頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『山女日記』湊かなえ

2014-07-31 | books
イヤミス(いやな読後感をもたらすミステリ)の女王湊かなえっぽくない作品は、30代くらいの女性たちが山に憧れたり、あるいは山を通して変わる話が続く短編集。登場人物に関連が少しあるのでセミ連作短編集だろうか。各短編にはタイトルに山の名前。

・デパート勤務の三人の女性のうち、一人が来られなくなって二人だけで登る<妙高山> まじめとふまじめの、気が合わない二人が…

・バブルを引きずっている女だと見られている私は、お見合いパーティで出会った男と登<火打山> 私はそんな女じゃないのに…

・<妙高山>のときには行けなかった。でも経験のある私は、<槍ヶ岳>を一人で登る。途中で一緒に登ることになった中年の男性と女性。体力のない女性が…

・35歳定職のない私は、医者と結婚した姉に誘われて<利尻山>に登る。私の人生って…<利尻山>の姉が娘と妹と登る<白馬岳> 

・<妙高山>のまじめな方の女性が交際中の男性と登る<金時山> 様々なミッションを自分に課してきたけれど…

・ニュージーランドの<トンガリロ> 遠距離恋愛中の彼と行く…

という感じで全篇やまやま山。

湊かなえの独特の味は「人物をいまひとつ描ききれていないのだけれど、ラストに向けての強引なストーリー展開とひねりがユニーク」というものだった。それが今回外に出て来ない。別の人が書いたよう。人物は生き生きしている。

これがなかなか悪くない。むしろ、とても楽しませてもらった。

30代女性の希望と苦悩は、篠田節子とか江國香織とか、他にも色々な作家が書いているけれど、それを山と絡めるのはなかなか巧い。

山に登りたくなった。今年の夏は富士山に登る時間はなさそう。秋にどこかに登りたい。

山女日記

今日の一曲

生き生きした女性たち。上原ひろみのトリオ・プロジェクト、Hiromi The Trio ProjectでAlive


では、また。

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『横浜黄金町パフィー通り』阿川大樹

2014-07-30 | books
横浜、京浜急行の日ノ出町駅と黄金町駅の間は、戦後「ちょんの間」と呼ばれる小さな売春店が増え、売春の街として黄金町は有名になっていった。近隣の小学校では通学路としてここを避けるために迂回していた。本書は、黄金町から売春を締め出す作戦を進める町内会の闘いと、それから何年もして、アートの街へと変わろうとしている黄金町の写真を撮る女子高生を交互に描く。

実話をもとにした小説のようである。名前は変えてあるけれど、前の市長中田宏らしき人物も出てくる。へぇ、そんなことがあったんだと思うことが多かった。

町の歴史、アブナイ人たちとの闘いなど、読み物として充分に面白いけれど、何と言ってもこの辺は自分の地元なので、読まなきゃいけない本でもあった。

横浜黄金町パフィー通り (文芸書)

今日の一曲

パフィー。と言えば、bank band liveより、PUFFYで、渚にまつわるエトセトラ。



では、また。
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『誘蛾灯 鳥取連続不審死事件』青木理

2014-07-28 | books
鳥取、スナックホステス上田美由紀の周囲で何人もの男が死んだ。2004年から2008年にかけて、読売新聞の記者が列車に飛び込み、警備員は溺死し、鳥取県警の男は首を吊った。2009年からは電器店を営む男は溺死、生活保護を受けている男は何かの薬を飲んで突然死。美由紀の何らかの関与を否することは難しい。しかし合理的に疑いなく彼女が殺したと証明することは難しい。メディアは、怪しげな女だと報道を過熱させていくが。

脆弱な間接証拠を積み上げた砂上の楼閣の如き検察側の立証活動も相当にお粗末な代物だったが、美由紀の弁護団による活動も相当にレベルの低いものだった。「検察もヘボなら、弁護側もヘボ」。こんな”標語”の方がよほど事件と公判の本質を表している。それが私の率直な感想だった。

