頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『MR』久坂部羊

2021-05-30 | books
天保製薬VSタウロス・ジャパンによる製薬会社の仁義なき戦いを中心に、大学教授のセクハラ、横暴や、過ちを認めない開業医など医学界薬学会を蠢く魑魅魍魎を描く。


物凄く面白かった。天保製薬の堺営業所所長の紀尾中を主人公に、部下達の苦労やタウロスの妨害、そして、何百億円とかかる治験プロジェクトの話など。38もの章に分かれているので、連作短篇集の様になっていて、すごく読みやすい。そしてどうなるか先が気になって仕方がない。


業界の裏側をここまで徹底して書いてくれていて、呆れるやら驚くやら。情報を得られるのもあるけれど、単純にスリリングな小説としても楽しめた。今までに読んだ久坂部羊作品でベスト。

 

今日の一曲

Gary Mooreで、"Parisienne Walkways"




では、また。


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店名にツッコんでください262

2021-05-28 | laugh or let me die
店名にツッコんでください262
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『さよならの夜食カフェ マカン・マランおしまい』古内一絵

2021-05-26 | books
マカン・マランシリーズ第4部にして最終巻。いつ営業するか分からない、極上の夜食を食わせてくれるシャールさんの所に集まる客たちの悩みを優しく解決してくれる。

ビーズを使ったアクセサリーを友達に褒めてもらっていたと思ったのに、実際はウザがられていたと分かってショックを受けた女子高生、自分の店を攻撃してくるツイートに反論し炎上してしまった日本料理店オーナー、日々の暮らしが無味乾燥してしまった金持ちと結婚した元グラビアアイドル、そしてラスト。

素晴らしかった。第3部を読み忘れてたのにもかかわらず。

警句の数々

「友達とか友情って言葉に期待しすぎるのって、あんまりいい結果を生まない気がするわ」

「不安は誰かが解決してくれるものではないの。自分自身て向き合うしかないのよ」

「そりゃあ、不安と向き合うのは骨が折れるわよ。筋トレって基本的に苦しいものだから。でもそれを続けていれば、完全な解決はしなくても、心の筋力は鍛えられるのではないかしら」

料理と哲学のハーモニー。ドラマ化ハゲシク希望。

 

今日の一曲

ラジオから流れてきた。KICK THE CAN CREW feat. 岡村靖幸で、「住所 」



では、また。



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『白鳥とコウモリ』東野圭吾

2021-05-24 | books
東京の白石弁護士が殺された。しかし手がかりが見つからない・・・薄い手がかりを元にたどり着いた愛知県在住の容疑者倉木は、なんと自白した。しかし、倉木の息子、そして被害者白石の娘は納得出来ない。何かがおかしい・・・

長い。半分位読んだところで捨てようかと思いながら我慢して読んだら、後半は良くなり、ラストは素晴らしかった。

真相が分かるラストまでの道のりはもっと短縮できるはずだし、これだけ長くするのならもっと情報を多く提示出来るはず(比較対象は英米北欧ミステリー)だと思う。

ただ(えらそーに言う事を許して頂ければ)こういう風に懇切丁寧に、描写されないと称賛してくれないのが、ベストセラー作家東野圭吾の読者なのだろうなと想像する。

 

今日の一曲

井上陽水で、「桜三月散歩道」



では、また。



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『世界史をつくった海賊』竹田いさみ

2021-05-22 | books
英国が世界制覇していった過程を、16世紀エリザベス一世の時代から、海賊を利用したり、スパイを使ったりした事で具体的に説明してくれる。

うーむ。大変面白かった。英国大好きになってしまった偏見人間のバイアスを、キレイさっぱり取り払ってくれた。

ある意味英国は賢かったけど、ズル過ぎた、とも言える訳。と言う事が分かりました。


 

今日の一曲

The Petersensで、"Take Me Home, Country Roads"



