頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』ブレイディみかこ

2020-07-31 | books
2018年から2019年にかけて、英国在住の著者の知り合いの様々なおじさんたちが、何を考えどう行動していたかを教えてくれる。「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の若者の言動が爽やかだったので、おじさんの話はあまり興味持てないなー、と思いつつ読んでみたら非常に面白かった。

ブレイグジットに賛成したことで発生する夫婦喧嘩。ウーバーとブラックキャブの闘いや、こんまりにハマるおじさんなど。

最も驚いたのはNHS(国民健康サービス)の件。無料で受けられるが、まず登録してる地元の医者に会って、そこから専門医に紹介状を送ってもらって、そっちから手紙が来るのに2ヶ月かかるというのが10年前。それが主治医に会うための予約をとるために朝8時に行列しないといけない。受付で予約できたら、また帰宅して予約時間に行かないのいけない。というのが数年前。それが現在は、主治医と電話で話す予約を取るようになった。向こうから電話がかかって来るがいつ来るか分からない。電話に出られないと終わり。一日中ずっと電話の前にいないと予約すら入れられない。2010年の緊縮財政以降こんな風になったそうだ。EU離脱派は投票前にも、EUに払ってる500億円が浮くのでNHSの資金に出来るというデマを流したそうだ。南無南無。

 

今日の一曲

海援隊で、"JODAN JODAN"



では、また。


コメント

店名にツッコんでください242

2020-07-29 | laugh or let me die

店名にツッコんでください242

コメント (4)

『破滅のループ』カリン・スローター

2020-07-27 | books
疾病予防管理センター(CDC)の疫学者が誘拐され1ヶ月が経過。爆発事件があり、犯人グループにウィルの恋人、検死官のサラが拉致された。大規模なテロを計画している、極端な白人至上主義者たちのグループの仕業だった。テロを止められるのか、サラの行方は、どんなテロなのか・・・

途中、長いなーと思いながら、スローター作品だから我慢してれば報われると思っていたら、やはり報われた。

ラストに近づいて、テロの詳細が分かる辺りから急速に加速していった。

リーダーのダッシュが言う。

 「わたしのレディたち、よく聞きなさい。いまからいちばん大事なことを教えるぞ。人種はピラミッドのように積み上がっている。いちばん上にいるのはいつだって白人男性だ。その次は白人女性で、彼女たちはひとりの主人に仕えるだけでいい。その下はほかのさまざまな人種だ。地球上に住む人々がみんな平等なわけはない」

こんな風に考える人間が一定数いるというのが、人間というプログラムのバグだと考えればよいのだろうか。

 

今日の一曲

ゲスの極み乙女。で、「心地艶やかに」



では、また。


コメント

Netflixドラマ「愛の不時着」

2020-07-25 | film, drama and TV
韓国の財閥令嬢にして社長セリがパラグライダーの事故で北朝鮮領内に落ちてしまう。北朝鮮軍の中隊長のリと出会い、ひょんなことから北朝鮮の村に行くことになり、北朝鮮人のふりをしながら村の女性たちや中隊の人たちと関わっていく。リ隊長には婚約者がいて、美男美女のカップル。しかしセリが現れて・・・ 財閥の方は父親が後継者として指名したのはセリ。長男や次男は反発し、セリを蹴落とそうと汚い手を使う。北朝鮮内部の熾烈な権力闘争、北朝鮮の人との触れ合い、後継者争い、そして国境を越えた禁断の恋・・・

自分は結構ドラマを観てきた方だと思う。過去10年、いや20年、もしかすると人生で観たドラマのベストと言ってもいいかもしれない。

設定や脚本がいい。緊迫した場面に挟まれる、ちょっととぼけた中隊のメンバーたちの会話がいい。そして、セリ役の女優、ソン・イェジンがとってもいい。とてもつなく綺麗で、時折見せる可愛らしい表情のギャップや、中隊のみんなに言う少しお姉さんのような言い方、表情もいい。完ぺきに美しい。そしてリ中隊長のヒョンビンもいい。無骨なのに優しい男。女性ならこりゃ惚れるだろう。

てっきりNetflixのオリジナルだと思っていたら、韓国の民放だそうだ。スケールの大きさ、かかるお金すべてBBCかハリウッド制作のよう。日本のテレビ局は完全に負けてしまっている。

映画「カメラを止めるな」や「パラサイト」は話題になってすぐに観に行って良かった。何も事前に情報を入れないようにしていったから。知り合いが両方を、公開されてからだいぶ経ってから観に行ったそうだが、それほど楽しめなかったそうだ。事前にどんな話かがあちこちに書かれていてそれを読んでしまったので、新鮮な喜びがなかったそうだ。同様に本作もあまり内容については調べないで騙されたと思って観るのが吉。