検察と弁護側だけでなく、警察の捜査もかなり杜撰なものだった。

鳥取での取材を通して、鳥取という地方都市の疲弊、上田美由紀という一人の女性を描くドキュメント。

男たちは、大半が妻子ある身だった。世俗的な価値基準を持ち出せば、安定した仕事と家庭を持ち、かなり恵まれた環境にある者も多かった。中には、職業として他人の不審点やウソに目を光らせるべき男たちまでも含まれていた。しかも美由紀は、でっぷりと肥えた三十代半ばの女で、お世辞にも眉目麗しいなどと評せるタイプではなかった。なのに男たちはいったいなぜ、美由紀のような女に惹かれ、巨額のカネまで貢ぎ、次々と命を落としていってしまったのjか。鳥取という地方都市の寂れ切った歓楽街に漂う太ったホステスに魅せられ、ついに奈落の底へと転げ落ちていったのは、いったいなぜだったのか、その真相に、私は興味を惹かれていた。

美由紀は限りなく怪しい。金のためなら平気で嘘をつく。しかし検察の証明には説得力がない。それでも有罪になるのが日本の司法。そこを突きながら、青木は美由紀が働いていたスナック「ビッグ」に顔を出し、ママさんたちとかわす何とも言えない会話が鳥取という地の現実と合わせてグサグサと突き上げる。

同時期に事件が発覚した、首都圏連続不審死事件の木嶋香苗被告が本書を読んでブログで以下のように書いた。

私は常々、嫉妬心が欠けている人間だと思ってきた。誰のことも、羨ましいと思うことなく生きてきた。
その私が、ある女性に嫉妬した。上田美由紀さんという人に。2013年11月27日、39歳になった私の元に1冊の本が届いた。「誘蛾灯鳥取連続不審死事件」紫色の帯には、私の名前があった。「この事件の背景には、木嶋佳苗事件とは別の深い闇がある。」著者の名前を見て驚いた。青木理。私の事件を取材してくれていたら・・・と思い続けたジャーナリストの名前だった。彼は、私より上田さんを選んだのか。ショックだった。

彼女にここまで言わしめた本。読まないではいられない。

ここ数ヶ月ノンフィクションを多く読んできて思うのは、メディアが大きく騒いでいることをそのまま鵜呑みにしてはいけないということ。そしてメディアが報じなくなっても気になる事件は自分で追っかけなくてはいけないということ。メディアと検察が創り出すストーリーを全て信じてしまっては、サンタさんを信じる子供と同じになってしまう。

誘蛾灯 鳥取連続不審死事件

今日の一曲

いけない恋。ヤバイ愛。Eric ClaptonでBad Love



では、また。

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『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』佐々涼子

2014-07-27 | books
2011年の震災で大きな被害を受けた、日本製紙の石巻工場が、様々な困難を乗り越えて、復活する様を描くノンフィクション。

震災のかなりリアルな爪痕。困難を乗り越えるという、誰もが好きなネタ。売れる要素がパンパンに詰まっている。

本好きにとって興味深いのは、本の紙が作られる過程。コロコロコミックの工夫、中性紙のアドバンテージ、角川文庫の違いなどなど、たまらないネタの数々だった。

著者の佐々さんには、最低年一回のペースで本を出し続けてもらいたいものだ。

※余談

カバーの折り返しに「震災の絶望から、工場の復興までを徹底取材した傑作ノンフィクション」とある。そうあると、まるで傑作でないように見えるからこういう表現はやめた方がいい。と思うのは私だけだろうか。帯などに「傑作」とか「秀作」とあったりするけれど、傑作だと思うから出す訳やろ?そんなこといちいち言わへんでもええがな。真の傑作は自ら「傑作小説 夜の闇から小学生と」とか「傑作恋愛ドラマ 七人の歯科衛生士」とか名乗らへんやろ。

