頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『日本辺境論』内田樹

2010-04-05 | books

「日本辺境論」内田樹 新潮社 2009年

ウチダ先生は常に、<そんな風に考えた事がなかったけど確かにそうだよな>をたくさんくれる。

本書もそう。日本=辺境であるとしたうえで、だからこう考えるのは当然であるとか、だからこう考えないということをちょっとずつ確かに語る。【】内私の独白

・丸山真男の言葉を借りて、日本人は「きょろきょろ」するのがその特質であるのだから、それで良い。いや、良いと必ずしも言っていないのでそれはそうなのだということ。【子供の頃きょろきょろしちゃいけませんと叱られたけどそれで良かったのかな?】

・アメリカにはアメリカはこうであるというアイディアがあるが日本にはない。アメリカがおかしくなったら建国当時の精神の立ち戻ればいいけど、日本にはそもそも建国云々がなかったのだから、戻るべき初期設定がない【これには目からウロコ】

・日本はコンテンツよりマナーを重んじる【この箇所は大変面白かった。私自身が超日本人的だと自覚】

・武士道は努力と報酬の相関を行動の根拠にしない。それは学ぶ姿勢にも大事【何かいいことがあるからだから頑張るなどと下賤な考えを持たない。のは美しいと思う】

・日本人はこうであるという定型はない【ふむ。サムライでもないし、オタクでもないし、イチローでもないし・・・】



辺境に住んでいるからと言って、偏狭で偏狂であるとは限らないのだ。なんだ、このまとめかた。








日本辺境論 (新潮新書)
内田 樹
新潮社

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大哺乳類展に行ってきた

2010-04-04 | travel

上野の国立科学博物館で開催中の大哺乳類展に行って来た。6月13日までは陸、以降は海のなかまたちを展示するそうだ。

休日3時ごろに行ったがそこそこ混雑しているので、平日か朝早い方が見やすいかも知れない。

アロットオブ剥製である。















お!猫バスだ!猫バスってイリオモテヤマネコからきてたんだ。











このようなキッチュな展示もある。小学生らしい女の子とその母親がじっと見ていた。それも何かの教育なのだろうか。

全体としてよくまとまりつつ、子供から大人まで楽しめるいい博物展だったと思う。

オフィシャルサイト

特にオチもなく失礼する。



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リサとガスパールぎんざへいく

2010-04-03 | days

ソニービルの壁に巨大な沢尻エリカが。

見上げて、「別に」と言っておいた。

中に入ると、人だかりが。リサとガスパールの映像がちっこい機械の中で見られるんだけど、360度どこから見てもリサガスを見る事が出来る(見れるという「ら」抜き言葉はいまだに私は使えない)のだ。








リサガスはパスコのキャラクターだとばっかり思っていたら、どっか欧産のれっきとしたあれだった(あれってなんだよ?)フランスの絵本だった。白人と黒人のコントラストによって、人種差別と奴隷貿易の歴史に楔を叩き込むとかいうようなキャラでもないようだ。

とことこと歩いている様は、かわいいと言えばかわいい。少なくとも、東京じゃないのに東京を名乗る御殿の盟主ねずみ様よりかわいいと思う。

リサとガスパール ぎんざへいく 4/4まで。


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『海辺のカフカ』村上春樹

2010-04-02 | books

「海辺のカフカ」村上春樹 新潮社 2002年

ムラカミハルキ作品読破キャンペーン期間中。戦時中、何か不思議な事があって記憶を消され字も読めなくなったナカタさんは猫と話しが出来るので猫探しを生業にしている。父の元から家出をするカフカ15歳。殺人事件と空から魚が降って来る事件。西へ西へと四国へ向かうカフカ、そしてヒッチハイクするナカタさん。ナカタさんとカフカがクロスすると・・・

いやいやいや。面白いという言葉では表現できない。「いい」とだけしか言えない。ここ数ヶ月で何冊もムラカミ作品を読んで強く思ったのは、難しい。いや、今は難しくないんだが、こんなのを中学生か高校生のときに読んでもちっとも理解できなかったろう。理解できないから面白くない、だから途中で投げ出していただろう。なんて事を通して思うのは、みんな頭いいんだなという事。こんな意味を受け止めにくい作品がいいという若者たちはみな頭がいい。少なくとも私より。うんうん。ひとには言った事がないんだけれど、ひっそりと内心で私は結構頭がいいんじゃないかと思っていた。しかし、大きな間違いだった。誰かに言う前に気づいて良かった。

オイディプス王のエピソード(筒井康隆ならエディプスですな)とかベルグソン、ピエール・フルニエなど挿入されている事柄も高尚というか何というか。下世話に下方面を這い回っている私の身には少し恥ずかしい。というのは嘘だけど、昔読んだらきっとシャラクサイなーと思ったに違いない。

