頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

店名にツッコんでください166

2017-07-31 | laugh or let me die
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『凛』蛭田亜紗子

2017-07-29 | books
就職活動がうまくいかない女子大生。たまたま訪れた網走で、娼妓とタコ部屋の歴史の本を手に取る・・・1914年、騙されて東京から連れて来られた大学生の麟太郎。通称タコ部屋。トンネルを掘る、きつくて逃げられない強制労働をさせられることになった・・・多額の借金を背負わされて網走の遊郭に連れて来られたのは、八重子。娼妓として働くことになる・・・100年前の、辛い労働の物語・・・

なかなか面白かった。

エロい描写やグロイ描写があちこちにあり、電車内で読むのにちと困った。

現代の女子大生の就職活動やら恋愛のエピソードは不要だったように思う。

凜

今日の一曲

斉藤和義のカバー。藤原さくらで「歩いて帰ろう」



では、また。
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『小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』森健

2017-07-27 | books
クロネコヤマトの宅急便のヤマト運輸。社長の小倉は、規制で縛ろうとする運輸省と闘い、優れた経営者として、広くリスペクトされている。そんな小倉は私財を46億円も障害者の福祉に寄付をしている。なぜ多額の資産を障害者のために使ったのか・・・

宅急便ビジネスのことばかり書かれていると、ビジネス書になってしまい、それはあまり読みたくない。(過去にかなりビジネス書を読んだのでもう読みたくない。)本書ではビジネスの話は最小限にして、小倉のプライベートにスポットライトを当てている。

早くに亡くなってしまった奥さん。我が儘な娘。その辺りに謎がありそうだ。

仕事では順風満帆(いや、逆境にあったこともあるけれど、その辺はいいじゃないの)、しかし家庭では逆風吹きまくり。仕事では論理の人なのに、家庭では論理の埒外の人。なんだかすごくシンパシーを感じてしまった。

小学館ノンフィクション大賞の受賞作。単なるビジネス本だか、成功の本だかという先入観を捨てて、読み耽るべし。

小倉昌男 祈りと経営: ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの

今日の一曲

このコーナー、本当にネタがない。ずっと前からネタが枯渇している。藤原さくらが、歌うaikoの「花火」



aikoが歌う真っすぐな女の子の感じも悪くないけれど、こんな風な内向的(?)な歌い方もグッとくる。では、また。
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『武曲II』藤沢周

2017-07-25 | books
綾野剛主演で映画化される「武曲」の続編。

高3なのに剣道にあけくれる羽田融。重度のアル中から復活した警備員矢田部研吾。脳卒中になってしまった光邑師匠。剣道に生きる者たち・・・

前作と同じ、熱い剣道と軽めの文体。古さと軽さがほどよくブレンドされている。

敵の身の働に心を置けば敵の身の働に心をとらるるなり。敵の太刀に心を置けば敵の太刀に心をとらるるなり。敵を切らんと思ふ所に心を置けば敵を切らんと思う所に心をとらるるなり。我太刀に心を置けば我太刀に心をとらるるなり。我切られじと思ふ所に心を置けば我切られじと思ふ所に心をとらるるなり。人の構に心を置けば人の構に心をとらるるなり。
江戸時代の禅僧、沢庵宗彭は、剣禅一如の境地を説いたが、その「不動智神妙録」の中で、勝とうとする気持ちが己を邪魔する、と遺していた。勝とう、斬ろう、にとらわれて、己ががんじがらめになり、不自由になる。心を固めるな、と。

剣道以外にも通用するようなこんな言葉があちこちにあった。

武曲II

今日の一曲

先日ラジオでかかっていた、カッコいい曲。Elton Johnで、"Bennie & The Jets"



では、また。
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『カンパニー』伊吹有喜

2017-07-23 | books
会社のリストラ対象になった青柳誠一。家庭を顧みないで妻と娘は家を出た。青柳は、バレエ・カンパニーに出向になる。会社がスポンサーになっているバレエの公演を成功させろとのことだ。海外で活躍しているスター「黒髪の貴公子」こと高野悠、会社の社長の娘の紗良が出演すると言う。紗良は敷島バレエ団の所属で、青柳は敷島の人たちと苦労することになる。体のどこかを故障している高野。そして会社の新CMソングを担当するダンス&パフォーマンス集団(EXILEっぽい)から、若い男性が公演に出演することになった。バレエの経験がないのに・・・