紙つなげ!  彼らが本の紙を造っている

今日の一曲

紙。と言えば、大好きな曲。John MellencampでPaper In Fire



では、また。
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『毛深い闇』園子温

2014-07-25 | books
愛知県豊川市、女子高生切子は退屈同盟を組んで、マアコとサチコと客を観察する。地元で起こった殺人事件…

切子の妄想と現実を漂うスリリングな物語だと言えなくもないし、また意味の分からない小説だとも言えなくもない。

自分は何かを読み落としたのだろうかともう一度最初から読み直す気にはならなかった。映画監督、園子温は映画の方が良いようだ。

毛深い闇

今日の一曲

園子温と言えば「冷たい熱帯魚」、と言えば、Winkで「淋しい熱帯魚」



では、また。
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映画「グランド・ブダペスト・ホテル」

2014-07-23 | film, drama and TV
先日乗ったベトナム航空。機内で何か映画を観ようと、選んだのがThe Monuments Men(「ミケランジェロ・プロジェクト」)という映画。ナチスが奪った名画を、奪い返すという話。大物の役者が役にフィットしてない(まるでフジテレビのドラマのような)ので、20分ほどで観るのを止めた。

次に選んだのが、内容がさっぱり分からないThe Grand Budapest Hotel(「グランド・ブダペスト・ホテル」)という作品。

「グランド・ブダペスト・ホテル」という本を書いた作家が訪れた同名のホテル。そこで聞いたのは、このホテルのオーナーはエレベーターぐらいの部屋に住んでいるということ。かなり大きく豪華なホテルなのに。そのオーナー、ゼロと食事を共にし仲良くなった。そして、昔話を教えてもらうことになる。「どうやってこのホテルを買ったのですか?」「いいえ、買ってはおらんよ」

1932年架空の国にある一流ホテルグランド・ブダペスト・ホテルは、コンシェルジュのグスタフ・Hによって完璧な差配がされていた。ベルボーイとしてここに入ったゼロは、グスタフに気に入られ、段々と大切な仕事を任せてもらうようになった。

ホテルのお客様でもあり、グスタフの愛人でもある84歳のマダム・Dが亡くなった。グスタフはゼロを連れて彼女のもとへ。遺言には、名画「少年と林檎」をグスタフに贈ると書いてあった。黙っていられないのは他の遺族たち。マダムの殺人事件、グスタフに訪れる災厄、グスタフとゼロの友情、そして若きゼロの成長と冒険…

先が全く読めないストーリー。画面からあふれでる様式美と茶目っ気。そして魅力的な登場人物。その全てがあった。(ゼロと…の関係になるアガサがすごく良かった。頑固なのにピュアな女の子、嗚呼たまらん)

あまりにも面白くて、もう一回観てしまった。一回目は日本語吹き替えだったので、今度は英語で。二回観てもやっぱり面白い。

ここ10年観た映画でベスト。

以下、予告編。



今ロードショーをやってるそう。
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『獄に消えた狂気 滋賀・長浜「2園児」刺殺事件』平井美帆

2014-07-18 | books
2006年滋賀県長浜市。幼稚園児の送迎当番だった永善(34歳)は園児二人を包丁で刺したとして逮捕、起訴された。永善は黒竜江省出身で、業者が仲介して日本に来たいわゆる「中国人妻」だった。メディアの報道は偏った方向へと向かう。そして大阪高裁で無期懲役が確定したのは2009年3月だった。

しかし、調べていくと永善は明らかに統合失調症を病んでいることが分かった。精神科に入院したこともおあるし、放火したこともあり、言動がかなりおかしかった。

刑法第三十九条
一、心神喪失者の行為は、罰しない。
二、心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