↓ 予告編


では、また。
コメント

『暴虎の牙』柚月裕子

2020-07-18 | books
広島、暴力団員の父親に虐待され、やくざを憎みながら成長した沖虎彦。粗暴で少年院に行き、出てから愚連隊を組織する。やくざのクスリを強奪したり、賭場を荒らしたり、やくざを殺したりやりたい放題。大上は広島で知らぬ者はいないマル暴刑事。沖に目をつける・・・

ううむ。素晴らしい。テンポの良さ、キャラ設定、ストーリー全ていい。「仁義なき闘い」の世界を彷彿とさせる。

登場人物の一人の名前から、昔の知り合いの名前を思い出し、検索してみたら、殺人事件を起こしていた。ううむ。殺人て自分とは無関係なことかと思っていたけど、意外と身近なのだろうか。

 

今日の一曲

尾崎豊で、"Foget me not"


では、また。
コメント

『食っちゃ寝て書いて』小野寺史宜

2020-07-16 | books
作家、横尾成吾、50歳。就職して2年で辞め、長い投稿時代。デビューしても一作だけ売れただけ。1個29円の豆腐を食う。編集者井草菜種、親が医者だから医学部受験するが全敗。文学部を経て大手出版社の編集。前の担当から横尾を引き継ぐ。横尾と井草の章で交互に描く、作家と編集者の話。

「ひと」「ライフ」「縁」「まち」で感じた「とてつもなくええ人」の話とは若干違うので以前に読んだ小野寺作品のほんわかする感じはやや薄い。しかし、そういう期待を無視して、リアル(売れない)作家の生活を赤裸々に描写した小説だと思って読めば急に面白くなる。

横尾は毎朝目覚めると、言う。

「無駄に想像しない、無駄に休まない、無駄に求めない」

むむむ。なんか深いぞ。つい明日とか来週とか来年とか先の事を想像しイライラするけれど、それは無駄な事なのだ。

横尾には学生時代からずっと付き合いのある友達が一人だけいる。溝口弓子。

「弓子も同じ文学部だから、ではないと思う。できるのは、弓子が弓子だから。あれ好きこれ嫌い、ではなく、自身の好みとは別にきちんとものごとの価値を見極められる人だからだ。」

こんな話を読むとNの事を思い出す。東京都某区内の小学校から各二名ずつ派遣して理科の研究をさせるだかのプロジェクトメンバーに選ばれた。というより担任から強制させられた。で、毎週土曜日午後、とある小学校に集合させられることになったのだ。男子2名、女子2名でとっても仲良くなった。仲良くなりすぎて研究はあまり進まなかった。その同じ研究グループにいたのがNだった。別の小学校に通っていたけれど、 後に同じ中学に通うことになった。自分は同じクラスの子を好きになったり、その子が自分の事を好きだったりして春を謳歌したり、またふられたりしてた。そして同じ塾に通っていたNに告白したり(自分で言う度胸がなかったので、友だちに言ってもらった。恥ずかしい)そしてふられた。中2ではまた別の子を好きになったり、別の子に告白されたり。こう書くといかにももてていたかのようだが、実際もてていたのだよ、えっへん。(しかし後の人生ではそれほどもてなかった)そして時がたち、中3の時Nに告白された。しかし、断る。(この辺の経緯は面倒なので割愛)高校は別の所に行った。大学も別。彼女の事など忘れていたのに、大学で関東のサークルの集まりに行くと、いた、Nが!どういうわけか、それから彼女と急速に仲良くなった。お互いに彼氏彼女がいたのも良かったのだと思う。大学一年からずっと、怪しい関係に一切ならないのに、毎晩電話するような大親友になれた。親にも弟にも友達にも言えない、彼女にも言えない事をNには言えた。たぶん彼女も彼氏には言えない事を俺には言えたのだろう。

でも、今はもう言えない。彼女は死んでしまったからだ。そういう意味では主人公横尾の方が、なんというか、マシだとも言えるかも知れない。

冗長な文章で失礼。(この話って以前にしたっけか?)

 

今日の一曲

浜田省吾で、"J.Boy"



では、また。


コメント

『パラ・スター Side宝良』阿部暁子

2020-07-08 | books
「パラ・スター 百花Side」は車いすを作る側から、こちらは車いすテニスプレーヤー側から描く。事故で下半身付随になっだがテニスに出会い、日本代表レベルにまで上達した宝良。しかし去年から負けが続いている。コーチが代わり、車いすも変えて、臨むはジャパン・オープン。不調を吹っ飛ばせるのか・・・

うーむ。百花の方も良かったが、こちらも負けず劣らずにいい。解説の北上次郎氏は泣きまくったそうだ。そこまで泣けたわけじゃないけれど、ラスト近辺では、湯船に浸かりながら読んだので、頬を伝わるのが汗なのか涙なのか分からなくてなってしまった。