では、また。



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『海の地政学 覇権をめぐる400年史』竹田いさみ

2021-05-20 | books
スエズ運河で船が座礁した時にラジオに著者がゲスト主演して、その話が面白かったので読んでみた。

大英帝国がどうやって世界の海を支配していったか、クジラを求めて黒船は日本に開国を迫ったかとか、セオドア・ルーズベルト大統領の戦略、領海や公海というアイデア等海を中心とした覇権の歴史。

とても面白かった。19世紀に英国は世界中に海底ケーブルを張り巡らせていたのには驚いた。

 

今日の一曲

Awesome City Clubで、「勿忘」



では、また。


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『エレジーは流れない』三浦しをん

2021-05-18 | books
餅湯温泉の土産物屋で母一人子一人で暮らす高校生怜。家にはお金がないだろうから大学には行かない方が良いかと考えてる。しかし毎月第三週は別のお母さんと過ごす、という謎の設定アホだけど憎めない同級生たちとの日々。地元の博物館から土器が盗まれたり・・・

やっぱりしをん先生はいい。やっぱり大好きだ。メインは自分の進路に悩む怜。それに謎の母親が二人いる設定や土器盗難事件とアホ高校生の日常を絶妙なブレンド具合で飲ませてくれる。笑えるし、人間てそうだよなと感心させてもくれる。
「愛美がまた、見た目がかわいいのみならず、「気立てがよくて賢いけど素っ気ない」という絶妙な性格をしているため、竜人がのめりこむのもしかたないところだ」

そうそう、そういうの男の理想なんだよ。そういうのが理想だと言語化して気づかせてくれた。素晴らしい。


「心身ともに打たれ強い竜人には遠慮なく接せられるというか、無意識に甘えてる部分があって」


確かに。打たれ強いメンタルが強い人には、本音が言えるし、本音を言い合って、分かり合う事が出来る。

 

今日の一曲

Nulbarich で、"TOKYO"


では、また。
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『旅行者の朝食』米原万里

2021-05-16 | books
エッセイの名手による食べ物エッセイ。あちこちで書いたものの集積。何ヶ月か前の日経新聞の特集に取り上げていたような曖昧な記憶。

心の底から敬愛申し上げる米原センセイがつまらないわけがない→やっぱり面白い。

キャビアとかジャガイモの深い蘊蓄。キャビアを取った後のチョウザメを殺さずにジッパーを付ける!知らなかった。

「食べる」ことが好きな人必読。

 

今日の一曲

Ray Parker Jr.で、"The Other Woman"



では、また。


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『ハイパーハードボイルドグルメリポート』上出遼平

2021-05-14 | books
テレビ東京の番組ロケで出会った海外のヤバイ飯と出会う前の苦労を描くドキュメント。人肉を喰らう人を探してリベリア、マフィアと食う豪華な中華は台湾、カルトのいるロシア、ゴミの山から売れる物を拾い集めるケニア。

まさにヤバすぎる飯の数々。極端に治安の悪いリベリアとゴミ山から出る有害物質を食う牛や豚の登場するケニアが特に印象深い。自分の薄っぺらい常識など吹き飛んでしまった。


 
今日の一曲

Ms.OOJAで、「星降る夜に」



では、また。



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店名にツッコんでください261

2021-05-12 | laugh or let me die
店名にツッコんでください261
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『京都まみれ』井上章一

2021-05-10 | books
京都府や京都市ではなく、「京都」とはいったいどこからどこまでを指すのか、文化庁が京都に移転すること、老舗の子息は京大に進学すると気の毒がられること等。京都にまつわるエッセイ。

「京都ぎらい」の続編。洛中の人を揶揄する姿勢は変わらない。「京都ぎらい 官能編」よりは面白かった。洛中の北限は、1.姉小路通 2.御池通 3.丸太町 という三つの説が登場するが、旅行者としての実感は3だと思うがどうだろう。

 