とある。彼女の責任能力はなかったと判断し、無罪にするか、責任は限定的にあったと考えて減免された刑を受けさせるのが妥当なはずであるが、しかし、

法律ではなく、世論が刑を決める。これが日本の出している答えだ。被告人に対する心証や結果責任によって、検察の方針、精神鑑定、判決の中身までが変容する…。

という、日本の司法、世論形成に挑む、かなり意欲的なドキュメント。

実に考えさせられる。色んなことを考えずにはいられない。被害者の立場にあれば、犯人がどういう状態にあったのかは全く関係なく、した行為によってのみ裁くべきである。だとすれば刑法第三十九条は「正しい」ものなのだろうか。正しくないと感じる人が多いだろう(だからこその、無期懲役なのだから)

しかし、もし、もしである。あなたに娘あるいは息子がいるとする。その子が病んでいて全く責任能力がない場合、万が一その子が犯罪を犯したとすると、常人と同様に懲役に行くべきだと言いきることができるだろうか。責任能力のない者の罪は問わないというルールの受益は、自分が被害者になろうが加害者になろうが同じように受けられるべきものである。自分の都合のいいときだけ受益するというわけにはいかないのだ。

もう一つ考えるのは刑務所の「矯正」能力。責任能力のない者を刑務所に入れても、矯正させることは難しく、入れても仕方がないと言うことも可能だ。

どうして永善がこのように壊れてしまったのかについて、

やりがいのある仕事と家庭。女性としてどちらも手に入れたいジレンマ、双方の間で揺れる気持ち…。事件前、彼女が再三にわたって口にしていた焦りは、まさにこの目に見えぬ葛藤からくるものだ。

現代の多くの日本人女性に当てはまることではなかろうか。だとすれば多くの日本の職業婦人が心を病む可能性が高いとまで言いたいわけではないけれど、自ら感じるプレッシャーが何をもたらすのか、考えるヒントがここにある。

ラスト近辺で引用された詩篇が何とも突き刺さる。

私をあわれんでください。主よ。
私には苦しみがあるのです。
私の目はいらだちで衰えてしまいました。
私のたましいも、また私のからだも。
まことに私のいのちは悲しみで尽き果てました。
私の年もまた、嘆きで。
私の力は私の咎によって弱まり、
私の骨々も衰えてしまいました。
私は、敵対するすべての者から、非難されました。
わけても、私の隣人から。
私の親友には恐れられ、
外で私に合う者は、私を避けて逃げ去ります。
私は死人のように、人の心から忘れられ、
こわれた器のようになりました。


獄に消えた狂気―滋賀・長浜「2園児」刺殺事件

今日の一曲

ちょっと向こうの方に行ってしまった感じの人。戸川純による「隣の印度人」



向こうに行ってしまったのは彼女なのか、それとも私なのだろうか。私は、胡蝶になった夢を見ているだろうか。それとも胡蝶が私になった夢を見ているのだろか。

では、また。
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『ぼくの守る星』神田茜

2014-07-16 | books
連作短編集

文字を読むのに障害を持つ夏見翔(かける)は14歳。彼から見た日常、同級生、母親。そして彼の苦悩<ジャイアント僕>

翔の母、和代。息子の教育がうまくいかない。障害があるために勤めていた新聞社を辞めたのに。彼女の母親に月に一度呼び出される。偉そうに障害についてどこかで聞きかじった知識を披露する。全て悪いのは私なのか<済んだ水の池>

同級生夏見のボケは最高だ。教科書に書いてある「前日、前々日」を「前田、前々田」と読んだ。俺ならうまくツッコめる。あいつと組めばお笑いコンビとして成功するに違いない、そう信じる山上。姉は5歳に時に亡くなった。母はそのことをいまだに引きずっている。父は葬儀場で働いている。そのことで「線香臭い」とバカにされ<ゴール>

弟の聴覚障害のせいで母はおかしくなってしまった。そんな母と弟を引き離すために、父と弟は北海道に住むことになった。精神的に不安定な母と二人で暮らすのは翔の同級生まほり。翔との関わりの中で<はじまりの音>

