たまたま見かけた詩。
http://homepage1.nifty.com/B-semi/library/koiutasyuui/17tumura.htm
より転載。
「或る遍歴から」津村信夫
雪尺余
あの人は死んでゐる
あの人は生きてゐる
私は 遠い都会から来た
今宵 哀しい報知(しらせ)をきいて
駅は 貨車の列は
民家も燈も 人の寂しい化粧(よそほひ)も
地にあるものは なべて白い
あの人は死んでゐない
あの人は生きてゐない
だが あの人は眠つてゐる
小さな町の 夜の雪に埋つて
ひとの憩ひの形に似て
雪のくるまへには頬がほてると
信濃の娘が私に告げた……
(神眠り 空あかるく
果樹が重たげに 身をゆすぶる
病む身の窓は 何処であらう)
私は知つてゐる
遙かな紅のいろを知つてゐる
雪の日のあの頬は生きてゐる
在天の知る限りの御名(みな)にかはり
今宵 雪つもる 白く積る
あの人は生きてゐる
雪尺余
あの人は死んでゐる
あの人は生きてゐる
私は 遠い都会から来た
今宵 哀しい報知(しらせ)をきいて
駅は 貨車の列は
民家も燈も 人の寂しい化粧(よそほひ)も
地にあるものは なべて白い
あの人は死んでゐない
あの人は生きてゐない
だが あの人は眠つてゐる
小さな町の 夜の雪に埋つて
ひとの憩ひの形に似て
雪のくるまへには頬がほてると
信濃の娘が私に告げた……
(神眠り 空あかるく
果樹が重たげに 身をゆすぶる
病む身の窓は 何処であらう)
私は知つてゐる
遙かな紅のいろを知つてゐる
雪の日のあの頬は生きてゐる
在天の知る限りの御名(みな)にかはり
今宵 雪つもる 白く積る
あの人は生きてゐる