は、国連安保理決議に違反し、深刻な懸念の原因となる。寧辺(ヨンビョン)のサイトでは活動が続いている。原子炉の運転と一致する継続的な兆候がある。ここにある放射化学研究所では、過去の廃棄物処理や維持管理活動中に観察されたことと一致する活動の兆候がある。遠心分離機濃縮施設の別館に屋根が設置されている。軽水炉付近では、2021年4月から建設中だった新棟が完成し、隣接する2棟が着工しているのが観測された。1994年に建設が中止された原子炉では、建物の解体と、他の建設プロジェクトで再利用される可能性のある一部の資材の移動が観察された。降仙(カンソン)複合施設と平山(ピョンサン)鉱山濃縮工場での活動の兆候が進行中だ。

   豊渓里では2006年10月9日に最初となる核実験が行われ、2017年9月3日までに6回行われている=写真・下=。長崎大学核兵器廃絶研究センター公式サイトによると、6回目のとき、北朝鮮は「ICBMに搭載可能な水爆実験に成功」と発表していた。核実験の地震規模としては最大でマグニチュード6.3(米国地質調査所)で、メガトン級の大規模な爆発威力だった可能性がある。今後北朝鮮がICBMに搭載可能なレベルにまで核弾頭を小型化させることは時間の問題である、と分析される。

   北朝鮮はこれまでICBMの発射実験を繰り返してきた。それに搭載する小型核弾頭が完成すれば、核・ミサイルによる打撃能力は完成形に近くづく。最高権力者としては、核実験を一刻も早く実施したいのではないか。NHKニュースWeb版(7日付)によると、アメリカ国務省のプライス報道官は6日の記者会見で、北朝鮮が核実験を行う可能性について質問され、「われわれは北朝鮮が近日中に7回目の核実験を行おうとしているのではないかと懸念している」と述べた。

   一方で、国連軍縮会議が今月2日、スイス・ジュネーブで開かれ、その議長国に北朝鮮が就いた。65ヵ国が参加して核軍縮などについて話し合うこの会議は、各国がアルファベット順に毎年6ヵ国が会期中持ち回りで4週ずつ議長国を務めていて、11年ぶりに北朝鮮が議長国となった。就任は5月30日付で、今月25日まで議長の座にある。

   開幕した軍縮会議で冒頭、G7を含む48ヵ国を代表してオーストラリアの代表が、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させていることについて「軍縮会議の価値を著しくおとしめる無謀な行動に深い懸念を抱く」と批判し、中国やロシアなどは北朝鮮を擁護する発言を行い、非難の応酬で実質的な議論は行われなかった。今回のIAEA事務局長の発言は北朝鮮批判に拍車をかけることになる。「議長国が軍縮の義務を破っている、議長の資格はない」として強烈なボイコットが運動が起きるかもしれない。さらに、この間に北朝鮮が核実験を行えば、前代未聞の事態となるだろう。軍縮会議の存在意義そのものがないとして解体運動へと展開するのではないか。

   そもそも、いま軍縮会議自体が機能不全に陥っている。1996年に包括的核実験禁止条約(CTBT)を採択したがいまだに発効されていない。国連安保理を含めて国連の矛盾が露わになってきた。

⇒7日(火)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

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☆「デフォルト国家」のあがき:2題

2022年06月06日 | ⇒ニュース走査

   ウクライナに侵攻しているロシアのプーチン大統領のこの発言は悪あがきの強弁ではないだろうか。BBCニュースWeb版(6日付)=写真=は「Ukraine war: Putin warns over Western long-range weapons」の見出しで、もし欧米諸国がキーウに長距離兵器を送れば、ロシアはウクライナで攻撃する標的のリストを拡大するだろうと、プーチン大統領が国営テレビのインタビューで警告したと報じている。

   もともと、欧米諸国のウクライナ支援は防衛を条件としている。アメリカは最大70㌔離れた目標に命中できる精密誘導ロケット弾を発射するシステム(HIMARS)を供与する計画だが、ロシア国内を攻撃しないという保証をゼレンスキー大統領から得た後で提供する。ドイツもロシア軍の空爆から都市全体を守ることを可能にする防空システム「短距離空対空ミサイル」を提供する(同)。

   BBCの記事を深読みすると、逆にロシアの国内状況が見えてくる。軍事侵攻はきょうで103日目だ。戦争の長期化で苦しくなっている。ロシア国債は国際金融市場でデフォルトとみなされており(6月2日付・NHKニュースWeb版)、金融市場での信用失墜で戦費の調達や軍隊組織そのものが行き詰まっているに違いない。ウクライナに進軍するも、道路に埋められた地雷をチェックする装備が不足しているため多大な損害が出ていて、派兵を拒否するロシア兵が増えている(5月23日付・同)。