翔の父は新聞社に勤務。息子に障害があるらしいが忙しいことを言い訳に子育てにほとんど関わらなかった。カイロでの単身赴任が終わって帰国したら、閑職に追いやられてしまった。しかし家庭では妻と息子に無視されるような存在になってしまった<山とコーヒー>

翔が見つける自分の人生<ぼくの守る星>

基本的にディスクレシアの翔を中心として、周辺の人物の喜びと苦悩を描く。文字がうまく読めないというのはこういうことなのかと分かって、後頭部とおたまでカキーンと叩かれたような思いがした。笑えたり、ジーンとしたり、ものすごくいい小説だった。薦めてくれた人に感謝。

あちこちにドキッとするような表現が、

山上は言う。

いつもそうだ。誰かといるときには自分がすごくでかくなったみたいに調子に乗れるのに、ひとりになった途端に体が半分になったような気がして、偉そうにしたことをあやまりたくなる。

ろくに子育てに参加しなかった翔の父。今まで一度も出たことのない学校行事にこれからは参加すると妻に伝えると、

「いいわよ、来なくて。感動だけ横取りしようなんて、都合が良すぎよ。私のご褒美なんだから、あなたは感動しなくていい」

うーむ。きびしい。でもその通り。

子育ては自分育てと言うが、子を育てなかった彼は、子を育ててきた彼女に、十歩も百歩も遅れをとったようだ。

ぼくの守る星

今日の一曲

文字で書かれたことば、それ以上のもの。ExtremeでMore Than Words



では、また。
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『火焔の鎖』ジム・ケリー

2014-07-14 | books
イングランド東部の街イーリー。27年前の1976年、米国空軍の飛行機がこの地に墜落した。多くの人が死亡した。アメリカ人夫婦も、赤ん坊も亡くなった。墜落した場所に農場にいた女性マギー・ベックは自らの赤ん坊は助かったにもかかわらず、死んだ赤ん坊とすり替えて、自分の赤ん坊死んだ、アメリカ人の赤ん坊は生きていると証言した。そのままマギーの息子は、アメリカ人となってアメリカに渡った。そして2003年、少女の失踪事件、ナイジェリアからの不法移民、そして遺体。週刊新聞「クロウ」の記者フィリップ・ドライデンが謎を解く…

実はこれは第二作。第一作「水時計」は面白く読んだのに、レビューするのを忘れていた。翻訳ミステリーシンジケートの書評七福神の二月度のベストで千街晶之氏と川出正樹氏が第三作「逆さの骨」を挙げていた。ちょっと読んでみたらすごく面白そうだと分かった。

水時計 (創元推理文庫)逆さの骨 (創元推理文庫)

私は、シリーズものは順番で読みたい「順番原理主義者」なので第一作から読むことにしたわけ(桃井かおり風)

過去と現在の絡め方はロバート・ゴダード、事件のおぞましさはミネット・ウォルターズ、でも全体として飄々とした感じは特捜部Q、いくつもの事件が並行して描かれるのはフロスト。その全てを掛け合わせたハイブリッド・ミステリーとなっている。

遺体はいくつも見つかるものの、そっちではなく、冒頭の赤ん坊のすり替え。なぜそんなことをしたのか、この謎の提示され方、解かれ方、そして解き方。全てが好みだった。全体としてもミステリー読みの期待を決して裏切らない結末。そして複数の事件の収束のさせ方も見事。漂う乾いたユーモアもいい。

火焔の鎖 (創元推理文庫)

今日の一曲

原題はThe Fire Baby
Babyと言えば、Baby I Don't Wanna Cryと歌う、安室奈美恵でDon't Wanna Cry



では、また。
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『大泉エッセイ』大泉洋

2014-07-12 | books
俳優、大泉洋。北海学園大学の演劇研究会でTEAM NACSを結成、人気劇団となる。テレビのバラエティ番組「水曜どうでしょう」やドラマ「救命病棟24時」、映画「探偵はBARにいる」に出演して、北海道ローカルのタレントから、全国へと知名度を広げた。

個人的には三谷幸喜の「わが家の歴史」での情けない「つるちゃん」役が印象的だった。そんな彼が、アルバイトニュース、じゃらん、SWITCHに足かけ16年書いてきたエッセイをまとめたもの+書き下ろし。

電車の中で読んでいたら、笑いがこらえられなくて困った。文章力があるというよりも、ネタ力とか突破力がある。(日本代表のサッカーに必要なもの?)