 「入院してるおまえの様子を見て、俺は正直、おまえとはもうこれきりになるだろうと思った。テニスに命がけで打ちこんできた分だけ、きっと走るどころか歩くこともできなくなったおまえは、つらすぎてもうテニスには一生近づかないだろうと。だけど、おまえはまたコートに来た。ジャージに着がえて、ラケットを膝にのせて、車いすテニスがしたいと俺に言った。あの時、心底俺は思ったよ。人間て何なのか。ここまで打ちのめされてまた立ち上がる強さは、生きようとするひたむきさはどこから来るのか」
もし自分が車いすに乗る生活になったらテニスをやってみたいと思わせる、そういう力のある小説だった。順序としては百花を先に読んだ方が時間的に順序よく読める。

 
 

今日の一曲

StingとShaggyで、 "Englishman in New York" 


では、また。
コメント

『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』 ホルスト, ヨルン・リーエル

2020-07-06 | books
ノルウェー、カタリーナが行方不明になって24年経過。警部ヴィスティングは彼女の夫マッティンの友人となった。そして国家犯罪捜査局から来た捜査官スティレルが別の女性の失踪事件でマッティンの関与が疑われていると言う。最新の技術で脅迫状から指紋が出たのだ。スティレルは、ヴィスティングとマッティンの仲の良さを利用しようとする・・・

ちょっと長いかなと思って途中まで読んで脱落していたけれど、また読み始めたら面白くなった。静かな緊張感が持続する珍しいミステリー。真相は想像だにしないものだったけれど、言われてみれば納得。

 

今日の一曲

甲斐バンドで、「裏切りの街角」



では、また。




コメント

『家族じまい』桜木紫乃

2020-07-04 | books
「智代」・・・父親の理容室で働くつもりだったのが借金だらけで潰れてしまい、実家から離れ結婚し、美容院のパートをしている。夫の啓介の弟が50を過ぎて結婚するという。そして、実家の母サトミが認知症になったらしい。

「陽紅」・・・農協の受付で働く陽紅はバツイチ。55歳の息子と結婚してくれと執拗に頼む80を過ぎた老婆。結婚してみたが・・・

「乃理」・・・智代の妹は夫子供二人とカツカツの生活。しかし母サトミが呆けて、父が二世帯住宅を買ってもいいと言い始めた。

「紀和」・・・稼ぐのが難しいサックス奏者、フェリーのラウンジで吹いていると、拍手喝采。智代と乃理の父親と母親が二人で乗船していた。二人の話を聞くと・・・

「登美子」・・・サトミの姉は82歳、娘から縁を切りたいと言われた。

うーむ。読んでも救われない。癒しはそこにはなかった。登場人物に感情移入しても第三者的に見ても、暗くなる。しかしリアリティはありまくりだった。50代や80代なんて遠い未来だと思っていると、すぐそこに足音が聞こえて来る。好きな小説ではないが、老化+人生を考えさせる秀作。

 

今日の一曲

「関ジャム」で紹介されてた。コサキンのラジオでもよく出てきたような記憶。二人の掛け合いが絶妙な、中村晃子・細川俊之で、「あまい囁き」


では、また。

コメント

『クスノキの番人』東野圭吾

2020-07-02 | books
直井玲斗は勤めていた会社からの窃盗で逮捕された。すると弁護士がやって来て、誰かが弁護士費用は払うがその代わりに命じる事があると伝えられる。応じると、高級ホテルに連れて行かれ、柳澤千舟と会った。千舟は、玲さんと異母きょうだいだと言う。そして、柳澤家の神社のクスノキの番人になれと命じられる。クスノキは願いが叶うパワースポットと呼ばれているが、その実は・・・

いつからか東野圭吾は、昔は良かったけど、最近は大衆に迎合しちゃってなー、という作家に勝手にカテゴライズしていた。そこから大きく逸脱するわけでもないのだけれど、なかなか悪くなかった。

超常現象だとか、死者から生者からへのメッセージとかの上部はあるけれど、その下の土台には、人間的なかなか悪くないというものがあると思う。軽く読めるので、普段まったく飯を読まない人に「なんか面白い本ない?」と訊かれた時の答えにしておきたい。

 

今日の一曲

先日の「関ジャム」をご覧になっただろうか?4年前の放送を振り返る会で、ぶっ飛んだ。ゲスの極み乙女。がどういう風に曲を作っているかという会だったのだけれど、それが凄かった。古田新太が、24時一人で牛丼を食う女というお題を与えたら、川谷絵音がスマホに歌詞を打ち込む。そして、大体のコード進行を川谷がギターでじゃかじゃか弾く→キーボードのちゃんMARIがホワイトボードにコード進行を書く。Cm7 Fm7とか。イントロのドラムとかキーボード、ベースを川谷が指示して、演奏スタート。川谷は事前に作った歌詞に載せて歌う。何回かやり直しをしたのだけれど、なんと35分で完成。改めて川谷絵音は天才なんだなと思った。ちゃんMARIのキーボードもほな・いこかのドラムも素晴らしい。ゲスの極み乙女。で「ロマンスがありあまる」



では、また。


コメント