頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『夜の谷を行く』桐野夏生

2017-04-29 | books
連合赤軍によるリンチ殺人事件から40年。事件に関わった西田啓子はもう63歳。慎ましく一人淋しく暮らしている。すると連合赤軍のリーダー格の永田洋子が死んだとのニュースが。思い出す昔のこと・・・ 自分のせいで、不幸になった家族。殺された仲間たち・・・

うーむ。面白いかと問われると、面白くはなかったと答える。

ただどういう訳か心に刺さる。西田の内面に、同情とも違う、また親近感とも違う不思議な感情を覚えた。なんとも説明できない。

しかし、売れないだろうなー、とも思った。

夜の谷を行く

今日の一曲

本とは関係なく。テレビ番組「今夜くらべてみました」で見かけて、気になっていた。Charisma.comで「イイナヅケブルー」



ヒップホップやラップは基本的にあまり好きではないのだが、たまに例外が登場する。では、また。
コメント

店名にツッコんでください158

2017-04-27 | laugh or let me die
コメント (4)

『失踪者』シャルロッテ・リンク

2017-04-25 | books
イングランドの片田舎に暮らすエレインは、友人の結婚式のためにジブラルタルへ行こうとした。しかし霧でヒースロー空港から飛行機が飛ばない。困ったところで出会ったはマーク・リーヴという男性。親切にも自宅に彼女を泊めてくれ、翌日地下鉄まで送ってくれた。しかしその後、エレインはジブラルタルに来ることはなく、行方が分からなくなってしまった・・・ それから5年、ジブラルタルに住む、エレインの友達ロザンナは、過去の行方不明事件について調べることになった。連続殺人事件とエレインの件は関係があるのか・・・

こりゃ、たまらん。ものすごく好みだった。大好物だった。

シャルロッテ・リンクはドイツでは大ベストセラー作家だそうで、東野圭吾とか宮部みゆきのような存在らしい。また英国好きらしく、英国が舞台の作品を書くことが多いそうだ。

エレインの失踪の謎。二転三転する推理。たまらなく面白い。しかしそれだけじゃなく、登場人物の造形もいい。夫の連れ子とジブラルタルに暮らすロザンナ。妻を束縛する夫のデニス。定職につかず、あちこちの女性と関係を持つ、ロザンナの兄。エレインの兄で、性格に問題のある重度の障害者のジェフリー。そして何者からか逃げている謎のウエイトレス、パメラ。一癖もふた癖もある登場人物たちが、憂いのある物語を紡ぐ。

この作者の別の作品、読んでみたくなった。

失踪者 上 (創元推理文庫)
失踪者〈下〉 (創元推理文庫)

今日の一曲

本とは関係なく。80年代っぽい歌詞、メロディがたまらない。レキシで"KATOKU"



では、また。
コメント

『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』上原善広

2017-04-23 | books
元々肩が強かったが、集団スポーツよりも個人競技がいいと、高校からやり投げを始めた溝口のドキュメント。インターハイ6位、京都産業大学に進み、インカレで2位。足が遅いので腕力の力で投げていたがそういう力投げはいけないと指導されていた。しかし、ドタドタと助走して力投げして80メートル近く投げる選手の姿を見て、目から鱗が落ちた。それから「常識」のすべてを疑うようになり、独自のトレーニングを自分に課していく。ロス五輪に出場するが予選落ち。ソウル五輪に向けて、過酷なトレーニングの日々が始まる。ウェイトトレーニングが全てで、走ったりするのは付け足しに過ぎない。12時間ぶっ続けでウェイトをやって、2、3時間休んでまた12時間ウェイトをやったりする。(嘘やろ)そんな彼は、ソウル、バルセロナ五輪では活躍できたのか・・・

これは非常に面白かった。

唯我独尊の溝口のトレーニングの凄さ。ただがむしゃらなのではなく、ちゃんと理論に基づいている。

オリンピックではいい成績を残せなかったが、賞金の出るワールドグランプリシリーズではとてつもない成績を残す。やり投げのようなパワー種目で日本人が出したとは思えないすごい記録だ。

後にハンマー投げの室伏広治を指導する。彼をムキムキの体に改造したのは溝口だそうだ。

しかし、試合直前にタバコを吸い、練習の後は毎日飲み歩いて、マスコミ嫌い。まさに「無頼派」な溝口。著者が18年もかけて聞き取りした結果がこの本だった。

一投に賭ける  溝口和洋、最後の無頼派アスリート

今日の一曲

やり投げと言えば、投げやり。ヨコシマなDAY DREAM、なげやりなIRONYと歌う、氷室京介で「わがままジュリエット」



では、また。
コメント

『悪魔の星』ジョー・ネスボ

2017-04-21 | books
ノルウェーミステリー、刑事ハリー・ホーレシリーズのオスロ三部作(「コマドリの賭け」「ネメシス)の第三作。前作で相棒が殺されてしまい、腑抜けになってしまったハリー。相棒殺しについては、同じ署の刑事を疑っていて、その件については個人的な捜査を続けている・・・ 今回は連続殺人事件が中心のネタ。女性が殺され、指が切られ、そして星の形をしたダイヤモンドが遺体に。ハリーは容疑者にたどり着くがしかし・・・