私はムラカミハルキを堪能出来るくらいにやっと大人になったのだなあ。

人々がなぜ良い良いと言うのかよく知らない。研究本など読んだ事がないし、今後もたぶん読まない。想像するのなら、<あーこれなんだよ!どうして俺の気持ちが分かるんだ!><あたしの内心抱えている問題って特殊だと思っていたのにどうしてハルキは・・・><ずっと前から感じていたんだけど、特に言葉で表現しようと思っていなかった。でもハルキにそう言われるとそうそう。そうなんだよなって思うよ>というような事ではなかろうか?やっぱり私の想像だから間違っているか。そうかそうか。


非常に気になった、あるいは気に入った部分を以下に引用。多少てにをはを無断で変更している部分がある。また【】内は私の独白


・プラトンの「饗宴」のアリストパネスの話によると、昔三種類の人間がいた。男男と男女と女女。神様が刃物を使って半分に割ってしまった。以来人間は片方を探して這い回るようになった(上巻65頁)【それってこの話(記事150本目)に似てる】

・ナカタさんは存在を一種の「通電状態」に(上巻144頁)【頭のスイッチを切るのかふむ。①常に通電状態にいるように見える人がいる。空気が読めないとも言えるし、のほほんとしてるとも言えるし頼りないとも言える ②その人のようにはなりたくない ③しかし「通電状態」になりたいとしょっちゅう思う】

・この次ほんとうに困ったときのために好意をとっておいて(上巻162頁)【なんてうまい表現だ】

・ゲーテが言っているように世界の万物はメタファーだ(上巻183頁大島さん曰く)【我々にとって万物はメタファー以上のモノでも以下のモノでもなく、我々の関与・関心・意識に外にある物は存在しない事と同様である。なんてな】

・佐伯さんは普通じゃない。ありきたりの基準ではものを考えないんだよ(上巻185頁)【私もそういう意味では普通じゃなくありたい。昔は他の人と違うように生きたいと思っていたけれど、そう願って行き着く先は他の人と同じだった。なんてな】

・シューベルトのピアノ・ソナタをユーノス・ロードスターで聴きながら大島さんは「質の良い稠密な不完全さは人の意識を刺激し、注意力を喚起してくれる(だから運転中に聴く)と言う(上巻192頁)【なぜ不完全なモノに自分が惹かれるのかそのヒントを見つけた感じがする。なんてな】

・さらに大島さんは「この世界において、退屈でないものには人はすぐに飽きるし、飽きないものはだいたいにおいて退屈なもんのだ。僕の人生(ある種の血友病)には退屈する余裕があっても、飽きている余裕はない。たいていの人はそのふたつを区別することができない(上巻193頁)【おーおー。なんかぐるぐる巻いていたモノがまっすぐピンと立ったような感じがする。頭に一本ピーンと立ったぞ。あんてな】

・イェーツが書いている。In dreams begin the responsibilities - 想像力のないところに責任は生じないのかも知れない。このアイヒマンの例に見られるように(上巻227頁)【こういう部分があるからムラカミハルキは凄いのかも。今私に近い所で発生しているやや大きな問題があるのだが、それの中心にいる人物には何かが欠けているとここ1年ほど思っていた。欠けているモノとは想像力なのだ。そう言うことを言ったら・言わなかったら相手がどう思うか想像できないのだ】

・自然とはある意味で不自然なものだ。安らぎとはある意味威嚇的なものだ。(上巻265頁)【すごくそうだと思う】

・経験的なことを言うなら、人がなにかを強く求めるとき、それはまずやってこない。人がなにかを懸命に避けようとするとき、それは向こうから自然にやってくる(上巻266頁)【ああそうなんだよ。そうなんだよ。だとすれば何も望まなければ良いのか。何も望まないとはどんな人生なのだ】

・さくらさんは現実の世界に生きていて、現実の空気を吸っていて、現実の言葉をしゃべっている。さくらさんと話していると、自分がとりあえず現実の世界にちゃんと結びついているんだということがわかる。(下巻86頁)【嗚呼よく分かる。今の私は現実に生きていないような感覚に襲われることがある。日常的に触れ合う人たちも現実に生きていないような人ばかりだ。たった一人だけ私にとってのさくらさんのように私をこの世界につなぎ止めてくれている人がいる】

・田村カフカくん、あるいは世の中のほとんどの人は自由なんて求めていないんだ。求めていると思い込んでいるだけだ。すべては幻想だ。もしほんとうに自由を与えられたりしたら、たいていの人間は困り果ててしまうよ。覚えておくといい。人々はじっさいには不自由が好きなんだ。(下巻153頁)【先日知り合いに、要らないモノは何ですか?と訊かれたときに、自由と答えた。奇遇と言うべきか】

・人ってのは生きるために生まれてくるんじゃないか?そうだろう?それなのに生きれば生きるほど俺は中身を失っていって、ただの空っぽな人間になっていったみたいだ。そしてこの先さらに生きれば生きるほど、俺はますます空っぽで無価値な人間になっていくのかもしれない。そいつは間違ったことだ。そんな変な話はない。その流れをどこかで変えることはできるのだろうか?(下巻175頁)【うーむ。うーむ】






海辺のカフカ〈上〉
村上 春樹
新潮社

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海辺のカフカ〈下〉
村上 春樹
新潮社

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コメント (9)

店名にツッコンでください12

2010-04-01 | laugh or let me die



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