頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『グッド・ドーター』カリン・スローター

2020-11-30 | books
ラスティ・クィンは売人や性的暴行犯、誘拐犯を弁護して大いに恨みをかっていた。家は放火され、別の家では覆面をかぶった男たちが妻を射殺し、娘たちサマンサとシャーロットをレイプしようとした・・・28年後、シャーロットは弁護士になっていた。夫とうまくいかず一夜を伴にした相手とスマホを間違えてしまったため、相手の勤める学校を訪れると、発砲事件が。若い女性ケリーが教師や生徒を撃っている。そして彼女の弁護に関わり・・・

カリン・スローターは大好きなのだが、その中ではやや冗長。実はシンプルなのもので、それをぐるぐるとラッピングした感じ。

それでも、冒頭のスピード感、ラスティの人物造形、シャーロットのトラウマ、姉サマンサはどうなったのか、そして発砲事件の真実と読ませどころは多い。

 
 

今日の一曲

The Rolling Stones Featuring Paul Mescalで、"Scarlet"



では、また。


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『始まりの木』夏川草介

2020-11-28 | books
東々大学の学生藤崎千佳は、変わり者だが優秀な民族学者にして准教授の古屋神寺郎のお供をして日本中を旅する。弘前へ、京都へ長野へ、高知へ。連作短篇集。

「神様のカルテ」とは全く違う民俗学の世界。とても良かった。民俗学とは何か、何が役に立つ学問なのか、学問とは何か大いに考えさせられる。難しい話がある訳ではないので読みやすい。

柳田国男とか宮崎常一を読んでみようとか民俗学を学んでみようというきっかけになるような小説だった。偏屈古屋と千佳のやり取りも良かった。行ったことのある地名が多かったのも不思議な感じ。ついこの間、京都の瑠璃光院、岩倉具視の幽棲居宅まで見てきたのに、その先の実相院までは時間の関係で行けなかったら、そこが登場した。残念。

 

今日の一曲

先日の筒美京平特集では「関ジャム」で、「仮面舞踏会」が紹介されていた。でも先に今日の一曲で使っていたので、少年隊で「ABC」



では、また。


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『たとえ天が堕ちようとも』アレン・エスケンス

2020-11-26 | books
弁護士は辞めロースクールの教授をしているボーディ・サンデスに弁護の依頼が。旧知の弁護士ベン・プルイットが妻ジェネヴィエヴ殺害の嫌疑をかけられている。本人はシカゴにいてアリバイがあると主張するが、夜から朝までホテルにずっといたとは証明できない。しかし検察側も強引に起訴しようとする。被害者遺族は大金持ちで検事は次期判事になるための支援が欲しいのだ。また担当刑事マックスは妻を轢き逃げされ失意の日々。そこへ彼女を轢いた車の情報が入って来る・・息詰まる法廷戦術の行方は・・・

うおー。激しく面白かった。マックスの妻の件と本筋と繋がる様が素晴らしい。弁護士、刑事交互に事件を描写するのもいい。深夜に被告を目撃した隣人=鍵をどう処理するか、巧い。衝撃的なラストにさらに衝撃が。下に長いネタバレを。

 
今日の一曲

ドラマ「監察医 朝顔」の主題歌、折坂悠太で、「朝顔」




※長いネタバレ


陪審は何と有罪判決を下す。その後プルイット宅から血まみれのシーツと使用済みのコンドームが見つかる。ジェネと関係があったかも知れない男ケイガンのDNAサンプルが欲しいが検察は令状を取らない。ケイガンを尾行し何とか鼻を噛んだティッシュを入手。再審理で、ケイガンを証人として出廷させると、被害者とのとの関係について黙秘権を行使したいと言う。検察はケイガンに免責特権を与えて証言させることは可能である。しかし、免責特権を与えるのを拒否すれば、検事自身が、プルイットではなくケイガンが殺した可能性を認めていることになる。もしプルイットが殺したと自信があれば、ケイガンの罪は偽証罪に過ぎないので、免責特権を与えるはずだ。選択を迫られた検事は免責特権を与えなかった。そして被害者遺族からプレッシャーを、与えられた検事は最終弁論の期日を伸ばそうとする。するとボーディはプルイットの一時釈放を求め、判事は認めた。これは無罪になった事を意味する。有罪だと思うなら判事が釈放するわけがない。