うーむ。さすがジョー・ネスボ。面白い。

最初は入り込みにくく、テーマがなんだか分かりにくかった。しかし読み進めていけば、連続殺人事件と相棒殺し事件の二つの軸がはっきりしてきて、読みやすくなってくる。

「デュークエリントンがかつて、ピアノの調律師に完璧な調律はしないでくれと頼んだ話は聞いたことがありますか?」
「ないな」
「ピアノが完璧に調律されていると、音がよくないんですよ。悪いところがまったくないと、ちょっとした温かみとか、正真正銘の感じが失われて聞こえるんです」


悪魔の星 上 (集英社文庫)悪魔の星 下 (集英社文庫)

今日の一曲

悪魔の星。中島美嘉で"STARS"



では、また。
コメント

『ナイン・ドラゴンズ』マイクル・コナリー

2017-04-19 | books
LAの刑事ハリー・ボッシュシリーズ。もったいないので取っておいてるのに、ついまた読んでしまった。

中国系の店主が殺害される。ボッシュが犯人に迫っていくと、脅迫された。娘を預かっている、事件から手を引けと。元妻エレノア・ウィッシュとの間の娘、マデリンはエレノアと一緒に香港に住んでいる。その娘が誘拐されたのだ・・・ 事件解決と娘を奪還するために、ボッシュは香港に飛ぶ・・・

今回、ずっとシリーズを読んできた者にとって、驚くしかない事態が起こる。まさか・・・あの人が・・・

正直事件そのものよりも、登場人物に起きるそちらの方に気を取られてしまった。事件そのものはまあまあ(と言ってもシリーズのミステリー度はそもそも高い)という程度だけれど、全体としてはやはり面白い。

これから続きをゆっくりゆっくり読まねば。

ナイン・ドラゴンズ(上) (講談社文庫)ナイン・ドラゴンズ(下) (講談社文庫)

今日の一曲

本とは関係なく。リードボーカルの三浦大知はその後大活躍。AKINAは、ビビる大木と結婚、満島ひかりは主役級の女優へ。Folderで、「パラシューター」



では、また。
コメント (2)

『命売ります』三島由紀夫

2017-04-17 | books
自殺したいと思ったのに、死ねなかった男が、それなら「命売ります」という広告を出してみた。するとやって来るお客様たち・・・

三島由紀夫の本はほとんど読んだことがない。そんな中、異色作だと言うので読んでみたら、読みやすいしなかなか面白かった。

不思議な味わいは昔読んだ筒井康隆や星新一を少し思い出させてくれる。

死にたいと願う男にやって来るのは、幸福なのか、不幸なのか。(薄っぺらいレビューですまん。眠いのだ)

命売ります (ちくま文庫)

今日の一曲

本とは関係なく。スピッツで「ロビンソン」



いつ聴いても、名曲やー。しかしなぜロビンソンなのだろう。では、また。
コメント

店名にツッコんでください157

2017-04-15 | laugh or let me die
コメント (4)

『翔ぶが如く』司馬遼太郎 途中で挫折

2017-04-13 | books
明治維新後の政府のドタバタ、特に明治6年以降の西郷隆盛が拘る「征韓論」とその反対者との闘いを描く・・・

最初は面白かったのに、途中からダレてしまった。大久保たちが征韓論に反対で、結局西郷は下野するという場面まで3巻もかかった。余談が多くとにかく先に進まない。

結局3巻途中で投げ出してしまった。

いつかもう一度最初から読む時が来るかもしれないけれど、その前に未読の司馬作品(「妖怪」とか「菜の花の沖」とか「功名が辻」などを先に読むべきなんだろう。

翔ぶが如く〈1〉 (文春文庫)

今日の一曲

本とは関係なく、キンモクセイで、「二人のアカボシ」



なんて美しい曲なんだろうか。では、また。
コメント

『不発弾』相場英雄

2017-04-11 | books
元証券会社の営業マンだった男が、金融コンサルタントとなり、顧客企業の損失隠しを指南するという話。とだけ書くと身もふたもないけれど、それ以外は書かないでネタバレしない方がよいような気がする。彼を追いかけるキャリア警察官の捜査もなかなか良かったとだけにしておこう。

現実の事件を思い出させるような、「飛ばし」や、「仕組み債」、クレディ・スイス・ファースト・ボストンや東芝、オリンパスを連想させるような企業が出て来る。

企業がどうやって損失を隠すことができるのか興味がある人は必読。金融の裏側に興味がある人も必読。同一作者による「ガラパゴス」や「震える牛」を堪能した人も必読。面白かった。