宮崎の綾町で、旅館のフロントの女性に一目ぼれしてしまう話(その後も何回か続く)や、ユニークな祖父の話、旅の話。

私が子供だった頃、兄宛に来た年賀状で驚いたのは、宛先の住所の箇所に手書きのきたない北海道の絵が書かれていて、その札幌のあたりに黒丸がうたれており、そこに「ここ。」と書いてある年賀状が届いていて、子供だけに「これで届くんだ」と思った覚えがある。

思わず、ほんとかよー、とツッコんでしまった。

大泉エッセイ  ~僕が綴った16年 (ダ・ヴィンチブックス)

今日の一曲

大泉洋と言えば、旅。と言えばトラベル。ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、ロイ・オービソン、トム・ペティ、ジェフ・リンによる覆面バンド、Travelling WilburysでHandle With Care



では、また。
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店名にツッコんでください88

2014-07-10 | laugh or let me die
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『キル・リスト』フレデリック・フォーサイス

2014-07-09 | books
インターネット上で、アメリカに対する憎悪を説く、イスラム主義者<説教師>に呼応して、アメリカで殺人事件が続いた。<説教師>を探すのが<追跡者>こと、キット・カーソン。祖父も父親も軍人。海兵隊に所属し、アラビア語にもイスラム教にも詳しい。この<追跡者>が世界のどこにいるか分からない、<説教師>を探し、そして殺害するまでを描く、超リアルな国際謀略小説。

「ジャッカルの日」「オデッサ・ファイル」「戦争の犬たち」など国際謀略小説の世界的大家フォーサイスももう76歳。この歳でこんなにも詳しくてリアルな物語が描けるとは。インターネットや、無人偵察機など現代的な武器もたくさん出てくる。

(私のように)国際謀略ものが好物で、武器も好物な人には強くオススメしたい。ラストのパラシュートによる降下。この30頁だけでも読む価値あり。手に汗にぎる。

キル・リスト (海外文学)

今日の一曲

東西冷戦。イデオロギーの対立、テロ。やってはいけないと分かっているのにしてしまう、いけないゲーム。と言えば、Chris IsaakのWicked Game



では、また。
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『おしかくさま』谷川直子

2014-07-08 | books
49歳姉は鬱から復活中、46歳妹はシングルマザー。姉妹の母親から、父親が独身の女の家から出て来たので怪しい、だから調べろと命じられる。調べてみると、「おしかくさま」という怪しげな宗教のようなものに行きあたる。お金を指定されたATMに入金し、そして引き出して使うと、運が向いてくるとか…

自分からはあまり手に取りそうにない本なのだけれど、薦められて読んでみたら、これが何とも面白い。

最初は、49歳&46歳姉妹のアラフィフ女子による痛い話&父親の不倫という、ちょっと前なら「女子高生と女子大生の姉妹+50代の父親の不倫物語」がフツーだったのが、高齢化の進行によって、20年ほど主人公たちの年齢が上昇したわけね、と思いながら読んでいた。そういう側面もないわけではないけれど、中心はこっくりさんのようなおしかくさま。

何とも不思議で、でもすごく読ませる物語だった。

小学校六年生のあたしは、人間の値打ちは知性と教養にあるという父親の思想にまんまとのせられて、その結果あたしがついていたら太宰治を死なせなかったのにと思いつめるようになる。