そして外を自由に歩くプルイットは隣人マリーナとキスしていた。実は妻を殺害していたのだ。目撃したと主張する隣人とは愛人関係にあり、赤い車とは彼女のもので、シカゴから彼を乗せてきた。最初彼を目撃したと証言して起訴させて、後に証言を覆して見なかったと言って一旦無罪になれば、一事不再審の法則に守られ二度と起訴されないのを狙ったのだ。その事がバレたのを知ったプルイットはボーディを殺そうとする。そこに駆けつけた刑事マックスは、妻殺害事件について、情報を持ってるとプルイットに言われる。しかしマックスはプルイットを射殺する。


プルイットの事務所の清算人になったボーディが見つけたファイルはレイ・クロールという名のもの。報告書には、マックスの死んだ妻ジェニファーの名前、轢いた車カローラ、そして電話の会話を録音したものが。そのファイルをマックスに渡して、小説は終わる。

では、また。


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『煉獄の獅子たち』深町秋生

2020-11-24 | books
暴力団東鞘会は会長氏家必勝が死にかけ、神津組の神津太一か、息子の氏家勝一のどちらが跡目を継ぐか死闘が始まった。弱体化する東鞘会を潰そうと警察も動き出す。内部分裂の結果、勝一の側は新しく和鞘会となり、神津を暗殺した。神津組の若頭十朱は下積みがなく、突然経済ヤクザとして稼ぎを組にもたらしていた。その資金力で次のトップにのし上がろうとしていた。我妻は警視庁組対四課の刑事。東鞘会の関連が利用しようとしていた女を助けた。というような諸々が流転していき・・・

「地獄の犬たち」の続編。めちやくちやに面白かつた。どんでん返しに継ぐ返しどんでん。武器や戦闘に関するディテール。素晴らし過ぎる。自分用のネタバレを下に。

 
 

今日の一曲

back numberで、「エメラルド」




※ネタバレ


我妻が助け、恋に落ちた女は実はスパイだった。十朱は警察から潜入した。しかし警察の言うことを聞かなくなったので、公安から殺されそうになった。しかし、全て準備し返り討ちにした。

では、また


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『女王さまの夜食カフェ マカン・マランふたたび』古内一絵

2020-11-22 | books
「マカン・マラン」シリーズ第2作。派遣OLが周囲に合わせないと行けない事に悩み、漫画家アシスタントが実家の旅館を継ぐか悩み、母は息子の教育で悩み、中学教師の父親は娘が理系に変えると言い出して悩む。そして、ドラァグクイーンのお店の料理で癒されるという短編集。

前作と同じパターン、同じテイスト。水戸黄門的に安心して読める。(刺激がもう少し欲しいような)

 

今日の一曲

藤井風で、「何なんw」



では、また。


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店名にツッコんでください250

2020-11-20 | laugh or let me die
店名にツッコんでください250
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『派遣添乗員ヘトヘト日記 当年66歳、本日も日雇い派遣で旅に出ます』梅村達

2020-11-18 | books
派遣会社から、国内日帰り、一泊二日、修学旅行、海外旅行で添乗員をして来た著者によるドキュメント。

食べ放題ツアーで、大行列ができてしまったり、紅葉ツアーで大渋滞にはまったり、骨折したり、楽しかったことより、トラブルの方が面白かった。

同じシリーズの、「メーター検針員」と「マンション管理員」を読んだけど本作がベスト。そんな裏話があったんだーと思う回数が多かった。

 

今日の一曲

5 Seconds of Summerで、"She Looks So Perfect"



では、また。


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『お誕生会クロニクル』古内一絵

2020-11-16 | books
トラブルがあってお誕生会してはいけなくなった小学校の図工の先生。広告代理店から系列の印刷会社へ出向中のサラリーマンは空回り。若くして出産したヤンママの苦悩。女性誌の編集部でビジネスライクに生きる男性。出版社人事部の事なかれ部長。5歳の双子のママの苦闘。小学校学年主任、コロナ禍の苦労。

全ての話がどこかで繋がっており、お誕生会にも関係してる。最後の話は介護の事もあって読むのが少しつらかったが、それ以外はとても面白かった。

基本的にラストで救われる。姪の誕生日をサプライズで祝おうとしてしくじる「サプライズパーティ」が特に気に入った。

 

今日の一曲

Miley Cyrusで、"Midnight Sky"



では、また。


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『自転しながら公転する』山本文緒

2020-11-14 | books
与野都、33歳、茨城のアウトレットモールのアパレルショップで契約社員をしている。以前は別のアパレルで正社員をしていたが、母の病を期に辞めて実家に帰り、父母と同居している。更年期障害がヒドくなる母。職場では店長や本社の担当者に問題がありストレスが溜まる日々。やっと彼氏が出来たが、元ヤンキーらしく、色々と不安。そんな都に幸せは訪れるのか・・・

