頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『鬼哭の銃弾』深町秋生

2021-03-31 | books
22年前スーパーを襲う強盗事件、三人死亡、未解決。その時に使用された銃がまた使われた。主人公の警視庁捜査一課日向直幸が担当する。現場近辺の目撃者からあがってきたのは、日向の父親だった。元刑事で直幸を虐待していた音信不通の父親が事件に関わってるのか?

1995年に発生した未解決の、八王子のスーパーナンペイ事件を独自解釈したフィクション。

あんまおもろないなと思いつつ何となく読み続けると、父親が登場してから面白くなってきた。

暴力やアクションが苦手な人にはあまりオススメできない、殺人事件の謎とき+壮絶な父子対決という珍しい組み合わせだった。

 

今日の一曲

安田レイで、"Not the End"



では、また。



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『元彼の遺言状』新川帆立

2021-03-29 | books
弁護士剣持麗子のところに奇妙な依頼が。昔付き合った森川栄治が死んだ。「自分を殺した者に遺産を譲る」という遺言を残して。昔からの知り合い篠田がやって来て、自分が栄治にインフルエンザをうつしてしまったからだ。自分の代わりに代理人として交渉して欲しいと依頼してきた。森川製薬の株式時価総額は7兆円。1.5%を栄治が持っているので、1000億円にもなる。多額の成功報酬が見込める。金のことしか頭にない高飛車な麗子が複雑な謎を解けるか?

ぶっ飛んだ設定、立ちまくりのキャラにやられた。

謎が説かれていくカタルシス。意外すぎる真相。とても面白かった。

 

今日の一曲

Jon Batisteで、"I NEED YOU"



では、また。


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『危険な男』ロバート・クレイス

2021-03-27 | books
顔見知りの銀行員イザベルが銀行から出て来たばかりの所を二人の男に襲われた。助けたのは私立探偵ジョー・パイク。逮捕された男は保釈され、すぐに殺された。そしてイザベル行方不明。彼女はなぜ狙われるのか?

初めて読むコール&パイクシリーズ、面白かった。

アクションが長すぎず、謎解きとの配合が絶妙にほどよい。過去の作品をぜひ読みたい!

 

今日の一曲

ラジオでたまたま聴いていいなと思った。Jamie Cullumで、"High and Dry"



では、また。


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店名にツッコんでください258

2021-03-25 | laugh or let me die
店名にツッコんでください258
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『咆哮』アンドレアス・フェーア

2021-03-23 | books
ドイツミステリー。凍った湖で遺体を発見したのは外勤警官のクロイトナー。次に捜査担当のヴァルナー首席警部の自宅の屋根から第二の死体。どちらも口内から数字を示したバッジが発見された。並行して描かれるのは、昔。バックカントリースキーをしていたら、娘が転落し、救出しようと死にものぐるいの父親の姿・・・

途中まではそれほど面白くなく、先が楽しみでもないのでやめようかと思った。しかし山岳遭難の方の関わりが分かると急に面白くなる。

殺人の動機がこれほど読ませる小説はあまりないかも。

下にネタバレ。

 

今日の一曲

「関ジャム」でプロが選ぶここ20年の名曲1位に選ばれた。BUMP OF CHICKENで、「天体観測」




※ネタバレ

スキーで転落した娘を救うために、夜半に山を彷徨ったペーターがやっと山小屋に辿り着いた。そこではドラッグでラリった男女がいた。救助隊を呼ぶために無線機を貸してくれと頼むが、ふざけた奴らが壊してしまった。ペーターが、彼らの子供など大切な人たちを殺そうとする。

復讐することが正義だとすれば、ペーターのしたことは必ずしも間違った事ではないのか?復讐の向く先が子供なであることが間違ってるのか?それとも復讐自体が間違ってるのか?なんてことを考えた。

たぶん、多くの読者は慎重な、捜査を指揮するヴァルナーと、ワイルドでテキトーなクロイトナーの落差を面白がるのではと想像するけれど、個人的にはそれほどではなかった。

では、また。


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『紅蓮の雪』遠田潤子

2021-03-21 | books
双子の姉、朱里が自殺した。婚約破棄を決めてすぐに。弟の伊吹は疑問に思い、調べると一週間前に大衆演劇に行ってることが分かった。それからひょんなことからその世界に身を投じる伊吹。大衆演劇のディープな世界とは。朱里の死の謎は・・・