不発弾

今日の一曲

本とは関係なく。SUPER BUTTER DOGで、「大安」



では、また。
コメント

『果鋭』黒川博行

2017-04-09 | books
警察を辞めた元刑事の二人が、パチンコ業界の裏側に食い込んで、大金を稼ごうとする、そんな話。「悪果」「繚乱」の続編。と言っても前作を読んでいなくても大丈夫。

シリーズを楽しんでいる者としては、相変わらずのクオリティをただ堪能するだけ。痛快、面白かった。

パチンコはやらないのだけれど、経営者が様々な違法な方法で儲けている様にちょっと唖然とした。

果鋭

今日の一曲

先日J-WAVEのTOKYO HOT 100を聴いていたら、60位にランクインしていた。Sheryl Crowで、"Halfway There"



では、また。
コメント

『パブリック・スクール イギリス的紳士・淑女のつくられかた』新井潤美

2017-04-07 | books
英国の小説を読んでいるとよく出て来る「パブリック・スクール」とはいったい何なのか。その歴史を解説してくれる本。なかなか面白かった。

貴族らのアッパー・クラスの子弟は家庭教師がつく。商業などで財をなしたアッパー・ミドル・クラスの子弟が通うのがパブリック・スクール。中高一貫の全寮制の学校という感じ(後に通学の学校も出てきた)金持ちが金を出して作ったそうだ。私立なのにパブリックというのは、私的な塾と区別しているからだと。

いじめやしごきはあったらしいけれど、そういうところの方が精神的に鍛えられるので、アッパー・ミドル・クラスの家庭でもパブリック・スクールに子供を入れるという例が出てきたそうだ。

昔はケンブリッジとオクスフォード大学に入るのはパブリック・スクールを出ていないと無理だったとのこと。それと、パブリック・スクール出身者というのは(その尊大さからか)見てわかるのだとか。

パブリック・スクール――イギリス的紳士・淑女のつくられかた (岩波新書)

今日の一曲

本とは関係なく。キリンジで、「エイリアンズ」



では、また。
コメント

『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』栗原康

2017-04-05 | books
1923年、アナキスト大杉栄と一緒に甘粕大尉に殺害された伊藤野枝の生涯を、弾けるような文体で描く評伝。

めっちゃくちゃに面白い。

そもそもアナキストてなんやねん?政府がない方ええっていうのは、政府があると悪さするからなんかいな?という程度にしか理解してなかったけれど、そういうことではないらしい。アナキズムとは、他人の支配なんて受けない、受けなくてもやっていけるという思想だそうだ。なるほど。近所の助け合いがあれば、行政なんてなくてもやっていけるということだそうだ。ふむふむ。

アナキズムに賛同できるかどうかは別として(個人的には半分くらい賛同する)野枝の人生は実に面白い。

福岡で生まれ育つが、実家は父親が働かないので常に金に困っていた。野枝は高等小学校を出た後郵便局に勤めるが、もっと上の学校に行きたい。ので、東京の叔父に手紙を書き、金を出してくれと頼む。手紙攻撃は三日おき、四か月続いた。根負けした叔父は受け入れ、野枝は上野高等女学校に入学する。卒業間近に、地元で縁談があり、仮祝言をあげた。新郎はアメリカに住むというのでそれならと思ったのだ。しかし彼が日本で農業を継ぐと聞いて、それでは話が違うと、野枝はキレる。しかし婚家に行かないわけにはいかないので行くが、たった9日で飛び出し、東京に戻ってきた。女学校の英語教師と関係を持つ。彼は姦通罪だと周囲から責められる。その辺り、性には奔放だったらしい。それから、「青鞜」にハマり、平塚らいてうに手紙を書き、青鞜社で働くことになる。そして大杉栄と出会い・・・てな感じ。

何物にも縛られない、自由な野枝の生き方に、読み入ってしまった。

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

今日の一曲

本とは関係なく。Suchmosで、"PINKVIBES"



では、また。
コメント

店名にツッコんでください156

2017-04-03 | laugh or let me die
コメント (4)

『バサジャウンの影』ドロレス・レドンド

2017-04-01 | books
アマイア・サラサルはスペイン、バスク地方の警察の捜査官。女児が連続して殺害される事件を担当している。服は切り裂かれ胸を露わにされ毛を切り取られ、お菓子が近く置かれていた。性犯罪か、何かの見立て殺人か。帰りたくない実家の近くでも犯行が行われたため、会いたくない家族にも会わなければならなくなった・・・

スペインのミステリー、ほとんど読んだことがない。しかしなかなか良かった。

いま猛烈に疲れているので、書くことが思いつかない。

犯行そのもののミステリーとしての面白さと、主人公の女刑事の壮絶な過去、そして曲者の家族たち。その全てが読み応えたっぷりだった。

バサジャウンの影 (ハヤカワ・ミステリ)

今日の一曲

最近ハマってしまってよく聴いている。イントロ、メロディ、男性ボーカルそして女性ボーカルへの流れ、全てが好みだ。Awesome City Clubで、「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」



では、また。
コメント