   プーチン氏の強弁は国内の経済や軍内部の乱れへのあせりを反映しているのかもしれない。ロシアが脅威を受けた場合はその武器を供与した国を標的にするとは、偽旗作戦の格好の言い分だろう。確たる証拠がなくても、「ウクライナ軍がHIMARSを我が国に撃ち込んだ」とロシアが言い張れば、アメリカに対する攻撃の条件が整う。敵を新たにつくることで国内を引き締めるのは常套手段だ。

   きのう5日午前9時過ぎ、北朝鮮は弾道ミサイルを相次いで発射した。防衛省公式サイト(5日付)をチェックするとミサイルは少なくとも6発。落下したのは北朝鮮東側の沿岸付近および日本海であり、日本のEEZ外だった。きょうの北朝鮮の労働新聞Webなどを検索したが、その記事が見当たらない。5月25日にICBMを含む3発を発射しているが、これも国営メディアは報じていない。これまで発射の成功や核・ミサイル能力の開発を大々的に報じてきたのに、5月4日の弾道ミサイル発射以降は沈黙が続いている。この沈黙は何を意味するのか。

   前日4日に米韓合同演習が行われ、原子力空母「ロナルド・レーガン」が加わった。5日の弾道ミサイルはこれを牽制する狙いがあったとみられるが、それだったらなおさら公表するはずだ。おそらく、国家自体がデフォルト状態に陥っているのではないか。「建国以来の大動乱」と称される新型コロナウイルスとみられる発熱症状の拡大で国全体がロックダウンとなり、それにともなう食糧難と飢え。このような状況下にあるとすれば、国営メディアが弾道ミサイルを報じても、人々は「ミサイルより、食べ物よこせ」とあがき叫ぶだろう。最高権力者はそれが怖いのではないか。

⇒6日(月)夕方・金沢の天気    あめ  

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★さりげないディスタンス茶席に和の心

2022年06月05日 | ⇒メディア時評

   新型コロナウイルス禍の影響で3年ぶりの開催となった金沢の「百万石まつり」(3-5日)に出かけた。このイベントは加賀藩初代の前田利家公が金沢城に入城するのを再現する「百万石行列」がメインで行われ、市内7ヵ所で茶道の各流派が茶席を設ける「百万石茶会」が開催される。出かけた先は7つの茶席の一つの「旧中村邸」。造り酒屋の一族の旧邸宅で、昭和3年(1928)に建てられ、切妻造りの建物は市の指定保存建造物でもある。

   茶席は2階の27畳の大広間。床の間に掛け軸「乕一声清風起(とらいっせい   せいふうおこる)」が掛けられていた=写真=。虎の鳴き声で一陣の清風が吹いて山や海の景色が変わる例えのように、百万石祭りが行われることでコロナ禍で沈んでいる金沢に再びにぎわいが戻ることを期待するという思いが込められているそうだ。茶席の亭主の解説を聞きながら薄茶をいただく。

   コロナ禍での注意も怠りはなかった。参加者の入れ替えなどで人数を制限していた。お菓子とお茶をいただく以外はマスクを着用し、間隔を空けて一定の距離を保つ。これまでのように1つの畳に3人か4人ではなく、「半畳に1人」という間隔を空けて座る。誰かの指示で着座するというより、参加者が自然とソーシャルディスタンスを保ちながら、席入りしていたので心得たものだ。

   3年ぶりの百万石茶会ということもあって、目立ったのは和服姿だった。見たところ女性の8割は和装だった。コロナ禍で和服を着る機会が少なかった。参加者は久しぶりで和の装いを楽しみ、そして茶道を満喫したのではないだろうか。

⇒5日(日)夜・金沢の天気    くもり

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☆いよいよ「少子化は国難」のステージに

2022年06月04日 | ⇒ニュース走査

   少子高齢化が進んだ地域集落でよく見かける光景、それは老人が買い物袋を携えて一人でとぼとぼ道を歩く姿だ。これを見て、健康のために歩いて買い物か、と前向きに考えなくもないが、なぜか後ろ向きに捉えてしまう。独り暮らし、高齢のため運転免許を返上、同乗して買い物に行く仲間はもういなくなった、バス運行の回数が少なくなった、地域にあった乗り合いタクシーが廃業してしまった。そして思うことは、これは日本の未来の光景ではないのか、と。

   きょうの各紙朝刊が一面のトップで、2021年に生まれた子どもの人数(出生数)は81万1604人で、前年より2万9231人(3.5%)少なく、明治32年(1899)に統計を取り始めて以降で最も少なくなったと、厚労省「人口動態統計」(3日発表)を報じている。1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は2021年は1.30で、前年を0.03ポイント下回っている。