おー。これは収穫。

バレエなんて確か一回しか観たことがない。正直そんなに面白くなかった。しかししかし、この小説は面白い。

バレエ団の内側を抉るとか、バレエダンサーの苦労をこれでもかと描写する、というほどではないのだけれど、だからこそ素人が安心して読んで、楽しめる。

バレエダンサーからの視線、トレーナーからの視線、リストラ対象になりつつ運営に心を配る者の視線。それぞれに、良かった。よし。明日からバレエ始めようっと。チュチュを着て、レオタード着て。意外と似合ったりして。

カンパニー

今日の一曲

一番好きなGREEN CHRISTMASが見つからなかったので、平井堅で、"Why"



では、また。
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『完璧な家』B・A・パリス

2017-07-21 | books
ダウン症の妹ミリーがいて、妹と一緒に暮らすつもりだと言うとなかなか結婚できなかったグレース。しかし、弁護士でイケメンのジャックと出会い結婚できた・・・ しかし、ジャックが建てた家の中で監禁状態にされてしまった・・・

という監禁(完全に外出できないわけじゃないので、軟禁?)型のサイコスリラー。現在と過去と行ったり来たりするが、どういう経緯でグレースが監禁されることになったのか段々と分かって来る。こういう「最低な」男が世の中にいるのだろうと想像はできるけれど、現実的には考えられない。小説から現実を教えてもらった感じ。

金持ちでイケメンの彼氏なんてロクなもんじゃないってことを世の女性たちが学べる小説(だと言うと、自分が金持ちでもイケメンでもないのに、ロクなもんじゃないって証明になるような気がする) 面白かった。

完璧な家 (ハーパーBOOKS)

今日の一曲

Youtubeの再生回数が1億回を超えている、Keaneで、"Somewhere Only We Know"



では、また。
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店名にツッコんでください165

2017-07-19 | laugh or let me die
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『裁判所の正体 法服を着た役人たち』瀬木比呂志・清水潔

2017-07-17 | books
元裁判官で現在大学教授の瀬木氏と、「殺人犯はそこにいる 隠ぺいされた北関東連続幼女誘拐殺人事件」の著書の清水氏の対談。裁判所や裁判官、裁判、特に最高裁について、うそだろー?と思う話が満載。

・最高裁は、(国の)「統治と支配」の根幹に関わるようケースでは、判断を避けるか、国を擁護するような判断をする代わりに、「統治と支配」に関わらないケースでは比較的民主的な判断をしてバランスをとろうと(誤魔化?)する。

・最高裁の判事は、弁護士枠があって弁護士出身が選ばれるが、事務所のボスであって、法律的な仕事は長年やっていないような人がなる。ゆえに、審議の時に「私は多数意見に従います」などと言う。

・セクハラやパワハラ、女性のスカート内盗撮、トイレでの盗撮などで判事を辞めたのが過去16年で10人いる。判事全体の数2900人から計算すると、300人に一人が性的な非行で辞任している。もみ消されたケースを加えると、150人に一人ということになる。

・なぜそんな数字になるかと言うと、厳しく統制しすぎだから。

・「司法制度改革」の中の「再任制度」 下級裁判所の判事に関して、地家裁所長や高裁長官が「未公開」の報告書を提出する。これによって判事がクビになる。理由を告げられずに、反論の機会も与えられずに。(司法制度改革は、裁判所の焼け太りみたいな部分g相当あるのだそうだ)

・判事が、検察官の言い分をコピペして判決を作ることがある。

・日本もアメリカみたいな民事訴訟が増える社会になると(誰かが)予想したので、弁護士や判事をを増やそうと、司法制度改革を進めたが、実際は増えなかった。判事が忙しいと言っても忙しいサラリーマンと同程度。

・日本の裁判員制度は、裁判員6人+判事3人。裁判員の過半数4人が無罪だとしても、有罪になる可能性がある。アメリカの陪審員制とは違う。

・司法研修所の研究会の結果、名誉棄損の訴訟については「慰謝料算定基準表」が作られた。 1点10万円で、社会的地位については、タレント10点、国会議員・弁護士が8点、その他が5点とされている。(なぜタレントの社会的地位が一般人の倍なのだ?)

