久しぶりのハルキは、らしくない短編集。
<ドライブ・マイ・カー> 俳優家福、目に問題が出て来たので、愛車サーブの運転を他人に任せることにした。知り合いから推薦されたドライバーはみさき。無口で運転技術は一流。亡くなった妻についてみさきと話しているうちに…
<イエスタディ> 大学生だった僕は、バイト先で木樽と知り合った。彼は浪人中で変わり者。ろくに勉強していないが面白い男だった。浪人しているので、交際を中断している彼女がいる。木樽に、自分の代わりに彼女と付き合わないかと言われて…
<独立器官> 知り合いの渡海は美容整形外科医。腕はいいし、性格も良くてもてるが独身を貫いている。同時に何人もの彼女と付き合っていることもあったが、多くは、人妻か彼氏のいる女性だった。そんな渡海がある人妻を本気で好きになってしまう…
<シェラザード> 「ハウス」に住む羽原には定期的に食料を運んでくれる女性がいた。彼女との性交の後、彼女はいつも話をしてくれる。「千夜一夜物語」のシェラザードのように。ある時彼女が話してくれたのは、高校時代好きだった男の子の話。片思いしていた彼女は、彼の家に空き巣に入るようになってしまった…
<木野> 妻が浮気した。木野は家を出て、そして会社を辞めた。伯母がやっていた喫茶店のあとを継いで、バーを始めることにした。そしてやって来た客カミタ。いなくなった猫。現れた蛇。カミタは言う「こんなことになってしまって、僕としては残念でならないのです」そして…
<女のいない男たち> 昔付き合っていた人が死んだと、彼女の夫から電話があった。自ら命を絶つような人ではないはずなのに、なぜ…
村上春樹の短編集は苦手で、あまり好まなかった。オチがないと言うか意味がよく分からないと言うか。ところが、本作は、ものすごく分かりやすく、好みだ。特に「シェラザード」の、好きな男の子の家に忍びこんでしまう彼女の気持ち。どんどんドライブがかかってしまう。どうなるんだろうと興奮しつつ読んでしまった。
知り合いが村上春樹は「1Q84以降、大衆に迎合した分かりやすい作品を作るようになった」と言っていたけれど、どうなのだろう。
![女のいない男たち](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51cNUdZY69L._SL160_.jpg)
今日の一曲
収録されている短篇のタイトル。The BeatlesでYesterday
I Said Something Wrongがアイ・セッ・サムジング・ローンと聴こえた頃、私は中学生。好きだった女の子は眼鏡をかけていた。
では、また。
<ドライブ・マイ・カー> 俳優家福、目に問題が出て来たので、愛車サーブの運転を他人に任せることにした。知り合いから推薦されたドライバーはみさき。無口で運転技術は一流。亡くなった妻についてみさきと話しているうちに…
彼女は車を運転していないときより、むしろ運転をしているときの方が緊張がうまくとれるらしかった。
<イエスタディ> 大学生だった僕は、バイト先で木樽と知り合った。彼は浪人中で変わり者。ろくに勉強していないが面白い男だった。浪人しているので、交際を中断している彼女がいる。木樽に、自分の代わりに彼女と付き合わないかと言われて…
これまでの僕の生き方も考え方も、思い起こせば、お話にならないくらい月並みで、悲惨極まりないものだった。大方は想像力を欠いた、ミドルクラスのがらくただった。
<独立器官> 知り合いの渡海は美容整形外科医。腕はいいし、性格も良くてもてるが独身を貫いている。同時に何人もの彼女と付き合っていることもあったが、多くは、人妻か彼氏のいる女性だった。そんな渡海がある人妻を本気で好きになってしまう…
彼女の心が動けば、私の心もそれにつれて引っ張られます。ロープで繋がった二艘のボートのように綱を切ろうと思っても、それを切れるだけの刃物がどこにもないのです。
<シェラザード> 「ハウス」に住む羽原には定期的に食料を運んでくれる女性がいた。彼女との性交の後、彼女はいつも話をしてくれる。「千夜一夜物語」のシェラザードのように。ある時彼女が話してくれたのは、高校時代好きだった男の子の話。片思いしていた彼女は、彼の家に空き巣に入るようになってしまった…
その心憎いまでの技巧は、たとえ一時的であるにせよ、聴き手にまわりの現実を忘れさせてくれた。しがみつくように残ったいやな記憶の断片を、あるいはできれば忘れてしまいたい心配事を、濡れた雑巾で黒板を拭うようにきれいに消し去ってくれた。それだけでもう十分ではないか、と羽原は思った。
<木野> 妻が浮気した。木野は家を出て、そして会社を辞めた。伯母がやっていた喫茶店のあとを継いで、バーを始めることにした。そしてやって来た客カミタ。いなくなった猫。現れた蛇。カミタは言う「こんなことになってしまって、僕としては残念でならないのです」そして…
木野さんは自分から間違ったことができるような人ではありません。それはよくわかっています。しかし正しからざることをしないでいるだけでは足りないことも、この世界にはあるのです。
おれは傷つくべきときに十分に傷つかなかったんだ、と木野は認めた。
<女のいない男たち> 昔付き合っていた人が死んだと、彼女の夫から電話があった。自ら命を絶つような人ではないはずなのに、なぜ…
ある日突然、あなたは女のいない男たちになる。その日はほんの僅かな予告もヒントも与えられず、予感も虫の知らせもなく、ノックも咳払いも抜きで、出し抜けにあなたのもとを訪れる。
村上春樹の短編集は苦手で、あまり好まなかった。オチがないと言うか意味がよく分からないと言うか。ところが、本作は、ものすごく分かりやすく、好みだ。特に「シェラザード」の、好きな男の子の家に忍びこんでしまう彼女の気持ち。どんどんドライブがかかってしまう。どうなるんだろうと興奮しつつ読んでしまった。
知り合いが村上春樹は「1Q84以降、大衆に迎合した分かりやすい作品を作るようになった」と言っていたけれど、どうなのだろう。
![女のいない男たち](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51cNUdZY69L._SL160_.jpg)
今日の一曲
収録されている短篇のタイトル。The BeatlesでYesterday
I Said Something Wrongがアイ・セッ・サムジング・ローンと聴こえた頃、私は中学生。好きだった女の子は眼鏡をかけていた。
では、また。