   国立社会保障・人口問題研究所が2017年7月に発表した「日本の将来推計人口」では2021年の「合計特殊出生率」が1.42、出生数は86万9千人(中位)と算出されていた(4日付・朝日新聞)。実際は出生率1.30、出生数81万1604人だったので、少子化がさらに進んだと言える。新型コロナウイルス下で結婚や妊娠を控える傾向にあったことも想像に難くない。が、このままでは人口減少の加速に歯止めがかからない。

   少子化が進んだ原因は何だろう。厚労省「人口動態統計」をチェックすると、平成7年(1995)はもっとも多く出産した年齢は25-29歳だったが、同17年(2005)以降は30-34歳となっている。これは、女性の初婚年齢が高くなっているせいもあるだろう。ちなみに平成7年は26.3歳だったが、現在(令和2年統計)は29.4歳と3年余り「晩婚化」が進んでいる。

   さらに、夫婦とも仕事に就いていて、出産・子育てを両立させるには産休や育休の取りやすい職場環境やタイミングを見計らう必要もあるのだろう。そして、出産にかかる費用も考慮しなければならない。「出産育児一時金」は現在42万円支給されるのが、出産費用は増加傾向で「足りない」という声も周囲の人から聞いたことがある。共同通信Web版(5月26日付)によると、政府は出産育児一時金を増額する方向で検討に入り、今月中にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に反映させるようだ。

   あのEV大手テスラの経営者、イーロン・マスク氏が5月8日付のツイッターで「Japan will eventually cease to exist.」と書き込み物議を醸した。出生率が死亡率を超える変化がない限り、日本はいずれ消滅する、それは世界にとって大きな損失だ、と。日本の総務省が発表した2021年の人口統計で、過去最高の64万4000人減少との記事についてのコメントだった。世界の著名人も注視する日本の少子化現象、いよいよ「少子化は国難」との位置付けで対策を打つべきときが来た。日経新聞など各紙が一面で取り上げることそのものに危機感が漂っている。

⇒4日(土)夜・金沢の天気    はれ 

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★「針のむしろ」国連軍縮会議の議長国は北朝鮮

2022年06月03日 | ⇒ニュース走査

        国連の会議がまた大荒れに。NHKニュースWeb版(3日付)によると、国連軍縮会議が2日、スイス・ジュネーブで開かれ、その議長国に北朝鮮が就いた。65ヵ国が参加して核軍縮などについて話し合う軍縮会議は、各国がアルファベット順に毎年6ヵ国が会期中持ち回りで4週ずつ議長国を務めていて、11年ぶりに北朝鮮が議長国となった。

   会議の冒頭、G7を含む48ヵ国を代表してオーストラリアの代表が発言し、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させていることについて「軍縮会議の価値を著しくおとしめる無謀な行動に深い懸念を抱く」と批判。日本の梅津公使参事官も「北朝鮮は大量破壊兵器や弾道ミサイル計画に資金を充てることで、すでに悲惨な人道状況をさらに悪化させている」と非難した。これに対して議長を務める北朝鮮の大使は「いかなる国も他国の政策を批判し、干渉する権利はない」と反発した。また、中国やロシアなどは北朝鮮を擁護する発言を行い、欧米や日本などとの間で非難の応酬となって、実質的な議論は行われなかった(同)。

   軍縮は国連の役割そのものだ。国連憲章は、総会と安全保障理事会の双方に具体的な責任を委託している。そして、軍縮条例をまとめるのが軍縮会議だ。これまで、核兵器不拡散条約(NPT、1968年)、生物兵器禁止条約(BWC、1972年)、化学兵器禁止条約(CWC、1993年)、包括的核実験禁止条約(CTBT、1996年)などの重要な軍縮関連条約を作成。国連総会で採択された。各国による署名と批准で発効するが、CTBTについては核兵器保有国を含む44ヵ国の批准が完了していないため、26年経ったいまでも未発効の状態だ。

   さらに、CTBT以降、軍縮会議は機能不全に陥っている。外務省公式サイト「ジュネーブ軍縮会議の概要」によると、軍縮会議の議題は「核軍備競争停止及び核軍縮」「核戦争防止(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約を想定)」「宇宙における軍備競争の防止」など8つあるものの、実質的交渉や議論をほとんど行っていないのが現状だ。

   条例を作成し、総会で採択されたものの、核保有国などが批准しないため未発効の状態が続いているが、北朝鮮は批准の前段階である署名すらしていない。さらに、ミサイル発射と核実験で国連安保理から制裁措置を受けていても、ICBMの発射を繰り返している。4週間の議長国とは言え、北朝鮮は今後も各国から突き上げられ、針のむしろだろう。