・瀬木氏がアメリカにいたときに、向こうの大学院生に「日本の判例はスチューピッドだ」と言われた。合憲と違憲の間に「違憲状態」があるってバカじゃないの?ってことだ。(例えば一票の価値判断について)

以上。裁判所や裁判、特に最高裁については、まともな判断を期待してはならないということがよく分かった。

裁判所の正体:法服を着た役人たち

今日の一曲

特に意味もなく、Tame Impalaで、"The Less I Know The Better"



不思議な色気のあるMVだった。では、また。
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『女系の教科書』藤田宜永

2017-07-15 | books
「女系の総督」の続編。

主人公森川は退職した後も忙しい。カルチャーセンターで文芸講座の講師をしている。生徒の夫から勘違いで殴られる。娘のことを、ある兄弟双方が好きになってしまったり・・・

前作同様安心して読める。ものすごくよくできたホームドラマだった。読んでつまらないと思う人がいないんじゃないかと思うほど。谷崎潤一郎とは真逆のやり方で、女性たちの中心にいる森川がいい。

「なるほど、すべては女次第ってことか」
「そうよ。優しい男には強引になってもらいたいし、強引な男には優しくなってもらいたいっていうのが本音かな」
私は薄く微笑んだ。
「ないものねだりをしすぎるのが女の欠点ね」


前作の表紙は、伊集院静か、やしきたかじんのようなパンチの効いた顔だったのに、本作は好々爺みたいに変わった。

女系の教科書

今日の一曲

乃木坂46とバナナマンのコラボで、「インフルエンサー」



ヒム子、ダンスうまい。では、また。
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『デンジャラス』桐野夏生

2017-07-13 | books
谷崎潤一郎の小説には現実のモデルがいることがよくある。「細雪」に登場する三女の「雪子」のモデルは、谷崎の妻の妹の重子だとされている。その重子から見た、谷崎という兄、そして谷崎の周囲の女たちを描く、実話のような小説。

女性自身が内向的な視線で、湿っぽい文体で描くので最初は入り込めないと思ってたけれど、どうしてなかなか面白かった。いやとっても面白かった。

登場する女性は、①今の谷崎の妻の松子 ②松子の妹、重子 ③松子の前夫との間の娘の美恵子 ④松子と前夫との間の息子、清一の嫁、千萬子 

読みどころは、谷崎が女性たちを、強い言葉を使わないで支配する様が一つ。もう一つは、千萬子と谷崎の怪しい関係。この辺に「デンジャラス」を感じる。

デンジャラス
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『アノニム』原田マハ

2017-07-11 | books
謎の集団、アノニムは、IT長者や美術史家、美術品修復家、オークショニア、エンジニアから成る。盗まれた美術品を取り戻し、元の持ち主に返している。新たに発見されたのはジャクソン・ポロックの絵画。窃盗団は盗むのは難しいと判断し、サザビーズ香港のオークションで落札しようとする。落札価格は1億ドル以上になるだろうと予想されている。アノニムは、窃盗団をハメようと大掛かりな仕掛けをする・・・

登場人物一覧がイラストで紹介されていて、これが漫画チックなので、高校生向けの小説かな?だったら自分には向かないかな?と思いつつ読んでいたら、杞憂だった。

あまり興味の持てない現代アートだったのだけれど、ジャクソン・ポロックにすごく興味が持てるようになった。アノニムが綿密な計画を立てていくコン・ゲームとしてもとても面白かった。

アノニム (角川書店単行本)

今日の一曲

たまたま見つけた。打首獄門同好会で、「歯痛くて feat.Dr.COYASS」



では、また。
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『仏教と脳科学』アルボムッレ・スマナサーラ 有田秀穂

2017-07-09 | books
大学医学部でセロトニン神経活性化を研究する有田教授と、スリランカ出身で長年日本で瞑想と初期仏教を指導するスマナサーラ師の対談。

サイエンスから心を捉える試みと、2500年前に人間の心のメカニズム追求しつくしたブッダの教えが交差する。最初は、有田教授の思いが空回りしている感じがしてどうかと思って読んでいたのだけれど、すぐに引き込まれてしまった。ものすごく面白かった。

・有田教授の仮説は、1.ドーパミン神経:「報酬」を前提とし、意欲的に動く「赤」のイメージ 2.ノルアドレナリン神経:「ストレス」で駆動され、注意、集中や不安、緊張のような不快な情動を引き起こす「青」のイメージ 3.セロトニン神経:座禅やウオーキングで活性化され、ドーパミン神経とノルアドレナリン神経の暴走を防ぐ「緑」のイメージ(この説はとても面白いというか説得力があると思った。しかしスマナサーラ師にツッコミをくらっていた)

・人間がどこまでストレスに耐えられるか自ら人体実験したのがブッダ。

・今自分が何をしているか「実況中継」することで瞑想するのがスマナサーラ師のテーラワーダ仏教のやり方。(それで脳がいっぱいいっぱいになるのがいいらしい)何かの行動をじっと見ていると脳の中で模倣していることになる。それが自分に向けられている場合他に意識がいかないからいい(と教授は言う)