不自然な設定を「読まされる」苦痛&美学。ある意味何人も殺すサイコキラーよりも偶然が左右しすぎて(必然?)あり得ない世界を堪能する。途中まで読みにくかったが、ある程度いくと納得。ラスト近辺は流石。

大衆演劇とはどういうものかを学ぶ的側面60%、人の業を学ぶ20%、ストーリー展開20%といったところか。

 

今日の一曲

Maroon 5で、"Beautiful Mistakes"



では、また。


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『日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る』播田安弘

2021-03-19 | books
船の設計者である著者が、日本史を科学的に検証する。

蒙古襲来ではなぜ蒙古軍は一日で退却したのか→(当時の船、海流からシミレーションすると、相当船酔いしていた。300隻もの船が一度に博多湾に投錨するのは不可能。季節風の向きによって、早く撤退しないと戻れない)

他にも、本能寺の変から、なぜたった9日で秀吉は高松城から山崎まで220キロも2万の兵を引き連れて移動できたのか?

戦艦大和は無用の長物だったのか?

の3点を詳しく検証していてとても分かりやすく、エキサイティングだった。

 

今日の一曲

藤井 風で、「へでもねーよ」



では、また。


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『Exit イグジット』相場英雄

2021-03-17 | books
ここ数年の政権の意向、経済の実態のリアルな部分にフィクションを組み合わせた小説。超低金利で商売が行き詰まった地銀、金融緩和を日銀にあの手この手で強制する政権。副総理兼財務大臣から裏の仕事を頼まれるフィクサー古賀と経済をネタにしようとする月刊誌記者池内を中心に物語は進む。

既に知っていることが少なくなかったので「ガラパゴス」のような衝撃はなかったけれど、日銀や地銀の現実、フィクサーは本当にいるのかも知れないと思わせてくれた。小説としてはまあまあ。

ただ、副総理は現実の人物そのものを描いていて、もしかしてこの人はこんなに優秀なのかと、(誤解?させてくれた)

 

今日の一曲

T字路sで、「泪橋」



では、また。



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『ラスト・トライアル』ロバート・ベイリー

2021-03-15 | books
(第一作の「ザ・プロフェッサー」のネタバレ少しあり)元トラック運送会社の社長で、矯正施から出てきたばかりのジャック・ウィリストーンは射殺された。逮捕されたのは、元ストリッパーのウィルマ。偽証してあげたのに約束の金が払われなかった。DNAの証拠はウィルマを示している。ウィルマの娘が弁護を依頼したのは、かつて母親を罪人にした弁護士トム・マクマートリーだった・・・

面白かった。面白すぎだった。正義とは何か、悪とは何か。法廷闘争と人間ドラマを究極にまで燃え尽くす最高の小説だった。四部作の最終作の次作が待ちきれない。訳文が凄く巧いのも関係あるのかも。

下にネタバレあり。

 
今日の一曲

YONA YONA WEEKENDERS で、"R.M.T.T"



※ネタバレ

ウィリストーンの前妻バーバラはダウン症の子供のためにも彼の生命保険の受取人を息子にしてくれと何度も頼んでいた。今の妻キャサリンは三百万ドルの保険金を逃すわけにはいかない。違法な商売に手を染める父親ブリーと共謀し、受取人の変更届を受け取った担当弁護士から脅し取る。

ウィルマはずっと犯行のあった晩に何があったか証言しなかった。それは自分の娘が犯人だからと思っていたから。目撃者が現れて有罪答弁をする。しかし真犯人は自分の娘だった。検察はブリーの手下フィリピン人のマニーの関わりも考慮するよう。その辺は次作で明らかになるような気が。しこたまウィスキーを飲みつつ読んだので若干記憶が曖昧なり。

では、また。



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『アンブレイカブル』柳広司

2021-03-13 | books
戦前戦中の言論統制を、リアル+フィクションで内務省のクロサキの暗躍をプロレタリア文学の鬼才小林多喜二、川柳で政権をおちょくる鶴彬、獄死した三木清など実在の人物に絡めて描く。

実在の人物に対して、こうだったかも知れないというアプローチが、「ストーリーを楽しむための小説」としては効果的かと問われれば、ビミョウ。

近現代史を学ぶテキストと考えれば、悪くないんだろうと思う。

巻末に参考文献が一つも挙げられていないのには疑問。(自分がお世話になった著作は何だか明示すべきだし、もっと勉強したい読者にこの作品では満足できなかったもっと深い勉強をする機会を与えるべきだと思うのだけれど・・・)