メチャクチャ面白かった。33歳の女性になった事もないのに、自分が都になった気持ちでずっと読んでしまった。いい小説は読書を選ばないのかも知れない。

都の内面、いい人なんだけど、抱えるコンプレックス、驕り等のネガティブな面がまるで自分の事かのように突き刺さる。

介護、仕事、恋、どれもがどう展開するか予想を出来ず、いい意味で期待を裏切ってくれる。構成のフェイクも上手だった。

 

今日の一曲

先日、東京FM開局50周年の番組に出てた。車に中にいたので久しぶりに3時間も同じ番組を聴いた。竹内まりやで「シングル・アゲイン」



では、また。


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『美しいものを見に行くツアーひとり参加』益田ミリ

2020-11-12 | books
作者の朝日新聞のコラムを週1面白く読んでいる。40歳を過ぎて、一人でツアーを利用して海外に行った話を割と具体的に書いた旅行記。北欧のオーロラ、ドイツのクリスマスマーケット、フランスのモンサンミッシェル、ブラジルでサンバカーニバル、台湾のお祭り。

面白かった。アメリカで一ヶ月ほど、東南アジアも一ヶ月ほど一人旅したことがあって、その時のことが色々フラッシュバックした。益田さんのはツアーなので、事情は異なるけれど、一人旅には独特の傾向があって、同行者がいないから、地元の人との触れ合いが増えるといった良さはあるかと思う。

 

今日の一曲

Bee Geesで、"Too Much Heaven"



では、また。


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『明日の食卓』椰月美智子

2020-11-10 | books
冒頭ユウという名の9歳の男の子を虐待する母親が出て来るが誰だか分からない。1.優 母はあすみ。習い事に金をかけられるぐらい金には困っておらず、息子は優しくて勉強も出来る。2.悠宇 母は留美子、フリーライター。次男とやんちゃが過ぎてストレスが溜まる。さらにカメラマンの夫の仕事が無くなったが家事をしない。3.勇 母は加奈。シングルマザーで、仕事を掛け持ち。息子が金を盗んだと疑われる。

うーむ。子育てのリアルがこれでもかと胸に迫る。どの母親がやってしまったのかというミステリー的側面はあるけれど、そんな事はどうでもいい程に、母親の大変さがひたすらに身を焦がす。

素晴らしい小説だった。

 

今日の一曲

Sam Smithで、"Diamonds"



では、また。


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『ネヴァー・ゲーム』ジェフリー・ディーヴァー

2020-11-08 | books
失踪者を探すコルター・ショウは懸賞金を稼ぐ。19歳の女性が行方不明になり、父親から捜索を依頼された。どうやら、ゲームの世界が関係してるらしい。若い頃からサバイバル技術をマスターしてきたコルターは事件を解決できるのか・・・

リンカーン・ライムが引きこもりながら解決するとすると、それを屋外に移した感じ。論理的に進むのは同じ。ゲームの世界に、あまり興味を持てないのと、どんでん返しにそれほど心を動かされなかった。

 

今日の一曲

Mr.Childrenで、「終わりなき旅」



では、また。


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店名にツッコんでください249

2020-11-06 | laugh or let me die

店名にツッコんでください249

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『マンション管理員オロオロ日記』南野苑生

2020-11-04 | books
夫婦住み込みで13年間マンションの管理人を勤めた人によるドキュメント。

住人による数々の理不尽なクレーム。自分さえ良ければいいという人はどこにでもいる。

特に驚くのが理事会を私物化した理事長と、腰巾着のようなフロントマン(管理会社の担当者)の話。嫌な話やわ〜。

 

今日の一曲

杏里で「悲しみがとまらない」


では、また。
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『死んだレモン』フィン・ベル

2020-11-02 | books
車椅子生活をしているフィン・ベル、隣に住む極悪のゾイル兄弟の一人に殺されかけ、崖で逆さ吊りになるというピンチに→5ヶ月前に遡り、なぜニュージーランドの最果ての町にやって来たのかや、町の人達との触れ合いを描き、そして過去の失踪事件の謎を解く。

謎解き以外の寄り道がかなり多いのでやや長く感じるとの、解かれた謎にそれほどのショックを感じられなかった。

しかし、フィンがセラピストと交わす会話などディテールはなかなか好み。

・物事に必ず理由があると考えないこと。理屈がわかれば思いどおりになると考えるから、人は理由を探そうとする。だけど、人生の取るに足りない、悲しいなぜを拾い集めたって、何も変わらない。

・周囲の環境は変えられなくても、向き合い方は自分で変えられる。

作者は刑務所でカウンセリングをやっていたそうだから、こんな言葉が披露出来るのだろうか。

 

今日の一曲

上原ひろみで、"Spectrum"



では、また。


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