(※写真は、現地時間6月2日にスイス・ジュネーブで開催された国連軍縮会議。天井画はスペインを代表する現代芸術家ミケル・バルセロの作品「Room XX」=国連本部公式サイトより)

⇒3日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

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☆「空間識失調」という自衛隊機の墜落原因

2022年06月02日 | ⇒ニュース走査

   事故から4ヵ月、その原因が発表された。1月31日、航空自衛隊小松基地を離陸したばかりのF-15戦闘機が、西北西5.5㌔の日本海に墜落し、パイロット2人が亡くなった。戦闘機は「飛行教導群」と呼ばれる部隊の2人。戦闘機部隊を教育する任務に当たり、パイロットの中でも精鋭の2人だった。事故は、戦闘機から異常を知らせる無線連絡やパイロットが脱出する際に発せられる救難信号は感知されていない。一瞬の出来事だった。

   墜落の原因について、航空自衛隊公式サイトできょう2日付のプレスリリースが掲載されている。それによると、事故原因について、「(1)事故当時の気象・天象条件及び離陸直後の姿勢や推力の変更操作等の影響を受け、自らの空間識に関する感覚が実状と異なる、空間識失調の状態にあった可能性が高い」「(2)編隊長機を捕捉するためのレーダー操作等に意識を集中させていたため、回復操作が行われるまでは、事故機の姿勢を認識していなかった可能性がある」と2点をあげている。プレスリリースの添付されたイラスト=写真=では、墜落の11秒前に高度が低下し始め、墜落の2秒前になってパイロットは異常な姿勢から回復するための操作をしたものの間に合わず墜落した。

   気になるのは「空間識失調」という文字だ。Wikipedia「空間識失調」によると、「主に航空機のパイロットなどが飛行中、一時的に平衡感覚を失う状態のことをいう。健康体であるかどうかにかかわりなく発生する。機体の姿勢(傾き)や進行方向(昇降)の状態を把握できなくなる、つまり自身に対して地面が上なのか下なのか、機体が上昇しているのか下降しているのかわからなくなる、非常に危険な状態。しばしば航空機の原因にもなる」とある。

    2019年4月9日、航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが三沢基地(青森県三沢市)を飛び立ち太平洋上で消息を絶った。これについてもパイロットが「空間識失調」に陥り、墜落した可能性が高いとされている(同

   航空自衛隊では再発防止策として、空間識失調に関する教育・訓練を強化するほか、墜落しかけた戦闘機が自動的に回避動作をとるシステムの調査研究をするとしている(2日付プレスリリース)。

⇒2日(木)夜・金沢の天気    はれ

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★いまそこにある危機「線状降水帯」とSDGs

2022年06月01日 | ⇒トレンド探査

   季節は移ろい、6月の梅雨の時節に。梅雨はしっとり雨が降るという印象だったが、近年は「激しい雨」のイメージだ。積乱雲がどんどんと列ををなして留まって、激しい雨を降らせる。この「線状降水帯」という言葉を自身が意識したのは2017年8月、北陸で1時間に80㍉の猛烈な雨をもたらしたころからだ。

   気象庁はこれまで線状降水帯が「発生」した場合に「顕著な大雨に関する情報」を発表していたが、きょう1日からは、線状降水帯が発生する「可能性が高まった」場合、予測の段階で発生の半日前から6時間前に気象情報を発表することにした(気象庁公式サイト・31日付ニュースリリース)。全国の大学など研究機関と連携して、メカニズム解明に向けた高密度な集中観測や、スーパーコンピュータ「富岳」を活用したリアルタイムシミュレーション実験を実施するという。

   さらに、今月30日からは地図上に5段階で色分けして表示する「キキクル(危険度分布)」で、5色を警戒レベルの色と統一して、紫は「レベル4の全員避難」、黒は「レベル5で災害切迫」。紫は早めの避難行動の呼びかけになる。しっとり梅雨もいつの間にか怖くなったなものだ。

   先述のように、気象庁が大学など研究機関が連携して集中観測を行ったり、早めの避難行動の呼びかけを行う背景には、国連が掲げるSDGs(持続可能な17の開発目標)の13番の目標「気候変動に具体的な対策を」があるのだろう。天気情報をテレビで視聴する側とすると、警戒レベルの気象情報が出ていないからまだ安心だと認識してしまう。実際に情報が出たときは大気の状態が不安定で、非常に危険な状態にあるケースもままある。

   線状降水帯による豪雨の被害は毎年のように起きている。「いまそこにある危機」を集中観測やスーパーコンピュータで大胆に切り込んで予知する。一歩も二歩も踏み込んだ気象情報に期待したい。

⇒1日(水)夜・金沢の天気    くもり

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