 

今日の一曲

Novelbrightで、「ツキミソウ」



では、また。


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店名にツッコんでください257

2021-03-11 | laugh or let me die
店名にツッコんでください257
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『ヘルメースの審判』楡周平

2021-03-09 | books
東芝の苦境の現実とフィクションを織り交ぜた小説。「ニシハマ」という名に置き換え、一族の娘と結婚したハーヴァード卒の賢太が旧い社風と闘ったり、LNGなどの資源輸出や原発から利益を生み出そうとする。

企業小説は、昔好きでよく読んでいたけれど、いつしか嫌いになってしまった。しかしこれは激しく面白かった。

東芝の事(粉飾決算、ウェスティングハウスの体たらく等)はある程度報道で知っていたので驚く事ではない。しかし利益を得るために、政財界が絡んでくる。特に元首相やその周辺が色々と出てくる辺りや中東のフィクサーが出てくる所は、そーなんやろーなー、って納得してしもうた。

企業がどうやって利益を上げるとか失うとかそういうことに興味がある人は必読。大収穫。

 

今日の一曲

優里で、「ドライフラワー」



では、また。



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『ははのれんあい』窪美澄

2021-03-07 | books
結婚、出産、そして離婚を経たある家族のかたち。妻が仕事を続けることに理解がない夫、離婚後健気に家事を引き受ける長男。

電車の中で一時間もかからずに読み終わってしまった。つまらなくないけれど、面白くもなかった。先がどうなるかのスリル、気の利いた台詞、教訓、感動どれも薄め。

何とか文学新人賞の佳作ぐらいの感じだった。窪美澄の弟子が書いたのだろうか・・・

 

今日の一曲

ラブリーサマーちゃんfeat. 泉まくらで、「202」


では、また。
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『転落の街』マイクル・コナリー

2021-03-05 | books
刑事ボッシュは二つの事件を抱える。1.未解決事件班として、1989年女性が殺害された事件で残されたDNAと合致する者がいた。その容疑者ペルは当時8歳だった・・・ 2.不倶戴天の敵アーヴィング市議(元市警副本部長)の息子がホテルから転落死した。市議から指名され、他殺、事故、自殺のいずれかか捜査するよう命じられる・・・

勿体ないので、旅行の時のように最小限の、確実に読み通すからという場合にしか読まないシリーズ。やはり、面白すぎだった。

ボッシュはもう60歳。このシリーズが終わってしまうのかと、危惧する。震える。

次作を読むときに忘れないように下にネタバレ。

 
 

今日の一曲

aikoで。「磁石」





※ネタバレ


アーヴィングの息子は、タクシー会社が新規参入するために他の会社の免許が更新されないようにするため暗躍していた。アーヴィング自身が警察に圧力をかけ、また息子の親友の警官が違法な捜査をしてタクシー会社を潰そうとしたとボッシュは解釈した。そして対立会社の者に殺されたと、しかし、アーヴィング自身は関与してなく、息子は離婚の故の自殺だった。アーヴィングを潰したい本部長が意図してメディアに偽情報を流していた。アーヴィングは激怒している。

女性殺害事件は、ペルを虐待する男が犯人だった。虐待するときに使用したベルトで殺害していた。その男は父親にはなりすまして暮らしていた。そして37人も殺していた。ボッシュは正規の令状をとって捜索をしていなかったのと、護送の際にペルが犯人に襲いかかってもおり、警察の不手際をこれからアーヴィングに責められるはずである。

では、また。


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『ざわめく傷跡』カリン・スローター

2021-03-03 | books
スケート場で、13歳の少女が16歳の少年マークに銃を向ける事件。近くにいたジェフリー署長は少女ジェニーを射殺する。近くのトイレに遺棄された赤ん坊は、彼女が出産したのか。ジェフリーの元妻サラ・リントンが検死すると、ジェニーはひどく虐待され、出産できない体にされているのが分かった。虐待したのは誰か、ジェニーはなぜマークを殺そうとしたのか。

傑作だらけのカリン・スローターにしては、中盤がかなり冗長。真相が、少しずつしかわからない。

ただ、おぞましい事実が分かると、そこは流石。

ズバリテーマは、少年少女に対する性暴力。犯人には怒りしか感じない。

 

今日の一曲

YOASOBIで、THE FIRST TAKEバージョンの「群青」



では、また。



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