今日の一曲

たまたま見つけた。あまりにもいいので何回も聴き、元ネタのスティーブ・ペリーが歌う方も聴いてしまった。Journeyの"Open Arms"で、Arnel Pinedaとx Taka (One OK Rock)によるカバー。



では、また。


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『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』ベン・ルイス

2021-05-08 | books
アメリカの美術商が見つけた絵、修復してみると、ダ・ヴィンチのものかも知れないと思うようになった。修復してみると、ダ・ヴィンチが描いたと思う者も出て来た。そして1000ドルで買った絵がロシアの富豪に8千万ドルで売れた。そしてオークションに出し、サウジアラビアの皇太子が4億5千万ドルで購入した。

そもそもダ・ヴィンチが描いたのだろうかという検証や、美術界を跋扈する魑魅魍魎たちを詳細に描写するスゴイドキュメント。

とても面白かった。かなり細かいことが書かれてるので興味のない人には退屈かも知れない。しかし、映画テネットでも出て来た、フリポート(税金を逃れたり、マネーロンダリングに使われたりする美術品保管庫)の話など、現代的な話題も豊富で、美術と金の話に興味のある人には激しくオススメ。

 

今日の一曲

大滝詠一の「君は天然色」 山下達郎のカバー。



では、また。


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『魂手形 三島屋変調百物語七之続』宮部みゆき

2021-05-06 | books
三島屋シリーズ。ある藩での火消しシステムにまつわる怪異、だんご屋のおみよの暗い過去、成仏出来ない亡魂の三篇。

すごく好みだった。シリーズベストかも知れない。ストーリーが何重にも複雑になってるのも好きだ。

 

今日の一曲

Billie Eilishで、"Your Power"



では、また。



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2021年4月ドラマちょいとレビューその3

2021-05-04 | film, drama and TV
「着飾る恋には理由があって」・・・会社のために頑張ってInstagramを更新する川口春奈。社長の向井理のことが好き。ひょんなことから横浜流星たちとルームシェアすることになる。スマホを手放さず他者の評価ばかり気にしてる人に対する警告なのか、テーマが何だかよく分からなかった。

「今ここにある危機と僕の好感度」・・・イケメンで好感度だけは高いが中身のあることを話せないアナウンサー松坂桃季。大学から白羽の矢が立ち、広報に転職することになった。教授の論文の捏造を告発したポスドク鈴木杏を懐柔しろと命じられた。不思議なコメディ、まだ面白いか判断保留。

「泣くな研修医」・・・研修医の苦闘を描く。意外性はあまりなく観ても観なくてもいい感じ。

「あのときキスをしておけば」・・・スーパーでミスをし、クレームを受ける従業員松坂桃李。大好きな漫画家麻生久美と知り合い、身の回りの世話をすることになった。そして沖縄へ旅行に行く。すると飛行機自己発生。彼女は死亡し、中身が別の男性へ。BLドラマの変形版。今後に期待。


今日の一曲

高木里代子で、"Splasher"



では、また。


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『草原のサーカス』彩瀬まる

2021-05-02 | books
姉依千佳は製薬会社から請われて大学に籍を置き、産学共同プロジェクトを担う。妹仁胡弓瑠はアクセサリー作家。二人の栄光と挫折の物語。

登場人物に共感出来る部分はそれほど多くないのだけれど、共感は私にとって重要ではなく、単純に面白かった。

生きるとか働くことに大いに考えさせられた。

※以下軽くネタバレ

姉は論文偽装で裁判にかけられる。妹は、ネット通販で爆発的な人気を得るが、担当者が異動すると、ストーカー的行為をし警察沙汰になる。→それ以降の展開があるので、完全にはネタバレしてないです。

「草原のサーカス」というタイトルは内容に関係ないわけじゃないけれど、もっと別のタイトルの方が、内容にあっているか、あるいは読後、そういうことかと思えたと思う。

 

今日の一曲

手嶌葵「ただいま」



では、また。


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