・主観があるからあるがままの物が見られない。だから煩悩が生まれる。

・お経は、大事なことが口伝で伝えられてきたもの。

・現代は昔よりもずっと複雑な世界で人間は生きていると言う人がいるけれど、違う。現代人はものすごく狭い範囲(なわばり)で暮らしている。隣に住む人が何者か知らない。でも手の届くところに何でも揃っている。(のは良くないとスマナサーラ師は言う。なわばりが狭すぎるのは良くないと)一人部屋にこもってネットをやって携帯電話でメールしてという状況が、セロトニン活性化にとって良くない(と有田教授は言う。なわばりが狭いという表現にハゲシク頷いた)

・セロトニンが働いているとどうでもいい情報は受け流してくれるのに、そうでないとつまらないことをうじうじと考え、果てはキレることになる。ラットの実験でも、セロトニン神経を壊されたラットは、キレてしまう。(キレる大人とはそういうことか?)

キリスト教やイスラム教は、科学的根拠がない、あるいは科学的に考えるとツッコミどころ満載な「信じられる人だけ信じればいいでしょ?」的なもののような感じがするけれど、仏教は哲学に近いというか、科学とある程度親和性があるということが、本書を読んでよく分かった。

仏教と脳科学: うつ病治療・セロトニンから呼吸法・坐禅、瞑想・解脱まで (サンガ新書)

今日の一曲

最近ハマっている椎名林檎。レキシの「キラキラ武士」のカバーで。



張り付けたYoutubeのコメント欄は絶賛しているけれど、同一の動画で他の人がアップしたものに対しては、林檎さんのファンならこういうのは削除した方がいいと主張する人がいた。武士=pussyに聞こえるから、卑猥だからと言うことなのだろう。しかし椎名林檎の曲は全て卑猥かどうかいつもギリギリのビーン・ボールなのだから、こういう主張は粋じゃないねって思う。では、また。
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店名にツッコんでください164

2017-07-07 | laugh or let me die
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『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良

2017-07-05 | books
1981年、台湾。暇さえあれば悪さをする三人の悪ガキたち。外省人と台湾人の差。蒸し暑くもエネルギッシュな国・・・並行して描かれるのは、アメリカでの連続殺人事件。若い男性ばかりが7人殺され、その容疑者が逮捕された。台湾で登場する誰かはこの容疑者が誰だか知っていた・・・台湾。継父の暴力がひどいので、殺してしまおうとする三人組・・・

台湾の雰囲気や状況がものすごくよく伝わってくる。そこが最も良い点。登場人物もいい。しかしミステリーとしては今一つ。誰が殺人犯だったかというのは良かったけれど、殺人の動機はあまり納得できないものだった。台湾の件とアメリカの殺人がもっともっと分かちがたく関係していれば傑作だったので惜しかった。

僕が殺した人と僕を殺した人

今日の一曲

前に椎名林檎と一緒に歌っている男性がいいと書いた。その男性長岡亮介率いる、ペトロールズで、"FUEL"



なんだなんだなんだこのギターサウンドは。初めて聴く新鮮な感じ。では、また。
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『ラジオ・ガガガ』原田ひ香

2017-07-03 | books
ラジオがどこかストーリーに登場する短編集。

三人の息子がいて、老人ホームに入った女性は他人と関わるのが苦手。そんな彼女が好きなのは、伊集院光。伊集院に似た介護士が担当になると・・・<三匹の子豚たち>
何をやってもうまくいかない男。先輩の紹介でシンガポールのラーメン屋の店長になったが、結局逃亡することになった。友達がくれたiPodに入っていたのはオードリーのオールナイトニッポンだった・・・<アブラヤシのプランテーションで>
ラジオドラマが好きな彼女は自分でラジオドラマの脚本を書くことにした・・・<リトルプリンセス2号>
昔お笑いを目指していたが諦めてサラリーマンになった夫。夫と一緒にお笑いを目指していた友人たちがテレビに出るようになった。鬱屈したものを抱える夫。妻が好きなのはナインティナインのオールナイトニッポン・・・<昔の相方>
ラジオの子供相談室を聴いていたら、同じクラスのイケてるけど意地悪な女の子が、「部活でいじめがあって困ってる」って相談してた。でもいじめてる本人がなぜ相談?・・・<We are シンセキ!>
ラジオドラマの賞をとれたのに、その後、プロットをいくつも書いて送ってもディレクターのOKが出ない。だったら他の局に送ろうか・・・<音にならないラジオ>

全体的にいわゆる癒し系な短編だった。特に「リトルプリンセス2号」が良かった。挿入される彼女の書く不思議な脚本と彼女自身の生活。気に入った。

ラジオ・ガガガ

今日の一曲

ラジオということで、JUDY AND MARYで、"RADIO"



では、また。
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