なんて表現も愉快。

作者の谷川直子は、作家の高橋源一郎の元奥様だそう。高橋は、室井佑月とも結婚してた。5回も結婚してるそう。そりゃすごい。

おしかくさま

今日の一曲

おしかくさまは、四角。と言えばスクエア。Room For Squareというアルバムに入ってる曲はNo Such Thing、歌うはJohn Mayer



では、また。
※追記 登場人物の妹の夫について描写はなかったけれど、娘の言動からシングルマザーではないのではないかというご指摘を拝受。
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『「おじさん」的思考』『期間限定の思想』内田樹

2014-07-06 | books
『「おじさん」的思考』の続編が『期間限定の思想 「おじさん」的思考2』 二冊合わせて、気になった箇所の引用にて失礼。

関川夏央によると男の正しい生き方は「人並みに結婚、しかるのちに人並みに離婚。娘だけを引き取って、父娘ふたり暮らし。これが人生のベストチョイス

小田島隆はかつて「酒とは、呑んでいるときは『呑み足りず』、呑み終えたときは必ず『呑み過ぎている』飲料である」と書いたことがある。これほど適切な定義を私は他に知らない。

「不健康に生きるためにはまず健康であることが必要なのである」という彼の持説は私にはたいへん説得力がある。

家族同士が密着しすぎ、「同じような意識・感覚」を共有しすぎているせいで、家庭内が密室化し、そこが「ふつうの社会のふつうの常識」から遮断された、とても風通しの悪い、濃密な空間になってしまっていることが、むしろ子どもたちの逸脱行動の原因になってはいないでしょうか。

「毎日会社にゆくのが楽しみ」であるような仕事を選ぶと楽しいよ。
就職活動をしている人たちに言いたいのは、それだけである。

男に支えられない女は弱い。

男女の関係においては、不幸であることこそが「常態」なのだという真理を受け容れたものだけが、ほんとうの幸福に触れるチャンスがある。

「先生、人を愛するって、どういうことなんでしょう?」
おっと、今日もいきなり核心を衝く質問だな。
「愛って、よーく、わからないけど、傷つく感じがステキ」というのはヤクシマルヒロコの「メインテーマ」だが、さすがに松本隆はものごとの本質を的確にとらえているな。


「おじさん」的思考 (角川文庫)期間限定の思想  「おじさん」的思考2 (角川文庫)

今日の一曲

ちょうど出て来た、薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」



昔観たはずなのに内容を覚えてない。原作も読んだはずだけど覚えてない。これを観たら、あらためて映画を観たくなった。

では、また。
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『ナツコ 沖縄密貿易の女王』奥野修司

2014-07-05 | books
「心にナイフをしのばせて」というノンフィクションにいたく心を奪われた。著者の奥野修司が大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した作品が本書。こんな本が出ていたなんて全く知らなかった。

戦後の与那国島。日本とは切り離されて米軍が統治することになったが、物資がちゃんと届くことはなかった。そこで活躍したのは密貿易。その中でも義侠心と才覚を持って尊敬されたのは、夏子。金城夏子という一人の傑出した人物の伝記であるとともに、戦後の沖縄のゴタゴタを緻密な取材で明らかにしてゆく。

関係者の多くが亡くなっているのにこれだけ取材できたことに驚く。そしてそして、そしてそして、面白い。面白い。

いわば、ものすごく大きいバブル景気に沸いていた時代。というだけでもちょっと気になってしまう。だけじゃなく夏子という女性。カッコいいという枠にさえ収まらないこんな人物がいたとは。

と、なんともしょうもない文章になってしまった。ノンフィクションはどう自分の感じたことを伝えればよいのか、その術がまだ身に付かない2014年夏でした。私の文章はしょうもないけど、本はしょうもなくないですよ。

ナツコ 沖縄密貿易の女王 (文春文庫)

今日の一曲

ナツコ、と言えばこれしかない。ツイストで「燃えろいい女」



では、また。
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